長谷川敏行プログラミング・ディレクター、堀切健太(広報・宣伝)

インタビュー
 長谷川敏行プログラミング・ディレクター、堀切健太(広報・宣伝)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019でプログラミング・ディレクターを務める長谷川敏行さんと、広報・宣伝を担当している堀切健太さんにインタビューを行った。

―今年16回目の開催です。昨年は15回目という節目の年で変更点もありました。
長谷川 昨年は15周年記念ということでイベント上映がいくつかあったのですが、今年は我々の本来の目的である若い才能の発掘という点にフォーカスした、コンペ中心の映画祭に回帰しました。特に昨年、国内コンペティション長編部門で優秀作品賞を受賞した『岬の兄妹』が期待していた以上の評価を得て、注目を集めるという結果がありました。そういったものを継続していける映画祭でありたいなという思いからこのようなプログラムになりました。

―今回のラインナップで注目のポイントはどこですか?
長谷川 コンペティションは昨年から規約を変えまして、国際と国内で分けました。国際は昨年と同じ10本ですが、例年以上にバラエティに富んだ作品になっているかと思います。1点は、16回目で初めて長編アニメーションがコンペティションで上映されます。特にこのアニメーションは、イスラエル建国によって住む土地を追われたパレスチナ人の、曾祖父からひ孫まで4世代にわたる物語ですが、シリアスな題材でありながらアニメーションという手法を取ることで老若男女すべての方に見ていただけるような作品になっています。同時に、現在の部分をストップモーションアニメーションで描いていますが、過去の部分については2Dのアニメーションで、2種類のアニメーションを駆使しているということで、手法的にも楽しめ、かつストーリー的にもレベルの高いアニメーションだなというところで、ほかの作品とともにコンペティションで競うべき作品だと思いました。

次に、実力派で人気のある3名の俳優の監督デビュー作がコンペティションに入っています。日本で一番なじみがあるのはキム・ユンソク監督だと思うのですが、大作にたくさん出ており、人気もあり実力もあるという俳優が初めて撮った作品です。見るとビックリするくらいしっかりとした映画で、誰もが“これは!”と思う作品です。俳優が監督の作品が3本並んだのはおもしろいところだと思います。それぞれスタイルも全く違うものですので、俳優というカメラの前に出る立場だった人が裏に回ったときに、どういったものを撮るのかというので、こんなにもバラエティがあるんだなと感じられるので注目していただきたいです。

国内コンペティションは、昨年は長編は4本だったのですが、コンペティションとして成立させるためにもう1本増やしました。会場が2会場なので上映できる枠が限られてはしまいますが、1本でも多く上映したいということで、今年は5本に増やしました。そのうちの4本がワールドプレミアです。これから注目をされていくであろう監督ですし、すべて監督の長編デビュー作です。我々の映画祭を経由して劇場公開に至るという、きっかけになれればいいなと思っています。

―キム・ユンソク監督のデビュー作は上映が決まってから早くも話題を呼んでいますね。
長谷川 ご本人も出ていますし、お母さん役をやっていらっしゃるヨム・ジョンアとキム・ソジンという女優も非常に日本でも有名な女優ですし、娘役をしているキム・ヘジュンもNetflixの「キングダム」に出演されていらっしゃいます。世界的にもこれから名が知られていく女優だろうなというところです。始まりは、浮気している相手の娘といがみ合うもうひとりの娘という2人の女の子のお話で、ドロドロしたお話ではあるんですけど、最終的に見終えると、主人公の2人の女の子が命の大切さを学ぶことで成長していくという成長物語なので見ていてなんて美しいんだろうと思える作品です。

―個人的に気になるところだとハンガリーのコメディ映画がラインナップに入っています。
長谷川 そうですね、我々の映画祭で上映した作品だと『リザとキツネと恋する死者たち』があり、その作品もかなり尖った奇想天外が激しすぎるコメディでした。こちらの作品もアイデアというところで言うと奇抜ですけど、最終的にはほろりとさせるところもあり、ハンガリーの人たちの気質なのか独特な感性の方たちが多いのかなと思わせる、ハンガリーコメディと一つのジャンルにしてもいいくらい独特な世界観だと思いました。

