「食」にまつわるアジア映画と東京国際映画祭「CROSSCUT ASIA」をアンコール特集する「CROSSCUT ASIA おいしい!オンライン映画祭」が2月3日(木)まで開催されている。

東京国際映画祭の一部門として2014年から2019年の6年間にわたり、東南アジアの国、監督、テーマ等さまざまな切り口でアジア映画の特集上映を行ってきた「CROSSCUT ASIA」。2014年「魅惑のタイ」、2015年「熱風!フィリピン」、2016年「カラフル!インドネシア」、2017年「ネクスト!東南アジア」、2018年「ラララ♪東南アジア」、2019年「ファンタスティック!東南アジア」と、毎回テーマに沿った魅力的な作品を上映してきた。

今回オンラインで開催されている「CROSSCUT ASIA おいしい!オンライン映画祭」は2部構成の特別編で、メイントピックは“食”。“食”をテーマにした7作品(うち1作品は日本からは視聴ができない)と、これまでに「CROSSCUT ASIA」部門で上映された6プログラムの計13プログラムが無料で配信される。

2018年開催の第31回東京国際映画祭に斎藤工や松田聖子らが出演する『家族のレシピ』を出品したことでも記憶に新しいシンガポールの映画監督、エリック・クー監督による『ワンタンミー』をはじめ、昨年開催された第34回東京国際映画祭で『復讐は神にまかせて』が上映されたエドウィン監督の『アルナとその好物』など、これまでに東京国際映画祭と縁がある監督による“おいしい”映画がラインナップされている。

また、「CROSSCUT ASIAアンコール」では、第31回東京国際映画祭でコンペティション部門審査委員長を務め、昨年開催の第34回東京国際映画祭で永瀬正敏と「アジア交流ラウンジ」でトークを行ったブリランテ・メンドーサ監督の『罠(わな)~被災地に生きる』をはじめとしたカンボジア、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシアの作品がラインナップされている。

そして、本映画祭の注目ポイントとして、関連企画「スペシャルメニュー」が実施される。映画監督たちのトークやインタビューなどの記事や動画を楽しめる。“ランチレポート”では、ミャンマー、タイ、ベトナム、カンボジア、日本、インドネシア、フィリピン、マレーシアなどの国際交流基金東南アジア拠点のスタッフによるリアルな“5日分”のランチ報告が写真と動画などで紹介されている。また、在日各国大使館での料理にまつわるインタビューにも注目だ。大使館職人による日本での食生活は耳にする機会の少ない貴重な話となるだろう。

さらに、今回作品が上映される作品のうち5作品の監督とのオンライントークが配信される。モデレーターとのトークで、より作品が深堀される内容となっており、作品を視聴した後にはよりその国の“食”について興味が沸くことだろう。なお、「スペシャルメニュー」は登録不要で、誰でも無料で楽しむことができる。

「CROSSCUT ASIA おいしい!オンライン映画祭」は1月21日(金)10:00~2月3日(木)23:59にオンラインで開催。字幕は日本語と英語(一部作品には東南アジアの複数言語の字幕が付く)が用意され、視聴は無料(一部作品は視聴対象国に制限がある)。詳細や視聴登録は こちら

第一部「CROSSCUT ASIA特別編 「おいしい」アジア映画特集」

東南アジア各国・地域の食文化にまつわる珠玉の作品7本を上映。

『アルナとその好物』(Aruna & Her Palate)


2018年/インドネシア/107分
監督:エドウィン
出演:ディアン・サストロワルドヨ、オカ・アンタラ、ニコラス・サプットゥラ
視聴可能国: 日本、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、ミャンマー、フィリピン、ベトナム、ラオス
鳥インフルエンザの調査旅行に出かけることになったアルナが、友人らとインドネシア各地の名物料理の食べ歩きを計画する男女4人のロードムービー。旅先のジャワ島では黒スープ、カリマンタン島では蟹入り麺等、数々の料理に出会う。エドウィン監督の新作『復讐は神にまかせて』が2021年のロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞。
©CJ Entertainment, Palari Films

『バロットの大地』(Balut Country)


