『ニュー・クラスメイト』レビュー

 長編部門(国際コンペティション)
 『ニュー・クラスメイト』
【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016】『ニュー・クラスメイト』

【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016】『ニュー・クラスメイト』 (1)
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メイドとして働くチャンダは、ある日、娘のアプーが「どうせ自分もメイドになる」と言ったことにショックを受ける。チャンダは成績の悪い娘を勉強させるために、なんと同じ学校の同じクラスに入学する。インドの大都市デリーから少し離れた「タージ・マハル」がある街が舞台の本作は、歌って踊る、いわゆるマサラムービーとは違う、インドの日常をコメディ要素を交えて描いたドラマ作品。

アプーが勉強しても無駄だと言う背景にあるのは、母親がメイドであること、つまりカーストの中では比較的下層であることを暗に示している。法律ではカーストによる差別が禁止されていても、それは歴然として残されているし、逆らうことはしない。ここで「私は努力をして立派な人間になる!」と言ってくれれば話は早いのだがそうはならず、メイドとして働くチャンダが、娘を自分と同じメイドにさせたくない一心で、メイドとして働く先である医者にどうすればよいのかを問う。将来に向けて歩んでいくはずの若者ではなく、現実にメイドとして働く母親が行動するところに、本作が描きたかった未来が見えてくる。さらにおもしろいのが、娘に勉強をさせるために取ったチャンダの手段。なんと同じ学校の同じクラスに入学してしまう。そんな行動派の母親が見せるミラクルは娘を変えることができるのか。

本作にはたくさんの子どもたちが出演しているが、ほとんどが現地のオーディションで選ばれたという。その多様なキャラクターはとても魅力的で、さらに学校を魅力的にしているのが味のある校長先生で、愉快な演技で楽しませてくれる。本作はインドの若者に、将来への夢を与える重要な作品となっていると同時に、日本の若者に向けても「未来は自分の手で変えられる」というポジティブな思いを抱かせてくれる作品だろう。余談だが、本作のインド公開版では歌や踊りのシーンが含まれているらしいが、国際公開版ではカットされている。わずか5分のシーンではあるが、どのように含まれていたのが気になる。

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