―10作品の中にコメディもあり、ドキュメンタリーもあります。選ぶのは相当難しいのではないですか?
長谷川 実はあまりバラエティに富んだものにしようと作為的に選んでいるわけではありません。実際はそういった意識があるのかもしれませんが、“これはいいよね”と思ったものを選んでいった結果です。映画はバラエティに富んだものなんだと改めて我々も感じさせられるというか学ばせていただきました。選考過程で、「こんな作品もある」「全部おもしろいね!」というところからできたのがこのラインナップだと思います。ただ、おそらく一般的な映画祭というところでかかる映画というのではあまりないという気はしています。我々の映画祭は非常にお客さんとの距離感が近いと思っていますし、そこのところを意識して選んだ結果がいろんなジャンルであり、いろんな国でありということになったのではないかなと思っています。

―堀切さんは選ぶ側ではありませんが、外から見て今回の特徴は何か感じましたか?
堀切 長谷川がプログラミングディレクターに就任してから長いんですけど、毎年バラエティに富んでいるということが続いていることがあって、それがこの映画祭の特徴であり良さだと思っています。ジャンルに特化した映画祭はもちろんあって、それはそれでいいですけど、この映画祭はいろいろなタイプの映画がそろっているのが一つのカラーという感じがしています。今年の作品もドキュメンタリーもあればアニメーションもあって、サスペンスタッチのものもあれば皮肉っぽいコメディ作品もあり、いろいろな映画が世界中にあるということをこの映画祭に来た人が少しでも感じてくれたらいいなと思っています。映画館でかかっている映画以外でもこんなたくさん映画があるということをちょっとでも肌感覚として知ってくれたらうれしいです。
長谷川 そこはあまり意識していない結果ではあります。あとは、今カンヌ映画祭などで女性監督が少なすぎるということが問題視されています。今年は我ながら驚くのですが、1つの作品だけは男性と女性の共同監督で、女性監督が5人、男性監督が6人となりました。全く意識せずに選んだ結果です。それほど女性の映画監督で才能がある方がいらっしゃるんだろうなというのは選んだ結果として我々が学ばされたことです。

―国も様々ですね。日本と中国の合作映画もあります。
長谷川 監督は中国の方ですが今年の3月まで立教大学大学院に通っていて、その卒業制作として作られたので中国と日本の合作としています。撮影はすべて日本で行われています。日本の映像系の大学にも留学生はたくさん来ていらっしゃると思いますが、そのおもしろみがあるのではないかと思います。興味深かったです。

―これだけの作品をどうやって集めているのかにも興味があります。日本にも映画祭はたくさんありますし、国際コンペですと世界中から集めなければいけませんよね。
長谷川 映画祭によってさまざまな集め方があると思いますが、一般的にはプログラマーが映画祭のマーケットに行ってみてきたものから選ぶということがあるのですが、我々は基本的には一回応募してくださいというスタイルです。誰か一人で決めるということはしていないので、行った先で作品を見て選ぶということはしていません。応募期間中に、大きなマーケットとしてベルリン国際映画祭があり、今年は私ともう一人のプログラマーが行きましたが、やっていることはひたすら作品を持っている人たちに会って我々のところに応募してくださいとお願いします。そのため、誰かが「この作品はいいよ」というところから始まったという作品はありません。みんなで見て、徐々に絞っていき、最終的にこの10本が選出されました。

―応募作品数が861本ということで結構な本数ですよね。
長谷川 そうですね、ここ数年は800~900本の間で推移しています。一時期少し減ったこともありますが、コンスタントにこの数ですし、昨年初めて応募国数が90を超えて、98か国でした。今年も92か国ということで、映画祭として自分たちとしても誇りに思うところです。

―今回、国際コンペティションの審査委員長が三池崇史監督です。期待するところはありますか?
長谷川 やはり三池監督は商業的にも評価的な面でも両方とも評価されている日本では限りなく数少ない監督だと思います。その監督の一人に、我々が選んでいる作品は今年この10本ですというのを見ていただくという意味ではとても光栄ですし、自分も一映画ファンという立場としてワクワクしています。もちろんほかの審査員とともにともに4名で選んでいただくわけですが、三池監督が我々が選んだ作品をどのように評価してくださるのかというのに興奮しています。

