Sano ibuki


32歳で命を絶った“非正規歌人”萩原慎一郎による歌集を映画化した『滑走路』の追加キャスト6人が発表された。

いじめや非正規雇用といった自らの経験を基に短歌を発表し続けた歌人・萩原慎一郎による「歌集滑走路」。あとがきを入稿した翌月、32歳の若さにして命を絶ち、デビュー作にして遺作となった一冊の歌集は、苦難の中それでも生きる希望を歌い、苦悩を抱える人へのエールとして多くの共感を呼び、自費出版がメインの歌集において異例のベストセラーを記録。原作歌集をモチーフにオリジナルストーリーとして紡がれる本作。水川あさみが扮する翠、浅香航大扮する若手官僚・鷹野、そして新人・寄川歌太が扮する中学二年生の学級委員長。それぞれ悩みを抱えて生きる3人の人生が、やがて一つの道へと繋がっていく―。非正規、いじめ、過労、キャリア、自死、家族現代を生きる若い世代が抱える不安や葛藤、それでもなお希望を求めてもがき生きる姿を鮮烈に描き出す。

本作の主題歌を務めるのは、昨年公開されたアニメーション映画『ぼくらの7日間戦争』、今年1月公開の今泉力哉監督作品『his』の主題歌も務め、映画界からラブコールが絶えないシンガー・ソングライターSano ibuki。空想の物語の主題歌たちを収録した1stフルアルバム「STORY ELLER」も話題となり、文字通り物語を音楽として紡ぎだす才能に高い評価を得る気鋭のアーティストが、映画『滑走路』のために新曲「紙飛行機」を書き下ろした。

本作のオファー以前より、原作歌集を愛読していたというSano。映画の制作途中から映像を何度も見返し、大庭監督ともディスカッションを重ねながら楽曲を構想。映画のラストシーンに寄り添い、観客の心にその余韻を深く残す主題歌を完成させた。原作歌集の世界観を想起させる歌詞も印象的な楽曲に仕上がっている。

Sano ibukiコメント

今回「滑走路」の主題歌を担当させて頂きました。"紙飛行機"という曲です。監督から「最後にSanoさんの曲で映画を空へ飛ばしてほしい」という言葉を頂き、この作品の叫びを遠くへ飛ばす風となれるような楽曲を作りたいと模索した末、完成しました。表面的な希望ではなくその奥にある絶望や妬み、悲しみを包み込む優しさのようなものを感じるこの作品に出会えたことで、僕自身救われたような気持ちになりました。劇場で鑑賞できることを楽しみにしています。

大庭功睦(監督)コメント

Sano ibukiさんの「マリアロード」を聴き、「この人なら映画を観た後にそれぞれの感情を抱えた観客の思いを、その深く柔らかい声でまとめ上げてくれるような、スケール感のある音楽を作ってくれるのではないか」と感じました。また叙情的で物語性のある歌詞も、原作者である萩原さんの歌と親和するように感じています。初めてSanoさんにお会いした時、僕の目を真っ直ぐに見て、「映像を5、6回は観ました!」と言ってくれたのをよく覚えています。なんとなく、傑出した才気で孤独に音楽を作られている方なのかな、と勝手に思っていたので、そこまで映画と熱心に向き合ってくれる事が嬉しくもあり、また意外でもありました。Sanoさんは、原作、映画と対峙しながら、“自分は音楽としてどう答えを出すべきか”をとても真摯に誠実に考えてくれていて、その姿勢をとても頼もしく、また嬉しく感じました。最初のデモが上がった時にラストシーンの映像にあてながら聴いたのですが、思わず感動して泣いてしまいました。僕の理想を遥かに凌駕し、原作も映画も力強く前へと運んでくれる楽曲がそこにあったのです。

映画『滑走路』は2020年秋に全国で公開!
監督:大庭功睦
出演:水川あさみ、浅香航大、寄川歌太、木下渓、池田優斗、吉村界人、染谷将太、水橋研二、坂井真紀
配給:KADOKAWA
©2020「滑走路」製作委員会