乱反射する少女の愛憎エンターテイメント『ひらいて』の特別映像が解禁された。

女性から圧倒的な支持を得る芥川賞作家・綿矢りさが、高校生による禁断の三角関係を描き、人間の根源的な愛を問う文芸少女のバイブルとなった小説「ひらいて」を、弱冠26歳・新進気鋭の若手監督・首藤凜が脚本・監督を務めて映画化。恐れを知らない女子高生の熱い恋心が、勢いあまり、意中の彼の恋人にまで向けられる、エキセントリックでありながらも切実な純愛を描き、いかなる恋愛映画も及ばなかった境地に行き着く、青春映画の系譜を飛び越えた本作。主人公の女子高生・木村愛役を山田杏奈が演じる。

ミニシアター、映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」では毎回様々なゲストを迎えて映画、映画館にまつわる様々なトークを行う。今回、10代の時に綿谷りさ原作の「ひらいて」を読んで8年後に商業長編デビュー作品として映画『ひらいて』の監督をされた首藤凛監督をゲストに迎え、ユーロスペースの北條誠人支配人と対談が行われた。

対談動画のフル尺は ミニシアタークラブに入会後、閲覧可能。一部編集した対談動画は こちら

――映画作りに興味を持たれたきっかけはなんでしょう?
首藤 高校生の時に文化祭で友人と映画を1本撮ったんですが、すごく失敗したんです。その当時見ていた映画や演劇に影響されて作ってみよう!ということになって作ったんですができたものが内輪的でつまらないものになって、上映するしないの話になって結局上映するんですが、最後に観客に謝るという…映画を作るって怖いなとその時思いました。その後、大学に入っても何かを作りたいという気持ちがあったので早稲田大学映画研究会に入りました。

――その後、自主制作された『また一緒に寝ようね』がぴあフィルムフェスティバル2016で受賞されますが、大きなきっかけになりました?卒業したら映画監督になろうとか?
首藤 いえ、その時はまだ全然思ってませんでした。自主映画の監督ってやることが多くて大変なので、目の前のことだけで精一杯で。

――ぴあフィルムフェスティバルで受賞すると「スカラシップ」という長編製作の援助システムに挑戦する資格を得ると聞いたんですが、この時、「ひらいて」の映画化に向けて出版社にコンタクトを取られたそうですね?
首藤 はい。先輩がたまたまその出版社にいたこともあって、お手紙を書きました。その時に口約束ですが、撮れるなら撮ってもいいよと。ただぴあのスカラシップはオリジナルが規定だったようなので実現はしなかったんですが。

――綿矢りささん原作小説「ひらいて」に出会ったのは高校生の時で、その時からずっと映画化に向けてライフワークのように取り組んでこられたそうなのですが、そこまでこの原作にこだわった理由はなんでしょう?
首藤 一番最初に胸を打たれた小説で、生きていく糧になるような。。自分の人生で色々なことが起きる前に独特ないびつな関係性の中で人が人に受け入れられていく様が衝撃でした。これから自分にもいろんなことが起きてきそうな予感とあいまって。本当にこの原作に救われてきたので。その後就職をして仕事をしながらずっと脚本を書いてました。他に原作権を取られたらどうしようと正式に固まるまで不安でしたちょいちょい対抗馬がいる、といったことも耳にして気が気じゃありませんでした(笑)

――初の商業長編映画ですがプレッシャーはありましたか?
首藤 スタッフの皆さんが本当に優しくてありがたかったです。ただ、当たり前なんですが監督としての判断をきちんとしていかなければいけないのでそのあたりは孤独だなと思いました。

撮影現場において。俳優たちとの役作りについて
北條 俳優との役作りで苦労された点はありますか?
首藤 特に主人公の愛についてですかね。山田杏奈さん演じる愛というキャラクターは私がずっと共鳴してきたキャラクターなんですが、演じる場合には愛自身も自分のことが良くわかってないので、演じる時に山田さんも悩まれたようなんですが、私は、その分からなさもそのまま演じて欲しいと思っていたので試行錯誤しました。私が言語化して伝えてその通りに演じてもらってもあまり面白くならないような気がしていて。山田さんも愛と同世代なのでその渦中の中にいる人の特有の分からなさがいいと思いました。役者さんとこんなにも対話することも初めてでした。作間さんは演技もほぼ初めての様子で背の高さ、スタイルの良さも含めて持て余している感じでした。撮影の自分の出番が終わっても気配を消して他のシーンの撮影を見ていたり、私がこのシーンは見られたくないな、と思ったときは何も言わなくても帰っていかれたり。芋生さんは人あたりも良くて優しい方なんですが演じること以外は全く興味のない感じだなあと思いました。
北條 見ていて、初めは作間さん演じるたとえというキャラクターが勉強ができてかっこいいから愛がひかれていくのかなと思っていたら、実は家庭環境も酷くてそこから脱出するために勉強を一生懸命していて、中学の時から付き合っている秘密の彼女だけは連れ出そうとしているんだなと、その辺りのキャラクターが寡黙ゆえに面白かったですね。あとはバス停でのシーンや山田杏奈さん演じる愛と芋生悠さん演じる美雪がカラオケに行くシーンが印象的でした。
首藤 カラオケのシーンは私も気にいってるので嬉しいです!」
北條 主人公の愛の体当たりの衝動的な行動を周囲がどう受け止め続けいつ切り返して来るか興味深く見ていました。あまりネタばれできないですが、冒頭のゴミ箱バーーン!!のシーンとかいいですよね(笑)

――公開に向けてのメッセージをお願いします。
首藤 観るといろいろ言いたいことが出てきたり、もやもやと複雑な気持ちになったりするかもしれませんがぜひ、いろんな感情になってもらえたら一番嬉しいなと思います。

『ひらいて』は2021年10月22日(金)より全国で公開!
監督・脚本:首藤凜
出演:山田杏奈、作間龍斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、芋生悠、山本浩司、河井青葉、木下あかり、板谷由夏、田中美佐子、萩原聖人
配給:ショウゲート
©綿矢りさ・新潮社/「ひらいて」製作委員会