石井裕也監督最新作『茜色に焼かれる』の監督・共演者が女優・尾野真千子の魅力について語った。

この世界には、誰のためにあるのかわからないルールと、悪い冗談みたいなことばかりがあふれている。そんな弱者ほど生きにくい時代に翻弄されている一組の母子がいた。哀しみと怒りを心に秘めながらも、わが子への溢れんばかりの愛を抱えて気丈に振る舞う母。その母を気遣って日々の屈辱を耐え過ごす中学生の息子。彼女たちが絶対に手放さなかったものとは―。本作で人間の内面に鋭く向き合ったのは石井裕也監督。多難の時代に逆風を受けながらも前向きに歩もうとする母親・田中良子役を尾野真千子が演じる。

本作で主人公・田中良子を演じた尾野真千子について、石井裕也監督は「田中良子役には尾野真千子さんしか考えられませんでした。芝居を本気でやることの崇高さ、俳優がうなされるほど考えて見せる芝居の熱量、その素晴らしさ。たとえば、普段の会話のときよりも、夢中になって芝居をしている尾野さんに僕は「尾野真千子」を感じます。その芝居に真実が見えてくる。誠実にお芝居をしている人の姿は『祈り』のように見えるときがあります。こちらが引くくらいに演じる役を信じようとする。尾野さんのそんな姿は、僕にとってはそのまま希望につながるものでした」と、その演技にかける想いの強さを絶賛した。

息子・純平役を演じた和田庵は「撮影前、尾野さんには怖い人というイメージがあったけれど、実際はそんなことはなくて優しくて明るくて面白い人でした。本当の親子のように接してくださって、僕も自然に演技ができました」と感謝の意を示す。良子の同僚ケイ役を演じた片山友希は「撮影中は尾野さんの明るさには救われました。すごく包容力のある方で、共演のプレッシャーみたいなものを全然、感じさせないんです。きっと尾野さんは私ができるまで待ってくれたんだと思います。すごくありがたかったです。尾野さん、メチャクチャかっこいいです。尾野さんみたいになりたい」と尊敬の念を語った。

交通事故で命を落とす夫・陽一役を演じたオダギリジョーは「もし陽一の存在が作品を通じて強く感じられているとしたら、それは尾野さんの表現力のおかげです。当たり前のことですが、それはもう尾野さんの底力ですし、そのすごさ、ですね」と、その演技力に感謝を述べた。風俗店の店長・中村役を演じた永瀬正敏は「尾野さんはいろんなものに立ち向かっていました。それでいて、現場ではみんなを包み込んでいた。良子さんのように「まあ頑張りましょう」という感じで現場をハグされていましたね。コロナ禍という特別な状況下で作品を作っているという部分を含めて、とても見事で立派な主演の姿だったと思います。時に明るく、時に締めて。この作品をちゃんと背負っている感じがありました」と褒め称えている。

映画『茜色に焼かれる』は2021年5月21日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開!
監督・脚本・編集:石井裕也
出演:尾野真千子、和田庵、片山友希/オダギリジョー、永瀬正敏、大塚ヒロタ、芹澤興人、前田亜季、笠原秀幸/鶴見辰吾、嶋田久作
配給:フィルムランド
R-15+
©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