傷ついた男⼥のかすかな希望の物語『夜、鳥たちが啼く』の場面写真が解禁された。

作家・佐藤泰志が、函館ではなく関東近郊を舞台に描いた短編小説『夜、鳥たちが啼く』(所収「⼤きなハードルと⼩さなハードル」河出⽂庫刊)が映画化。内に秘めた破壊衝動と葛藤する売れない小説家の主人公・慎一を演じるのは『東京リベンジャーズ』『燃えよ剣』『余命10年』など多彩な役柄で観客を魅了し続けてきた実力派俳優・山田裕貴。離婚を機に、息子とともに慎一のもとに身を寄せるヒロイン・裕子を、近年、内田英治監督、タナダユキ監督、紀里谷和明監督、松本優作監督など、気鋭の監督作品への出演が絶えない演技派女優・松本まりかが演じる。脚本は高田亮、監督を努めたのは高田の助監督時代からの盟友・城定秀夫。

近年、内田英治(『ミッドナイト・スワン』)、タナダユキ(『マイ・ブロークン・マリコ』)、紀里谷和明(『ラスト・ナイツ』)、松本優作(『ぜんぶ、ボクのせい』)ら、気鋭の監督たちの作品へ出演が絶えない演技派女優・松本まりか。本作では、山田裕貴演じる主人公・慎一の元に身を寄せるシングルマザーの裕子役を演じている。幼い息子・アキラを連れて離婚した後、行き場のない二人に自宅を提供した慎一とは、かつて、元夫の後輩として親しくしていた仲だ。慎一は離れのプレハブで寝起きし、裕子は、慎一が暮らしていた自宅で息子に愛情を注ぐ穏やかな日々を送っていたが、一方で、夫に裏切られた過去の傷に苦しみ、やり場のない感情と孤独を抱える複雑な一人の女性としての姿を、松本は説得力ある表情で見事に体現した。

松本は松本優作監督の『ぜんぶ、ボクのせい』でも母親役を演じているが、同作では子育てを放棄し、同居する男に依存して自堕落な生活を送るネグレクトの母親役として評価を得た。本作では、女手一つで必死に息子を守り、愛し、育て抜く力強い母親としての一面も見せている。息子・アキラ役を演じたのは、オーディションで選ばれた注目の子役・森優理斗。松本は彼との撮影を「初めて会ったときの可愛いという感覚が、撮影を通して、じわじわと愛おしいという感覚になって体に染み込んでいきました。母親が息子に感じる感覚と似ているのかなと。」と振り返っており、カメラの回っていない時にもコミュニケーションを欠かさず、信頼関係を築いて母としての愛情を存分に注いだ様子。

解禁された場面写真では、エプロン姿に菜箸を持ち、つい先刻まで夕飯の支度をしていたことが伺える等身大の母親の姿が切り取られているほか、穏やかな表情で息子のアキラを後ろから抱き支える幸せそうな姿を捉えたカットが到着。さらに、その反面、どうしようもない孤独と傷ついた心の隙間を埋めるため、アキラが眠りについた後、行きずりの出会いを求めて夜の街へと出かけて行く、アンバランスで危うい生身の人間としての姿も。

松本は本作の撮影に入る前に「無駄がひとつもなくて、解釈の仕方も表面上の印象よりも、もっともっと深い所に答えがあるすごい脚本なんです。この先自分がこの役に到達できるのか…果てしない戦いだなと感じています。簡単じゃないけど、やりがいがありますね」と裕子役に駆ける熱い想いを明かしている。数々の作品で、気鋭の監督たちと共に印象に残る役柄を演じ続けてきた松本にとっても難役と言える役柄だったことが伺えるが、撮影後、松本は「現場で時間を重ねていく中で、はっとする気づきがたくさんありました。裕子という役にとっても、私にとっても。すごく大切な経験をさせてもらえた作品です」と裕子役への手応えを語っており、親として人として強くあらねばという思いと、埋めがたい孤独との間でバランスを保とうと苦しむ裕子の心の機微を、静謐かつ鮮烈な熱演でスクリーンに焼き付けている。

『夜、鳥たちが啼く』は2022年12月9日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開!
監督:城定秀夫
出演:山田裕貴、松本まりか、森優理斗、中村ゆりか、カトウシンスケ/藤田朋子/宇野祥平、吉田浩太、縄田カノン、加治将樹
配給:クロックワークス
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