傷ついた男⼥のかすかな希望の物語『夜、鳥たちが啼く』が12月9日(金)より公開されることが決定した。

『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』などで知られる作家・佐藤泰志が、函館ではなく関東近郊を舞台に描いた短編小説『夜、鳥たちが啼く』(所収「大きなハードルと小さなハードル」河出文庫刊)を映画化した本作。脚本は同2作を手掛けた高田亮、監督を努めたのは高田の助監督時代からの盟友であり、近年『アルプススタンドのはしの方』『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』などジャンルを問わず話題作を生み出し続け、高い評価を得る城定秀夫。

魅力的な布陣で描かれた世界観は徹底して優しく、そして美しい。内に秘めた破壊衝動と葛藤する売れない小説家の主人公・慎一を演じるのは『東京リベンジャーズ』『燃えよ剣』『余命10年』など多彩な役柄で観客を魅了し続けてきた実力派俳優・⼭田裕貴。離婚を機に、息子とともに慎一のもとに身を寄せるヒロイン・裕子を演じるのは、近年、内田英治監督、タナダユキ監督、紀里谷和明監督、松本優作監督など、気鋭の監督作品への出演が絶えない演技派女優・松本まりか。

人生を諦めかけた小説家と、愛をあきらめかけたシングルマザーの奇妙な共同生活は、やがてお互いの渇きを潤すように強く求めあい、次第に傷ついた心はゆっくりと癒えていく…。他者との深い関わりを避けて生きようとしながら、一方で一人では生きていけない。人生を灯す一筋の光を見つけようともがくそんな生⾝の人間の姿を、静謐かつ鮮烈な熱演でスクリーンに焼き付けている。ほんの少しだけ前を向いて小さな一歩を踏み出す。そんな、ささやかだけれど輝かしい一瞬を描く作品。

山田裕貴 コメント

こういうテイストの作品もできるんだと⾔ってもらうべく、
俳優としての新たな⼀⾯を⾒ていただける良い機会になるんじゃないか、
そんなことを思いながら本作への出演を決めました。
試写を⾒終わったあとも
こんな細やかで、繊細でそして緻密な
⼈間の本当の温度や、間、呼吸、⾳を感じることができ、
「こんなお芝居がやりたかったんだ‼」と何度も叫びました。
慎⼀はどこか寂しく、どこか儚く、このセカイ(この世にある全ての想いやモノや事柄)に対してどこか諦めている⼈なのではと思いました。
ちょっと⾃分に似ている︖
特に愛について、正解がわからない。
答えを求めること⾃体間違っているかもしれませんが…

まりかさんとはもう何度⽬でしょうか…
いやぁ、話は尽きませんが、
僕の⼼の内や、思考のタイプをだいぶ理解してくださっています。
そこの安⼼感と信頼感は、撮影期間中に僕のことを助けてくれました。
城定監督は、
とにかくそこに流れている時間を⼤切にしてくださいます。
編集で間を無くすことをせず、リアルな⽣きている時間だけを切り取ってくれているのです。
それは、作品を作る上で武器というか
まさに⽣です、⽣きていたんです。
そんなところを楽しめる作品です。

山田裕貴

松本まりか コメント

私が⾔いたいことは何か、毎⽇考えを巡らせましたが、この作品を語るに⾜る⾔葉がみつかりませんでした。
城定監督はじめ、山田くんとのあの撮影の⽇々。
まだちょっと、うまく⾔えそうにありません。
この作品が皆様に届く頃には⾔葉になりますように。

松本まりか

城定秀夫(監督)コメント

「この⼩説を映画化しませんか?」と製作陣から提案されたとき、嬉しいと思うと同時に、⾔い知れぬ不安に襲われました。
佐藤泰志さん原作の映画といえば、⽇本を代表する数々の監督が⼿掛けてきたものであり、それらすべてが素晴らしいことは映画好きには周知されています。⾃分も原作、映画、どちらも好きな作品ばかりです。そんな中に⾃分の映画を加えることは光栄を通り越して恐怖に近いプレッシャーでした。
しかし、山田裕貴さんと松本まりかさんのキャスティングが決まった頃には不安は喜びに変わり、素晴らしい脚本、スタッフにも恵まれ、撮影現場は楽しかった思い出しかありません。演じ⽅の微妙な違いで物語が変わってしまう繊細な原作ですから、現場では慎重に話し合いながら作っていきました。
佐藤泰志原作映画としては今までにない肌触りになっていると思いますので、多くの⽅に観て頂きたいです。

ストーリー

若くして⼩説家デビューするも、その後は鳴かず⾶ばず、同棲中だった恋⼈にも去られ、鬱屈とした⽇々を送る慎⼀(⼭田裕貴)。そんな彼のもとに、友⼈の元妻、裕⼦(松本まりか)が、幼い息⼦アキラを連れて引っ越してくる。慎⼀が恋⼈と暮らしていた⼀軒家を、離婚して⾏き場を失った2⼈に提供し、⾃⾝は離れのプレハブで寝起きするという奇妙な共同⽣活。⾃分⾃⾝への苛⽴ちから⾝勝⼿に他者を傷つけてきた慎⼀は、そんな⾃らの無様な姿を、夜ごと終わりのない物語へと綴ってゆく。書いては⽌まり、原稿を破り捨て、また書き始める。それはまるで⾃傷⾏為のようでもあった。⼀⽅の裕⼦は、アキラが眠りにつくと⼀⼈町へと繰り出し、⾏きずりの男たちと逢瀬を重ねる。親として⼈として強くあらねばと⾔う思いと、埋めがたい孤独との間でバランスを保とうと彼⼥もまた苦しんでいた。そして、⽗親に去られ深く傷ついたアキラは唯⼀⺟親以外の⾝近な存在となった慎⼀を慕い始める。慎⼀と裕⼦はお互い深⼊りしないよう距離を保ちながら、3⼈で過ごす表⾯的には穏やかな⽇々を重ねてゆく。だが2⼈とも、未だ前に進む⼀歩を踏み出せずにいた。そして、ある夜…。

『夜、鳥たちが啼く』は2022年12月9日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開!
監督:城定秀夫
出演:山田裕貴、松本まりか
配給:クロックワークス
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