2015年/フィリピン/94分
監督:ポール・サンタ・アナ
出演:ロッコ・ナシノ、ロニー・クイゾン、ヴィンセント・マグバヌア、アーチ・ア  
ダモス
視聴可能国:全世界(フィリピンを除く)
亡父の遺言で広大なアヒル農場を相続することになった息子。家を出て都会でミュージシャン暮らしの彼は売却するつもりで農場を訪れるが、雄大な風景の中で心が揺れはじめる。タイトルの「バロット」とは、孵化しかけたアヒルの卵を茹でて食べるフィリピンのソウルフード。2015年「CROSSCUT ASIA」上映作品。
©Solar Pictures

『カンパイ!日本酒に恋した女たち』(Kampai! Sake Sisters)


2019年/日本、アメリカ/96分
監督:小西未来
出演:今田美穂、千葉麻里絵、レベッカ・ウィルソンライ
視聴可能国:インドネシア、カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー(※本作品は日本では視聴できない
長らく「女人禁制」と言われてきた日本酒の世界。そんな伝統的かつミステリアスな世界で新しい世代の女性たちが輝く姿を通じて、観る者たちに今を生きる勇気と、さわやかな感動を与えてくれるドキュメンタリー。サンセバスチャン国際映画祭を皮切りに世界各地で上映された『カンパイ!世界が恋する日本酒』に続く第二弾。
©2019 KAMPAI! SAKE SISTERS PRODUCTION COMMITTEE

『愛のスープ』(My Love is Soup)【日本初上映】


2020年/タイ/99分
監督:クリアンクライ・モンウィチット
出演:ハッサウィー・パッカポーンパイサーン、サッサニー・ウィラチャット、ピ
ティサック・ヤオワナーノン、スッティダー・カセームサン・ナ・アユッタ
ヤー
視聴可能国:日本、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、ブルネイ、ラオス
料理が苦手であるにもかかわらず、高級レストランで働くことになったミニー。自分のミスで下げてしまった店の評価を挽回するため、宮廷料理人だった曾祖父の秘伝のスープのレシピを求めて奔走する。イスラム教徒が多いタイ深南部の料理が目に楽しく、レストランの厨房事情も覗ける、ハートフルコメディ。
©MPictures Co., Ltd

『デリシャス!』(Namets! (Yummy!))【日本初上映】


2008年/フィリピン/94分
監督:ジェイ・アベリョ
出演:エンジェル・ジェイコブ、クリスチャン・バスケス、ぺケ・ガリャガ
視聴可能国:全世界
フィリピンのネグロス島・バコロドにて、借金のカタとしてイタリアンレストランが郷土料理の店に転身。鮮やかなプレゼンテーションのネグロス料理にグルメも唸る、目にも美味しいロマンティックコメディー。活況のフィリピン・インディペンデント映画界の登竜門シネマラヤ・フィリピン・インディペンデント映画祭出品作。

『川は流れを変える』(A River Changes Course)


2013年/カンボジア、アメリカ/83分
監督:カリヤネイ・マム
視聴可能国:全世界(米国を除く)
カンボジアの3人の若者の暮らしを追うドキュメンタリー。漁村での魚の乱獲、借金と貧困、森林破壊といった社会問題をあぶり出しながら、人々が日々食べ、働き、生活を紡いでいく姿を映し出す。2013年サンダンス映画祭ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門審査員大賞受賞。
©2013 MIGRANT FILMS and The DOCUMENTATION CENTER OF CAMBODIA

『ワンタンミー』(Wanton Mee)【日本初上映】


2015年/シンガポール/71分
監督:エリック・クー
出演:コー・ブーンピン、ビル・ティオ、タミー・チュウ
視聴可能国:全世界
中年料理評論家が、食の取材を通じてシンガポールの伝統と発展、そして自身のキャリアや人生も見つめ直す。ワンタン麺、ラクサ等の多様な麺料理、フィッシュヘッドカレーやナシレマといった多民族性が垣間見える料理等ストリートフードの数々を、巨匠エリック・クー監督がドキュフィクションとして描く意欲作。
©Zhao Wei Films

第二部「CROSSCUT ASIAアンコール」

これまでの東京国際映画祭「CROSSCUT ASIA」部門上映作品から選りすぐりの作品を再上映。

『カンボジアの失われたロックンロール』(‘Don't Think I've Forgotten: Cambodia's Lost Rock & Roll)


