©Kazuko Wakayama


第76回カンヌ国際映画祭の受賞結果が5月27日[現地時間]に発表され、『PERFECT DAYS(原題)』で主演を務める役所広司が最優秀男優賞を受賞した。

数々の傑作を世に送り出し続けたヴィム・ヴェンダースが、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡いだ本作『PERFECT DAYS(原題)』が、5月16日[現地時間]からフランス・カンヌで開催された第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された。インタビューで主演・役所広司は「平山の暮らしぶりをイメージさせる様な環境を監督が整えてくださった」と明かしており、5月25日の公式上映では約10分間のスタンディングオベーションにつつまれ、観客からも本作への大きな評価を得ていた。

そして、5月27日に行われた授賞式で最優秀男優賞に選ばれた役所は、壇上にて感激につつまれながら、「こうやってこんな華々しいカンヌ映画祭でスピーチをするのはあんまり好きじゃない」と微笑みながら、製作の柳井康治をはじめ、ヴィム・ヴェンダース監督、脚本を担当した高崎卓馬、そして製作スタッフ、キャスト、事務所のスタッフ等、一人一人に心のこもった感謝の意を表した。

直後に行われた日本の記者向け取材で役所は「この賞に恥じないように頑張らなきゃな」と心情を明かし、海外へ出演について話が及ぶと「自分の表現が役に立つような良い作品があれば参加したいとは思っています。基本的には、自分たちの国の映画で、世界中の人たちに楽しんでもらえるのが一番の早道かな」と語った。役所は、第50回カンヌ国際映画祭にて、主演作『うなぎ』(今村昌平監督作)がパルムドールを受賞。最優秀男優賞は初の受賞となる。また、本作はエキュメニカル審査員賞も受賞している。

現代映画における最も重要な一人とされるドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが日本の公共トイレのなかに small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)を見出し、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡いだ本作。平山を演じるのは、ヴィム・ヴェンダースが長年リスペクトしてやまない俳優・役所広司。ふたりの静かなセッションが、その瞬間、その瞬間にしかないものたちの美しさを描き出す。

『PERFECT DAYS(原題)』
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗
アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり
田中泯、三浦友和
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