スウィング!

レビュー

『スウィング!』

最高にハッピーなミュージカルドラマ

オープニングのシークエンスからワクワクが始まる。1960年代のようなおしゃれなアニメーションにシング・シング・シングが流れて気分が高まる。崖っぷちの3人の女性がさまざまな出来事を通じてより成長していく物語であるが、ビジュアルでは親子とも思えるほど年の離れた3人の女性が金色のコスチュームに身を包み、楽しげにしている。元々は同世代の3人が主人公の予定だったが、世代が異なるほうがいろいろなことが起こるのではという理由で世代の異なる3人になったらしい。そんな彼女たちは境遇も考え方も異なる。共通点と言えば、歌がうまいということ。息子を連れて職探しをしていたケイト。彼女が働くことになったレストランで歌っていたエミリーが体調不良で歌えなくなり、代わりに(強引に)歌ったのがケイトだった。そしてそこに偶然居合わせたのが、オーディションに行っても逃げてしまうアンゲラ、夫の浮気現場を目撃して消沈していたリタ。知り合った彼女らは稼ぐ必要があり、1人の力では不可能でも3人集まれば実現できるということでユニットを組むことになる。

これだけでは、ただのサクセスストーリーのように感じるかもしれないが、彼女たちは無茶をしない。いきなり大スターになったりもせずに、地道に成長していくのだ。これはとても好感が持てる。見ている人の中には自分もできるかもと共感する人も多いことだろう。また、大きな家に住んでいるエミリーも電気代を払っていなくて止められるという実に庶民的な問題を抱えている。かつてはスターだったエミリーだが、今では電気代も払えないというなんとも切ない話だ。しかし、結果的にそのエミリーの助力のおかげで彼女たちの新しい道が開けた。

3人はさまざまなステージに立って歌うのだが、リタの夫が浮気相手の若い女性と訪れた会場では、リタがここぞとばかりにその力を見せ付けている。夫も思わずたじろいでしまう。これは他のステージであまり目立たないリタが最大限に活躍している。ステージのシーンはどれも見応えがあるのだが、ラストシーンではどんなステージを見せてくれるのかと思っていたら・・・。想定外とまではいかないかも知れないが、彼女たちらしい結末だ。

『スウィング!』
(原題:Swing)
2015年7月21日(火)・25日(土)にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015で上映
2014年/ハンガリー/117分
監督:チャバ・ファゼカシュ
出演:エステル・オーノディ、エステル・チャーカーニ、フランツィシュカ・トゥルーチク、マリ・トゥルーチク、ヤーノシュ・クルカ、ベーラ・メーサーロシュ、イムレ・チュヤ

©Attila Takács

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