『#マンホール』が、ドイツ・ベルリンで開催中の第73回ベルリン国際映画祭「ベルリナーレ・スペシャル部門」で2月21日[日本時間]に上映され、記者会見と公式上映に熊切和嘉監督、中島裕翔(Hey! Say! JUMP)が登壇した。

『ライアーゲーム』シリーズ、『マスカレード・ホテル』シリーズの脚本家・岡田道尚によるオリジナル脚本、『海炭市叙景』、『私の男』など海外からも高い評価を受ける熊切和嘉監督による本作。主演にはドラマ「純愛ディソナンス」(CX系)での主演も記憶に新しい中島裕翔。今年デビュー15周年を迎える人気グループHey! Say! JUMPのメンバーである中島は、『僕らのごはんは明日で待ってる』(17)以来、6年ぶりの映画主演となる。中島が演じる主人公・川村俊介は勤務先の不動産会社での営業成績はNo.1、上司や同僚の信頼も厚く、さらには社長令嬢との結婚も決まり将来を約束された超がつくほどのハイスペック男。結婚式前夜のサプライズパーティの帰り道に酒に酔ってマンホールに落ちてしまうという、幸せの絶頂からどん底に転落する男を演じる。川村の元カノ・工藤舞役に奈緒、川村の同期社員・加瀬悦郎役を俳優の永山絢斗が務める。

公式上映の前日に行われた海外プレス向けの試写会では、マンホールの中という限られたシチュエーションの中、ほぼひとりで刻々と変化していく人間の姿を演じ上げた中島の演技に対して「最高だったよ。普通の男性がどんどんクレイジーな人間になっていく様を、泣いたり叫んだりしてよく演じ切っていた」、「観客の視線は彼にくぎ付けだったね」など絶賛の声を集めていた本作。マスコミ向けのフォトコールでは、海外メディアに囲まれて最初は緊張した面持ちの中島だったが、徐々にマスコミからの英語での声かけにも指差しをしながら中島らしい爽やかな笑顔で応え、「ラブリー!キュート!」の声を巻き起こすなど、トップアイドル姿はベルリンでも健在!集まった人々を魅了した。

記者会見では、マンホール内という特殊な環境での撮影について聞かれた中島は「1か月間ずっと狭くて暗いセットの中での撮影はすごく大変でしたね。最初に脚本をもらったとき、まずタイトルを見て“マンホール!?ほんとに!?”って驚きました(笑)しかも男がマンホールに落ちて脱出しようと試みる話。こういう役をやってみたいという気持ちもあったけど、汚い泡に囲まれたり今までやったことないようなことばかりでトリッキーな撮影でしたね。肉体的にも精神的にも大変な撮影でした」と流暢な英語で回答。ベルリンを訪れた感想を聞かれた中島は「本当に夢のようです。世界中から俳優や監督が集まるこんな場所に招待してもらえるとは思ってもみなかったので、この作品に連れてきていただいたという気持ちです」と喜びを語った。

劇中で非常に重要なツールとして登場するSNSだが、普段SNSを使っているか聞かれた中島は「僕は日本のHey! Say! JUMPというグループのメンバーなのですが、僕たちはInstagramとYouTubeのアカウントを持っています。僕はただそれを見ていることが多いですね。でも観客の皆さんが作品をどう思っているかを知れたりするのでそういうときに活用したりします」と回答。メディアからの質問にも難なく英語で受け答えをしていた中島は今後の海外進出への展望について「元々英語を習い始めたきっかけが、海外でのお仕事への野望があったからなので、ゆくゆくは海外の作品にも挑戦したいと思っています」と思いを明かした。

さらに音楽の仕事と俳優の仕事、どちらが好きかという難しい質問にも「僕としては両立させたいと思っています。事務所もそうさせてくれますし、素晴らしいことだと思います。俳優業のおかげで充実しているし、もちろんアイドルでいることも好きです。でも演じることは大好きですね。演じていると違う人間になれるし、今回の作品でも川村という人間はダークで本能的な面も持ち合わせています。僕はこれまでそういった役を演じたことがなくて、チャレンジしてみたかったので、この役ができて幸せです」と真剣な表情で答えた。

その後、Kino International(キノ インターナショナル)にて行われた公式上映では会場は満席に。上映終了後には、会場が大きな拍手と歓声に包まれる中、中島と熊切監督が舞台上に登壇し鑑賞し終えたばかりの観客からの質問に答えた。映画に込めた思いについて熊切監督は「人間はきれいごとだけでは片付けられないと思っていて、ある種極限状態に陥ったり、SNSのような匿名状態で悪意が芽生えたりすることってあると思うんですけど、それを隠すのではなく表現としてありのまま見せることによって、そことの付き合い方を覚えていくということが大事なんじゃないかなと思ってこの映画を作りました」と回答。

川村が舞と電話をしているときに流れている音楽について熊切監督は「あれは舞の車の中でかかっている曲という設定なんですけど、映画の中に異化効果というか、あえてミスマッチな曲をつけることによって、さらに不思議な深みが出るんじゃないかとそういう狙いがあってあの曲をつけました」と答えた。

さらにQ&A後には、現地に駆け付けた日本のメディア向けの取材にも応じた熊切監督と中島。上映を終えた感想を聞かれると中島は「現地の方々と一緒に作品を観て、どんな反応がもらえるのか、この瞬間が一番楽しみにしていた瞬間だったので。日本では珍しいシチュエーションスリラーという作品ではあるんですけど、海外では多くみられていると思うので、海外の方たちがどういうリアクションをするのかっていうことがすごく楽しみでした。僕は結構心配性なのでいろいろとネガティブな方に考えてしまいがちですけど(笑)こんなに温かい拍手と各所から笑い声もたくさん起こったので、笑いが起こるポイントがいい意味で日本とちょっと違って独特だなと思って、一緒に観ていてすごく楽しかったですし、あの時間が最高でした」と語った。また、熊切監督は「僕は割と今までの作品はお客さんが沸くようなタイプの映画を撮っていなかったので(笑)今回は比較的エンターテイメントなので、思った以上に反応が良くて嬉しかったです」とコメントした。

【提供写真・オフィシャルレポート】

『#マンホール』は全国で公開中
監督:熊切和嘉
出演:中島裕翔、奈緒、永山絢斗
配給:ギャガ
©2023 Gaga Corporation/J Storm Inc.
Photo by Getty Images for GAGA