今年はオンライン開催となったアニメの祭典「AnimeJapan 2021」にて、3月27日(土)に「Production Works Channel【プリプロダクション】作品の骨格を作る脚本~『サイダーのように言葉が湧き上がる』より~」が開催され、イシグロキョウヘイ(監督・脚本・演出)、佐藤大(脚本)が登壇、『サイダーのように言葉が湧き上がる』の新公開日が7月22日(木・祝)となることが発表された。

2020年代、そのはじまりを告げる初夏―。サイダーのように甘く弾ける、少年少女たちの青春グラフィティ。17回目の夏、君と会う―。人とのコミュニケーションが苦手な俳句少年と、コンプレックスを隠すマスク少女。何の変哲もない郊外のショッピングモールを舞台に出逢ったふたりが、言葉と音楽で距離を縮めていく、ボーイ・ミーツ・ガールストーリー。その主人公であるチェリー役には、初映画、初声優、初主演となる歌舞伎界の超新星・八代目 市川染五郎。ヒロインのスマイル役は、若手随一の確かな表現力で高い評価を受ける杉咲花。

脚本のスタートについて、「企画自体はフライングドッグから音楽もののオリジナルアニメのお話をいただいて、1年半くらい自分1人で回していたのですが上手くいかず、僕の方から佐藤大さんにお声がけしました」と明かすイシグロ監督。佐藤は「元々イシグロ監督から最初に頂いたときはSFものだったんです(笑)でも監督から現代劇ベースに変更したいと相談され、共同執筆という形でお互いに意見を出し合って、それを融合しながら作り上げていきました」と明かした。

本作の印象的な要素である≪ショッピングモール≫≪アナログレコード≫≪俳句≫の3つのキーワードについては、「毎週打ち合わせをしていく中で、1キロ圏内の限定的な場所で展開されるストーリーにしたいと思い、地方の風景が感じられるショッピングモールを舞台にしました。また、ありきたりな音楽ものにはしたくなかったので、音楽に関わる記憶を辿る話にしたいと思い、実際にレコードの現物を脚本打ち合わせの場に持って来たりして、互いに出てくるキーワードをピックアップしていきながらプロット化していきました」とイシグロ監督。

佐藤は「少年が主人公の作品を作るとき、どうしてもモノローグに頼りがちになってしまうんです。でも今回はそこに頼らず、モノローグに匹敵するような心情のピンを打つものとして、最初にラップを思いつきました。ラップで練っていく中で、いとうせいこうさんの『俳句はラップの始祖だと思う』という言葉に感銘を受け、ラップから俳句へと繋がっていきました」と語った。

また、イシグロ監督からは「こうやって、要素と要素が一方通行ではなく、回り道したり近道したりして脚本の中でだんだんと繋がっていきます。脚本は佐藤大さんが大元を担当して、自分は4パートのシナリオうち、1パートを担当しました。お互いが壁役になるとすごく意見が出しやすくて、一人で作業しているときには考えられないくらいのスピードでシナリオのアイディアが浮かんでくるんです。お互いアイディアをポンポン出し合って作り上げていったので、正直どっちが先に出したアイディアなのか分からないものも沢山あります(笑)それが共同脚本の面白いところです」と詳細に語った。

最後に、アニメ業界を目指す方へ、佐藤からは「アニメ以外に好きなことを隠し玉として1つ持っておくこと!僕にとっては「音楽」です。まさにこの作品でもそうでした」、イシグロ監督からは「最終目標がアニメの監督だからとにかくアニメの勉強をしなきゃ!ということは全くないです。それよりも感性を磨いてほしい。技術は後からいくらでも付いてきますから。自分の中の好きを先鋭化することが大事です」とそれぞれメッセージが贈られた。

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は2021年7月22日(木・祝)より全国で公開!
監督:イシグロキョウヘイ
声の出演:市川染五郎、杉咲花/潘めぐみ、花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛、諸星すみれ/神谷浩史、坂本真綾/山寺宏一
配給:松竹
©2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会