本年度アカデミー賞2部門受賞『ザ・ホエール』の本編映像が解禁された。

恋人を亡くしたショックに打ちひしがれ、現実逃避をするように過食を繰り返してきたチャーリー(ブレンダン・フレイザー)。歩行器なしでは移動もままならず、親友の看護師リズに頼って生活している。病状の悪化で自身の死期が近いと悟ったことで、長らく押し込め続けたトラウマと向き合うことを決意。さらに離婚して以来音信不通だった娘エリーとの絆を取り戻そうとする彼の最期の5日間を描く。ブレンダン・フレイザーが演じたのは体重272キロ、余命わずかな男・チャーリー。彼はこの役に挑むにあたり、自身の体重増量に加え、特殊メイクとファットスーツを着用して臨んだ。

自らの余命が幾ばくもないことを悟った主人公チャーリーが、疎遠だった娘との絆を取り戻そうとする“最期の5日間”を描く本作。過去に新しい恋人との生活を選択したものの、家族を深く傷つけてしまったことに今も胸を痛めているチャーリーは、自分への怒りと恨みを募らせた娘のエリーと再会することを決意する。そして、数年ぶりに再会した親子の複雑な関係性が描かれた本編映像が解禁された。

幼い頃に愛する父から捨てられた経験がトラウマとなり、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱えている17歳のエリー(セイディー・シンク)。怒りに身を任せて生きるエリーにチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、「世界中に向かって怒る必要はない。僕だけに怒れ」と自身を犠牲にしてアドバイスをするが、この言葉にエリーは激怒。「私をゴミみたいに捨て8年後に父親ぶるの?」と父を傷つける言葉を放ち、一線を引いてしまう――。

ほぼワンシチュエーションの会話劇という構成である本作では、セリフが最大の魅力にもなっている。対立する父と娘は言葉の使い方も相反しており、大学でエッセイの講師をするチャーリーは言葉を用いて人々を癒そうとするが、反対にエリーは言葉を反抗するための武器として使う。ブレンダンは、本作の脚本家であり、原作戯曲の作者でもあるサミュエル・D・ハンターが書いた台詞に惚れこんだといい、「サムは現実の生活を詩にする。彼の物語には必ず価値観と目的がある上に、活き活きとしたユーモアあふれる率直な言葉を書く才能があるんだ」と彼の言葉に信頼を寄せている。

本作で新たな魅力を開花させたエリー役のセイディー・シンクは、ブレンダンの熱演にひるむことなく堂々と立ち向かっている。そんなセイディーについて、アロノフスキー監督とブレンダンの2人は「彼女は将来素晴らしい役者になる」と声を揃えてその仕事ぶりを絶賛しているが、セイディー本人は「実はブレンダンが出演している映画を1本も見たことがなかった」と告白しており、それゆえに撮影現場で緊張せずいられたと振り返っている。エリーのキャラクターについても、彼女の生い立ちから性格を想像し、深く理解し「彼女は人生の大半を、父親を悪者にして生きてきた。

父がいなくなってから、エリーと母親の人生は負のスパイラルに陥ってしまい、それが今でも続いているから、エリーは父親を傷つけるためにチャーリーのアパートに来たんだと思うの。『見てよ、私はこんなに嫌な人間になっちゃった。あんたのせいよ』と、自分が父親に心を傷つけられたのと同じように彼を傷つけたい。もしかしたら、父親が良い境遇にないのを見て、少しスッとしてさえいるかも。父親が苦しんでいるからといって、優しくする気は毛頭ない。父親に対して言うべきことがあり、それをはっきりと言う芯が通った女の子なのよ」と解説する。華麗な復活劇を見せオスカーを受賞したブレンダンと若手No.1の演技力を惜しみなく披露したセイディーの激しい演技バトルからも目が離せない。

本編映像

『ザ・ホエール』は2023年4月7日(金)より全国で公開
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン
配給:キノフィルムズ
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