『草の響き』の公開記念舞台挨拶が10月9日(土)にヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、東出昌大、奈緒、斎藤久志監督が登壇した。

心に失調をきたし、妻と2人で故郷函館へ戻ってきた和雄。病院の精神科を訪れた彼は、医師に勧められるまま、治療のため街を走り始める。雨の日も、真夏の日も、ひたすら同じ道を走り、記録をつける。そのくりかえしのなかで、和雄は平穏を見出していく。そんな中、路上で出会った若者たちとふしぎな交流を持ち始めるが…。心を病み、ランニングに没頭する和雄役を東出昌大。慣れない土地で不安に苛まれながらも夫を理解しようと努める妻・純子役を奈緒が演じる。

本作への出演を「原作では僕の演じた和雄は独身の設定ですが、脚本には妻がいて妊娠している。それが大きな違いですが、その脚本が素晴らしかったです」と振り返る東出は、撮影ロケ地となった函館の街の印象について「空が広くて、路面電車が走っていて、少し寂し気なところもある一方、西日の柔らかい光が心に残っています」と語った。原作には登場しない妻・純子を演じた奈緒は「監督には(いわゆる)お芝居をしないでくれとずっと言われていたので、初日からその壁にはぶつかりましたし、純子として(東京を離れて夫と共に)函館にいるっていうことはどういうことなんだろうと撮影中もずっと模索し続けて手探りで過ごした記憶があります」と振り返った。

役作りのために、撮影前に一人で函館に行ったという奈緒は「タクシーでいろいろと函館をまわったのですが、運転手が偶然にも斎藤監督と同じサイトウさんでご縁を感じました(笑)九州出身の私からすると、北海道の海は印象が全然違いました。一種の神々しさと恐ろしさのようなものを感じて、函館は人がすごく優しい反面、独りでいる時のさみしさは非常につらいかもしれない。そんな風に純子は函館で過ごしていたのかもしれないと思ったりしました」と明かした。

また大東駿介演じる和雄の親友、研ニと三人で過ごすシーンについて、斎藤監督が「あるシーンについて、別の撮影をしている時に、撮影がない東出さん、奈緒さん、大東さんの三人が集まって俳優たちだけで本読みをやっているのを美術部の人から聞いたりした。函館に合宿しての撮影だったので、ずっと一緒にいる時間があったことは大きかったのでは」と振り返ると、東出は「監督から言われていた芝居をせず、なるべくナチュラルにカメラの前にいるということを俳優たちはみんな意識していたのではないかと思います」、奈緒は「和雄という役を理解したい私の気持ちと、純子が夫を理解したいという気持ちがリンクしていくなかで、友人役の大東さんがいてくれることで、色々な気持ちに気付くことができました」と語った。

最後に奈緒は「この時にしか撮れなかったもの、それは函館の景色もそうですし、ひとつひとつ奇跡のような瞬間が集まっている映画だと思っています。みなさんの大切な五感でこの映画を受け取って下さったら嬉しいです」、東出は「考えるより感じた方がこの映画は深く受け止められるのではないかと思います。きっといい映画です。いわゆる名シーンみたいなものを力を入れて撮っているみたいなタイプの映画ではありません。緩い大河のような、ずっと続いていく日常を定点カメラで捉えたような映画です。だからこその魅力がこの映画にはあります。それぞれが思った大切なものを持ち帰っていただければ幸いです」とメッセージを送った。

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映画『草の響き』は全国で公開中!
監督:斎藤久志
出演:東出昌大、奈緒、大東駿介、Kaya、林裕太、三根有葵、利重剛、クノ真季子/室井滋
配給:コピアポア・フィルム、函館シネマアイリス
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