ヴィンセントが教えてくれたこと

レビュー

『ヴィンセントが教えてくれたこと』

「St.Vincent」に込められた思い

アルコールとギャンブルをこよなく愛するヴィンセントと、ある日、お隣に引っ越してきた12歳のオリバー。相容れないこの2人の友情を描いた作品なのだが、この”ちょい悪オヤジ”の気難しさがなかなかハイレベルだ。さらに妊娠中のロシア人ストリッパーや猫となかなかの曲者ぞろい。

本作において最も重要な部分になるであろう"頑固なちょい悪オヤジ"であるヴィンセントを演じるのがビル・マーレイ。ヴィンセントを演じる役者によって作品の空気は大きく変わる。ただ気難しいだけのオヤジではおそらく観客は作品に入り込めないだろうし、応援する気持ちにもならない。ビル・マーレイが演じるヴィンセントは、気難しいながらも、どこか人間味のある憎めない部分がある。だからこそコメディとして成立するのである。対して少年オリバーを演じるのはジェイデン・リーベラー。華奢な身体つきの彼だが、ヴィンセントに対しては臆することなく接する。そして一緒にいることで、互いが互いを尊重し、また自らを成長させていく。大人も子どもも成長できる物語なのだ。

ヴィンセントが教えてくれたこととは何なのか。「St.Vincent」という原題に込められた思いは、物語の終盤で観客に突き刺さる。その瞬間、本作のイメージは大きく変わるだろうし、コメディではなくドラマとして受け入れることになるかもしれない。

(text:編集部)

『ヴィンセントが教えてくれたこと』
(原題:St.Vincent)
2015年9月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 新宿ほか全国で公開
アメリカ/2014年/102分
監督・脚本・製作:セオドア・メルフィ
出演:ビル・マーレイ、メリッサ・マッカーシー、ナオミ・ワッツ、クリス・オダウド、テレンス・ハワード、ジェイデン・リーベラー

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