両耳が聞こえないプロボクサーと、視力を失いつつあるトレーナーの交流を描いた映画『ケイコ 目を澄ませて』が2022年に公開されることが決定した。

両耳が聞こえないプロボクサー・ケイコと、視力を失いつつあるトレーナー・笹木の交流を描く本作。元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を基に、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督が登場人物たちの細やかな表情を丁寧に映し出す。監督を務めるのは、『きみの鳥はうたえる』がベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品され、同作が2018年映画芸術日本映画ベストテン1位にも輝いた俊英・三宅唱。2013年までに4戦を戦った耳が聞こえない元プロボクサー・小笠原恵子の自伝を原案として本作を書き上げ、刻一刻と変化するケイコの眼差しと、彼女を案じる家族やジムの面々の心のざわめきを16mmフィルムに焼き付けている。

生まれつきの難聴と付き合いながらプロボクサーとなった主人公・ケイコ役に、『愛がなんだ』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞に輝き、ドラマ「#家族募集します」での好演も記憶に新しい岸井ゆきの。今回、プロボクサー役としてクランクインの約3か月前から厳しいトレーニングを行ったほか、劇中で使われる手話の練習など、入念な準備を行い撮影に臨んだ。日々の練習にひたむきに向き合い、家族やトレーナーたちの想いに触れることで揺れ動くケイコの感情の機微を、言葉ではなく眼差しで表現した岸井の新境地が垣間見える。

セコンドの指示もゴングの音も聞こえないケイコを受け入れ、再開発が進む下町で小さなジムを運営するトレーナー・笹木役には、日本映画界で圧倒的な存在感を放つ三浦友和。喧嘩するように力んでしまうケイコに根気強く指導を行いながらも、次第に視力を失っていくという難役に挑んだ。ケイコの実力と可能性を誰よりも信じるトレーナー・笹木、そしてその想いに応えるように“目を澄ませて”鍛錬を重ねるケイコ。言葉では語りつくせない、確かな絆で結ばれたふたりの関係が、静かに描かれている。笹木会長の妻役には仙道敦子。そしてジムのトレーナーとして三浦誠己と松浦慎一郎。その他にも佐藤緋美、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子など実力派キャストが名を連ねている。

岸井ゆきの(小河ケイコ役)コメント

現場に入ればすでに照明はうつくしく、撮影中は16mmのフィルムがカラカラと回る音だけが辺りを満たしていました。
この世界をスタッフの皆さんがいち早く捉えてくださり、支えてくれたから、わたしはただケイコとして存在することができました。
この作品はケイコの日常であると同時に、今を生きること、自分の人生をどう生きるのかという問いなのかもしれません。
三宅監督も参加した三ヶ月のボクシング練習、手話練習もかけがえのない時間でした。ほんとうの意味で一緒に戦ってくれたこと感謝します。
ああ早く観てほしい。それだけです!

三浦友和(笹木克己役)コメント

特別な仕掛けも予定調和の起承転結もない。でもあっという間の99分。
音のない日常を生きる主人公のケイコの気持ちを、観た人間それぞれが自由に解釈して欲しいと無責任に丸投げされることがない。
ケイコを抱きしめたくなるような、素直に心地よく余韻に浸れる作品だった。サンドバッグ、ミットを連打する音が強烈に耳に残る。
街の喧噪、人々の声。だがこの音はケイコには聞こえていないのだと気づく度に、目にしている画面の風景が違った色に変化する。
この作品には映画音楽がない。観客が耳を澄ませなければならない。

三宅唱(監督)コメント

とても大切な映画ができました。ご自身の半生記「負けないで!」を書かれた小笠原恵子さんに深く敬意と感謝の意を表します。ありがとうございます。また、岸井ゆきのさんとともにこの映画に取り組めたことを心から誇りに思います。彼女の信じがたいほどの勇敢さがなければこの映画は生まれていません。タイトル通り、彼女はこの映画そのものです。そして、三浦友和さんはじめ全ての役者と全てのスタッフの、言葉では言い表せないほど澄んだまなざしもまた、この映画そのものです。全員の素晴らしい仕事にただただ魅了されました。書きたいことは山ほどあるのですが、なるべくまっさらな気持ちで皆さんに「発見」してほしいので、いったんこのあたりで我慢します。言葉以上のものがスクリーンを通して伝わることを確信しています。ケイコと多くの観客の皆様とが出会えますように。

『ケイコ 目を澄ませて』は2022年に全国で公開!
監督:三宅唱
出演:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中原ナナ、足立智充、清水優、丈太郎、安光隆太郎、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子、仙道敦子/三浦友和
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS