『三尺魂』作品レビュー

 『三尺魂』

長編部門『三尺魂』
©三尺魂2017

長編部門『三尺魂』
©三尺魂2017

人生って打上花火のようなもの?時を超えて展開する涙の人間模様
ネットの掲示板で出会った男女4人は巨大な花火を使って集団自殺をしようとする。最後に来たメンバーの一人には女子高生が。若く、未来ある彼女を心配したメンバーは自殺を止めようとするが説得は失敗し、花火は爆発する・・・。だが、何故か爆発のたびに集合時間に戻ってしまう。3人は女子高生のせいだと考え色んな方法を試すが、何度も何度も同じ時間に戻ってしまい、生々しい爆発の感覚だけが残る。4人はこの状況を脱することはできるのか・・・?

スカイツリーくらい打ち上がる巨大な花火は人生のように儚く一瞬で消えてしまう。ネット社会の現代、問題になっている自殺サイトを取り上げたこのテーマには今の時代の悩みや問題が詰まっている。学校や仕事、家族、誰もが色んな悩みを抱えている世の中。暗く悲しいテーマでもあるが、コミカルでテンポが良く思わず笑ってしまう場面もある。何度も繰り返し時間が戻る理由は何か。他人には簡単なことに感じることも本人にとっては死ぬほど辛いこともある。人の繋がりというものを少ない場面でも十分に伝わってくるこの映画は飽きることなく感じることができる新感覚の映画だ。

加藤悦生監督は現在、フリーランスとしてTV、CM、VPの映像演出を手掛けている。長編デビュー作『PLASTIC CRIME』(13)は、引きこもりという、社会問題を扱いながらもエンターテインメントに仕上げ好評を博した。二作目にあたる本作も、集団自殺というシリアスな設定にも関わらず、笑って泣けるドラマに仕上がっている。こだわりの撮り方とストーリーには監督の手腕を感じさせる作品となっている。また、津田寛治、辻しのぶといった演技派の俳優たちを相手に、ヒロイン希子を演じたのは、『リアル鬼ごっこ』(15)、『人狼ゲーム クレイジーフォックス』(15)などに出演する村上穂乃佳。

【文/片岡由布子】

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