―三池監督は今年カンヌ国際映画祭に作品を出品していらっしゃいます。
長谷川 特集のところでも劇場デビュー作品を上映させていただきます。今までに至るまでは本当に長い道のりだと思います。作風も、三池監督のカラーは我々の中にはあると思うのですが、1本目から今の作品では変わってきていると思います。さまざまな経験の中で培われてきた感性で選んでいただきたいなと思っています。

―特集上映についてお伺いします。さきほどお話にあった三池監督を含めて4人の監督を特集しています。
長谷川 いま大作映画を撮っていたり、おそらく世界中の人たちが名前を聞けば「あの人ね」と思うような監督から選びました。その監督が1本目に作った作品は、もちろんDVDなどでは出ていますが、意外と見ていない人もいると思います。そんな作品を見ていただくのは映画祭ならではなのかなというのが企画の意図です。

―スクリーンでの上映というのはあまり聞かないような作品もありますよね。
長谷川 今回候補になった作品はほかにもあったのですが、難しかったのはDVDの権利は日本にあっても、初めの買い付けの契約が切れてしまうと劇場での契約を更新していないという作品が多かったのです。DVDや配信はできても、劇場でスクリーンでかけることはできないという作品が非常に多かった。公開の後に劇場では1回や2回という単位でしかかけないことを考えると商売的にはないのかなというところで、今回は泣く泣く断念した作品もあった中での4本です。『THX-1138』はワーナーさんからお借りしました。『恐怖のメロディ』は、イギリスにパークサーカスという劇場上映の権利クリアをする会社がありまして、その会社がアメリカの会社と契約して一手にやるということになっています。そのあとアメリカのスタジオからの最終的なアプルーバルを取らなければいけないのですごく時間はかかりました。チラシの入稿締め切りの直前にアプルーバルが取れた作品もあり、無事取れた時は涙が出そうになりました(笑)映画体験としてはぜひスクリーンで見ていただきたいと思いますし、スクリーンで見るのは心に残るものが違うので、これをぜひ若い方にも見ていただきたいです。

―オープニング作品が『イソップの思うツボ』です。映画祭でかけることが前提で製作された作品ですか?
長谷川 昨年撮影された作品で、この作品については埼玉県と彩の国ビジュアルプラザで製作しているので、プログラミングを担当する私の立場としてはぜひやりたいなという思いがあった作品ですが、もちろんこれは私だけで決めることではなく、すべての関係者の承諾が取れるまでは決められませんでしたが、できれば我々のところで先に上映したいと考えていた作品です。SKIPシティのインキュベート施設に入居している3人で、映画祭でも上映されてきた監督たちですので、こういった作品で戻ってきてもらえるのは映画祭としては光栄です。

―3人とも入居されているんですね。
長谷川 3人で借りています。中泉監督は去年のオープニング作品を撮られていますし、インキュベートオフィスの理念である映像クリエイターの拠点として若手の人に活躍してほしいと思っていたのがこういった形で結実したかなと思っています。

―ほかの映画祭にはない利点ですよね。
長谷川 我々にとって大きなポイントではあります。

―最後に映画祭を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
長谷川 少しずつですけど日本の作品で活躍する監督が出てきていますし、国際コンペティションの作品も過去に比べると劇場公開される作品が増えてきています。昨年は『ザ・ラスト・スーツ(仮題)』が『家へ帰ろう』として公開されてたくさんの観客にお越しいただいていたり、『あの木が邪魔で』というタイトルで上映したアイスランドの映画が27日から『隣の影』というタイトルで公開されます。今後も公開されるタイトルがあると聞いています。少しずつですが、映画祭の歴史が実を結んできているのではないかと思います。
堀切 映画祭って楽しいよというのを来て感じてほしいと思います。普段映画を見ない人にこそ映画祭を入口に映画に興味を持っていただきたいです。劇場公開される作品も増えてきていますし、“SKIPシティに来ると何かおもしろいのが見れる”というのは自信を持って言えるので、試しに体験しに来てほしいです。それで少しでも映画や文化的なものに興味を持ってもらえるきっかけになれば映画祭としてはうれしいことです。

【取材・写真・文/編集部】

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