『ひかりのたび』澤田サンダー監督インタビュー

インタビュー
 『ひかりのたび』澤田サンダー監督
―本作の着想はいつ頃からですか?
 普段から考えてることですね。“人命の尊さ”みたいなものを世間ではとても大事にするじゃないですか。でも人間は平等じゃないということです。

―不動産をテーマにしていますが、これはご自身のご経験からですか?
 経験はちょっとしか入ってません。時代が変わると仕事は変わるので。僕が知っているのは、バブル崩壊の直後の様子です。

―撮影期間はどれくらいですか?
 10日プラス実景1日です。本来だったら3週間くらいで撮るものですが、最近は短くやりすぎなんじゃないかなというのはありますね。

―今回モノクロで撮ろうと思ったきっかけは?
 情報を消すということと、内容がシビアなので、映画をモノクロにするとみんなの漠然としたイメージで、アメリカの景気がいい頃の映画や、戦前の日本と重ね合わせるのではないかと思いました。モノクロは照明の陰影のつき方が全く異なるので、カメラマンと照明が相当苦労しました。服のトーンも、カラーだと8人いたら全員違うように見えるんですけど、モノクロは同じ服を着ている人がたくさんいるように見えるので大変でした。でも僕はカメラを構えているわけでもないし、カメラマンの力量がだいぶあると思います。

―主演の志田さんはモノクロでも笑顔が輝いていますね。キャスティングの経緯は?
 なかなか決まらなかったです。大きなポイントが、汚い商売をしている父親の下で育った娘をキャラクターとして考えた時に、いろんな武器がないとだめで、そういった条件に合う人がなかなかいない。その中で、撮影の3か月前くらいやっとこの人はという人に出会いました。

―撮影中のエピソードで思い出深いものはありますか?
 みんなで流しそうめんやりました。あとは、夜の撮影が多くて、蛾とか虫とかが大量に飛んでくるのを、照明の中村さんが『風の谷のナウシカ』のようにライトを2つ炊いて誘導して全部いなくなったんです。

―そんなことができるんですか?
 ええ。驚きました。

―今回、家族をテーマにしていますが、親子の絆についてどうお考えですか?
 絆っていうみなさんが考えているようなものはないです。考えなどが違っても、縁が切れないのが親子関係です。それを表現しています。結婚相手はいつでも別れられます。でも、親子関係は違う。ただ、そこには時間が経つと正当化されるものがある。そういうものが大事だなと思っています。

―本作は劇場公開も決まっていますね。
 劇場公開の実感はあまりないので、よく分かりません。僕の話の作り方の性質上、劇場で退出できないような形で見てもらい、それで評価が決まるのはいいことだと思います。TVでもそうですが、いつでも途中でやめられるということで、最初の15分である程度の型をつけるということがルールになっている作品が多いです。そういう意味で考えると映画館はとても貴重な場で、TVとか配信とは違います。

―配信よりは映画館で見てもらいたい?
 配信に向いている作品であれば、配信でもよかったと思います。

―主人公が18歳ということですが、同年代の女性に見てもらいたいポイントはありますか?
 キャラクターというのは、理由がなければ動かないことが多い。この作品のヒロインである18歳の女の子は、それとは違う設定です。そこは見どころだと思います。若い人が何かをしたいというときに、大人は理由を聞いてくる。そういうので嫌な思いをした人は、この作品は向いているんじゃないかなと思います。理屈の映画ではあるんですけど、理屈じゃない部分もある。それは主人公の女の子の行動などの部分ですね。

―監督自身の思いが強いキャラクターはいますか?
 そうですね、志田さんが最後に顔と顔で終わる。映像表現でチャレンジした。そういう意味では志田さんですね。そこの期待にどう応えてくれるのかというところで、彼女は期待に応えてくれた。無理なことをお願いしたのですが。ストーリーの積み重ねで、どう見えるかというショットだったので、撮影の時は一番心配でした。そこが出来ればうまくできると思った。志田さんがどうやってくれるのかというのをずっと考えていました。

―演技指導はされましたか?
 プロの役者さんが多かったので、分からないとか全く違うということをやる以外はほとんどないと思います。ただ不動産のブローカーという仕事なので、高川さんに対してはいろいろと調整をしました。表に出てこない仕事なので調べようがないと思ったので。

―山田真歩さんも出演されていますね。
 山田さんを決めたのはプロデューサーです。『ひかりのたび』みたいな描かれたことをされたことはないと思います。世間のイメージとは違うと思います。

―本作をご覧になる方へメッセージをお願いします。
 人の死を悪用して自分自身の存在感を高める物語です。普通の人が持つ倫理観を突破しています。突き抜けた話が観たい方にはぜひ観ていただきたいです。

【取材・写真・文/編集部】

長編部門『ひかりのたび』
©2017「ひかりのたび」制作委員会

長編部門『ひかりのたび』
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