Dearダニー 君へのうた

レビュー

『Dearダニー 君へのうた』ヘッダー

43年の時を経て、ジョンからのメッセージで変わった人生

「富を手に入れたからといって、物の見方は変わらない」、そんな一通の手紙を巡る実話を元に作られた本作。主人公ダニー・コリンズを演じるのはアル・パチーノ。ダニーがデビュー間もない頃、雑誌のインタビューで成功への不安を語った。その記事に対して、「金持ちで有名になることで君の音楽は堕落しない」そう書かれた手紙を雑誌の編集部に送ったのは、あのジョン・レノン。しかし、ダニーがその手紙の存在を知るのは43年たった、マンネリの日々を送る頃。編集者がコレクターに売りつけてしまったという。しかし、この出来事がきっかけでダニーは自身の行動を改めていく。フォーゲルマン監督は物語のモデルになっているティルストンに聞くと、「もしジョン・レノンに会っていれば、それは素晴らしかっただろう。意気投合したかもしれないし、帰れと言われたかもしれない」と返ってきた。“たられば”をどれほど考えても仕方がないことかもしれないが、人はつい「あの時こうしてれば」と考えてしまう瞬間がある。本作はこういった疑問を見る人に投げかけている。

アル・パチーノ演じるダニーはとにかく不器用な男。大型バスで息子に会いに行くのも、一般の人から見れば非常識極まりない行動だが、本人はよかれと思ってやっていること。そして、過去の名曲に逃げてしまうのも、人間なら誰もが経験するであろう”現実逃避”。ダニーは浮世離れした生活をしているが、実は心の奥底では一般の人となんら変わりのないひとりの父親なのだ。そのため気がつくと、ダニーに感情移入してしまう。

監督・脚本を務めるのはダン・フォーゲルマン。過去に『カーズ』『塔の上のラプンツェル』などで脚本を手がけており、本作が監督デビュー作となる。そのダンのまわりに豪華なキャストが集まった。ホテルのマネージャー役を務めるアネット・ベニング。そして、ダニーのマネージャー役を務めるクリストファー・プラマー。このベテラン勢の演技は物語をより現実に近いものに見せてくれる。そして、本作の本当の主役とも言える音楽。何度も流れ、本作を見終わるころには口ずさんでいるであろう「ヘイ・ベイビー・ドール」、「ドント・ルック・ダウン」などオリジナル楽曲であるにも関わらず、懐かしさすら感じる名曲が本作を彩っている。

(text:編集部)

『Dearダニー 君へのうた』
(原題:Danny Collins)
2015年9月5日(土)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開!
アメリカ/2015年/107分
監督:ダン・フォーゲルマン
出演:アル・パチーノ、アネット・ベニング、ジェニファー・ガーナー、ボビー・キャナベール、クリストファー・プラマー

©2015 Danny Collins Productions LLC

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