2014年/アメリカ、カンボジア/107分
監督:ジョン・ピロジー
出演:シン・シサモット 、ロ・セレイソティア 、バイヨン・バンド
視聴可能国:全世界
クメール・ルージュによって弾圧されるまでのカンボジアのポピュラー音楽史を1950~70年代まで辿った貴重な音楽ドキュメンタリー。生存者へのインタビューやアーカイブ映像を駆使して歴史が甦る。

『インビジブル』(Invisible)


2015年/日本、フィリピン/134分
監督: ローレンス・ファハルド
出演:アレーン・ディゾン、セス・ケサダ、ベルナルド・ベルナルド、JM デ・グズマン
視聴可能国:全世界(マレーシアを除く)
真冬の福岡と旭川でロケを敢行し、日本滞在の4人のフィリピン人(日本人と結婚したリンダ、不法滞在労働者のベンジー、ホストのマヌエル、建設作業員のロデル)を描いた話題作。シナグ・マニラ映画祭2015グランプリ。
©Solar Pictures

短編集『ピート・テオ特集』(Pete Teo Special)


2008年~2013年/マレーシア/97分
監督:ヤスミン・アフマド、ホー・ユーハン、アミール・ムハマド、ライナス・チャン、リュウ・センタック、デスモンド・ン 、カマル・サブラン、タン・チュイムイ、ウー・ミンジン、ジェームス・リー、ベンジー&バヒール、ジョアン・ジョン、カイリル・バハール、ナム・ロン、スレイマン兄弟(『15Malaysia』)
ベンジー・リム(『Vote!』)
ピート・テオ(『Malaysia Day: Slipstream』)
ヤスミン・アフマド、ホー・ユーハン(『Here in My Home』)
カマル・サブラン(『I Go』)
視聴可能国:全世界
『15Malaysia』は、ピート・テオが企画・統括した、15人の監督たちによるオムニバス作品。ヤスミン・アフマドの遺作『チョコレート』をはじめ、マレーシア社会をさまざまな角度から切り取った短編が並ぶ。その他、ピート・テオが関わった短編『Vote!』、『Malaysia Day: Slipstream』、『Here in My Home』、『I GO』も併映。
©2009 Redbag Music Sdn Bhd

『タン・ウォン~願掛けのダンス』(Tang Wong)


2013年/タイ/86分
監督:コンデート・ジャトゥランラッサミー
出演:ソンポップ・シッティアージャーン、シリパット・クーハーウィチャーナン、
ナタシット・コーティマナスワニット、アナワット・パッタナワニットクン、ナ
ッタラット・レーカー
視聴可能国:日本、インドネシア、カンボジア、シンガポール、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ラオス
東京国際映画祭で『スナップ』(2015)や『私たちの居場所』(2019)が上映されたコンデート監督の作品。神様に願掛けをした4人の高校生が、チームを組んでタイ伝統舞踊を舞うことに。素人ダンサーたちが猛練習の果てに掴んだものは…。“タン・ウォン”とは踊りを始める前に構えるポーズのこと。
©Song Sound Production

『三人姉妹(2016年版)』(Three Sassy Sisters)


2016年/インドネシア/124分
監督:ニア・ディナタ
出演:シャンティ・パレデス、タラ・バスロ、タティアナ・アクマン、リオ・デワ
ント、ルベン・エリシャマ、リチャード・カイル
視聴可能国:全世界
Netflixの『恋に落ちない世界』が記憶に新しい女性監督ニア・ディナタが、1956年の名作『三人姉妹』を現代に置きかえて描く華麗なミュージカル。個性の異なる美しい三姉妹の結婚話が快活に展開する。
©KalyanaShiraFilms /SAFilms

『罠(わな)~被災地に生きる』(Trap)


2015年/フィリピン/93分
監督: ブリランテ・メンドーサ
出演:ノラ・オーノール、フリオ・ディアス、アーロン・リベラ
視聴可能国:日本、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、マレ
ーシア、ミャンマー、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ラオス
2013年11月、巨大台風ヨランダがフィリピンを直撃して大災害をもたらした。被災地に生きる人々に寄り添い、人間の尊厳を問う作品。世界的に活躍する巨匠ブリランテ・メンドーサ監督作品。ノラ・オーノール主演。カンヌ映画祭2015「ある視点」部門スペシャル・メンション。

「CROSSCUT ASIA おいしい!オンライン映画祭」は2022年1月21日(金)10:00~2月3日(木)23:59にオンラインで開催!

【文/編集部】