ガーディ

レビュー

『ガーディ』

息子は天使だと街中に信じ込ませる感動作

舞台となったレバノンの小さな村はとても綺麗な町並みなのだが、それに反して起こるのは住民同士の言い争い。主人公のレバは幼い頃、部屋の窓から住人の様子を観察していた。これは恐らく日本でもあることで、レバノンの生活の様子を日本ではうかがい知ることはあまり出来ないが共通点があることはよく分かる。この美しいロケ地はバトルーンという町で、主演であり、また脚本も担当しているジョージ・カッバスの出身地ということだ。レバノンというと戦争とイメージが重なってしまうが、この映画を見るとほかの国と違うところはないということを感じる。

成長し、結婚をして生まれた子どもの名前が作品のタイトルでもあるガーディ。この息子がダウン症だったことで物語は大きく舵を取ることになる。昼夜関係なく高く大きな声で窓から歌うガーディに我慢できなくなった住人は「悪魔」と呼んで追い出そうとする。そこでレバが考えたのが息子は「天使」だという嘘。これだけ聞くとうまくいくはずがないと思ってしまうが、レバが持っていた秘密道具、それが幼い頃に観察し、記していたノート。住人は自分しか知らないと思っていることをノートに記録されてしまっていた。ここで最初のさらっと登場した幼い頃のシーンという伏線を回収する。非常によく出来ている。

天使となったガーディだが、気がつくと家の前の祭壇にはたくさんの人が集まるようになる。悪魔と呼んで追い出そうとしていたのに、人の心変わりは早いものだと感じてしまう。住人の願いはレバが中心となって協力している皆で叶えるものもあれば、偶然叶ったものもある。しかし、ガーディが天使だと思っている住人はそれが天使のおかげだと信じきっている。よくある話なのかもしれないが、やはり人は信じる何かが欲しい。信じる何かがあるだけで安心することができる。そういった意味でも、ガーディはその力で何かを起こそうとしてはいないが、結果的に住人が安心して暮らすという平和をもたらしたことになったのだと思う。隣国では戦争が続いているというが、この作品が平和の象徴となって広く多くの人の目に留まることを願う。

『ガーディ』
(原題:Ghadi)
2015年7月19日(日)・22日(水)にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015で上映
監督:アミン・ドーラ
出演:ジョージ・カッバス、ララ・レイン、エマニュエル・カイラッラ、カミル・サラメ

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