『ドライブ・マイ・カー』のアカデミー賞受賞記念凱旋舞台挨拶が4月5日(火)にTOHOシネマズ日比谷で行われ、西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか、濱口竜介監督が登壇した。

本作は、商業映画デビュー作『寝ても覚めても』がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた黒沢清監督『スパイの妻<劇場版>』では脚本も担当した濱口竜介監督の最新作。妻を失い、喪失感のなかで生きる舞台俳優の家福と、寡黙な専属ドライバーみさき。愛車サーブを通して出会った孤独な2人が、一筋の希望にたどり着くまでを描く心揺さぶる物語。西島秀俊を主演に迎え、三浦透子、岡田将生、霧島れいから実力派俳優陣が集結。

第94回アカデミー賞での国際長編映画賞受賞を記念して行われた今回の舞台挨拶に、「頭の中が真っ白になるとはこういうこと」と振り返った濱口監督は、受賞が発表されて登壇した際のことを「できるだけ短くしたいと冒頭部分を英語にしようと思ったら冒頭部分で終わってしまった」とスピーチが終わったと勘違いされたことを明かして笑いを誘いつつ、「みなさんに感謝を伝えられてよかった」と振り返った。

「スピーチすごいプレッシャーだろうなとドキドキしながら見てた」という西島は「会場の全員に気持ちが伝わっているのを感じた」と言い、岡田は「本当にうれしかったですし、体が勝手に監督の方に抱きつきに行っていた」と感慨深げに振り返った。そんな喜ぶ姿に霧島は「ピョンピョンはねて喜ぶのが精いっぱい(笑)監督のスピーチも感動的でしたし、嬉しい気持ちと感謝の気持ちでいっぱいでした」と授賞式の様子を語った。また、渡米は叶わなかったもののステージ上で濱口監督に名前を挙げられた三浦は「嬉しかったです。周りの方ももちろん私も感動して。あれはあれで不思議な体験」と語った。

受賞式会場ではスティーブン・スピルバーグ監督とも会ったという濱口監督は「怖気づいてたんですけど話しかけまして。『ご一緒できて光栄でした』と伝えたら、『素晴らしい映画だった』とおっしゃっていただいて、夢のような体験でした」と驚きを隠せない様子を見せた。西島は「ポール・トーマス・アンダーソン監督が『素晴らしかった』とおっしゃったり、ジェーン・カンピオン監督が岡田くんに『バット・ボーイ』と(笑)悪い男を素晴らしく演じたと」と明かし、会場の笑いを誘った。これに岡田自身は「この作品を見たうえでおっしゃってくれたので嬉しかったです」と照れ笑いを浮かべた。

また、授賞式前から『コーダ あいのうた』が好きだと言っていた岡田は、同作に出演するトロイ・コッツァーと会ったといい、通訳と手話の通訳も含めた4人で話したそうだが、日本の手話との違いなどで盛り上がっていたという。そんな豪華な俳優やスタッフ陣が集まる場に濱口監督は「この世界はなんなんだと思いながらいました」と興奮冷めやらずといった様子だった。さらに、西島は「意外に緊張しなかったです。作り手の方が集まっているので。作品賞にノミネートされていたので、みなさん見てくださっていて『素晴らしかったよ』と言ってくださった。アンソニー・ホプキンスさんに『おめでとう』と言われて…写真を撮ってもらいました(笑)」と笑顔を見せた。

公開初日から7か月以上上映されている本作だが、興行収入が10億円を突破。濱口監督は「自分が作った映画が10億円を突破すると人生であると思っていなかったので驚いています。見に来てくださったみなさんのおかげです」と感謝の気持ちを口にした。

トロフィーが登場すると「本当に持ってみると重い」という濱口監督だが、『パラサイト 半地下の家族』で受賞したポン・ジュノ監督が軽々しく持ち上げていた様子を思い返して「ポン・ジュノ監督の筋力がすごいと思いました」と笑いを誘った。ここで初めてトロフィーを手にしたという三浦だが「重い重いって言われたからそんなに重くなかった…(笑)」と笑いを誘った。

最後に濱口監督は「これからも時間をかけて広がっていくと嬉しいです。この役者さんたちと仕事ができてうれしいです」、岡田は「世界の方々にも認めてもらえたと思うと誇らしく思います。もっとたくさんの方に見ていただけたら」、三浦は「世の中の状況も、自分たちの心も変化していく中で、響く言葉も含めて自分が見ても違うと思う。自分の心の中でも育っていく感覚の映画です」、西島は「この現場は本当に素晴らしい現場で、思い返しても、キャスト・スタッフお互いを尊重しあって大切に時間をかけて作った映画です。戻れることなら戻りたい、それくらい素晴らしい現場でした。この映画こそまさに観客のみなさんに今も育てられている映画だと思います」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『ドライブ・マイ・カー』はロングラン上映中!
監督・脚本:濱口竜介
出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか/岡田将生
配給:ビターズ・エンド
©2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会