キム・ジョングァン監督最新作『夜明けの詩』で“希望を探す写真家・ソンハ”を演じた名バイプレイヤー、キム・サンホに注目だ。

まだ冬が残るソウル。小説家のチャンソク(ヨン・ウジン)は、7年ぶりにイギリスからソウルに帰国する。コーヒーショップで時間を失くした女(イ・ジウン)と出会う場面から、ストーリーが紡がれていく。そして、想い出を燃やす編集者、希望を探す写真家、記憶を買うバーテンダーといった、心に深い葛藤を抱えながらも人生を歩み続ける、4人との出会いを経て、チャンソク自らも心に閉ざしてきた記憶と向き合い始めた―。主演を務めるのは、Netflixドラマ「39歳」、映画『愛に奉仕せよ』などの話題作に出演し、柔らかい眼差しや深みのある演技力で観客を魅了する“ロマンス職人”ヨン・ウジン。共演するのは是枝裕和監督『べイビー・ブローカー』に出演するイ・ジウン(IU)。さらにキム・サンホ、イ・ジュヨン、ユン・ヘリら演技派俳優が共演する。

ヨン・ウジンが演じた本作の主人公である小説家・チャンソクは、時間を失くした女(イ・ジウン/IU)、想い出を燃やす編集者(ユン・ヘリ)、希望を探す写真家(キム・サンホ)、記憶を買うバーテンダー(イ・ジュヨン)といった人々との出会いを経験して、身につまされる経験談や対話を重ねていく。今の時代を生きるすべての人に寄り添う、ヒーリングストーリーとなっている本作だが、魅力を最大限に引き出しているのは、実力派俳優たちの演技力だと言える。

今回、“希望を探す写真家・ソンハ”を演じたキム・サンホを紐解く。カフェで執筆用のメモを書くチャンソクは、以前から知り合いだったカメラマンのソンハと偶然再会する。お互いの近況を話していくうちに、ソンハは自身に起こった不思議な出来事について語りはじめた。数年前から乳がんを患う妻の容体が悪化し、妻が逝くときに飲もうと手に入れた青酸カリをチャンソクに見せる。妻を助ける様々な方法を探したソンハがたどり着いたのは、神秘的な力を持つ僧侶からの助言だった。「絶望を繰り返すと生まれる奇跡があります」というソンハの話に、チャンソクは静かに耳を傾けていく…。

キム・サンホは、名バイプレイヤーとして活躍を果たし、数々のテレビドラマや映画に出演し、あらゆる登場人物とその物語を「キム・サンホ流」に変えてしまう俳優として、どの作品においても堂々とした存在感で観客を魅了する。映画『ビューティー・インサイド』(15)、『焼肉ドラゴン』(18)、『不夜城の男』(20)といった作品に出演。ドラマ「運勢ロマンス」(16)、「キングダム」(19)、「キングダム2」(20)、「Sweet Home - 俺と世界の絶望 -」(20)、「マイネーム:偽りと復讐」(21)などにも登場しており、韓流ドラマファンにとってお馴染みの存在だと言える。なお『焼肉ドラゴン』で共演した俳優・大泉洋のファンだと公言しており、撮影現場ではムードメーカーとして場を和ませていたようだ。

本作でキム・サンホが登場するシーンでは、「生」と「死」をテーマにしたエピソードが紡がれていく。繊細な内容であるため、世界観も暗めのトーンで描かれていくのだが、なぜそのようなテイストで作品を制作したのか。キム・ジョングァン監督は「私はこの映画を観て、観客たちが悲しみだけを感じることはないだろうという確信がありました。『死』であれ『老い』であれ、どんな暗い領域であっても時にはそれを偽らずに正面から見つめることが、今の時代にとても大切だと思います。なので、『死』を見つめながら『生』について話すこともできるし、ここでは老いることに対する悲しみも出てきますが、誰かと一緒に老いていくことへの憧れや希望だって描かれている。その部分を観た観客が、少しでも希望や安らぎを感じ、この作品の中で何かの価値を得られることができればいいな、という想いでこの映画を撮りました」と語った。

監督が思い描く世界観を表現するためには、俳優陣の演技力を問われる作品でもある。ヨン・ウジン、キム・サンホといった実力のある役者が、ポテンシャルを最大限に発揮して体現する。映画『夜明けの詩』が映し出す、現代社会に誰もが感じる闇の部分を、役者陣が癒しのシンフォニーとして奏でていく。ぜひ劇場のスクリーンで、「希望」を探していただきたい。

『夜明けの詩』は全国で公開中!
監督:キム・ジョングァン
出演:ヨン・ウジン、イ・ジウン(IU)、キム・サンホ、イ・ジュヨン、ユン・ヘリ
配給:シンカ
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