是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二の初タッグで贈る映画『怪物』の本編映像が解禁された。

『万引き家族』の是枝裕和監督と『花束みたいな恋をした』「大豆田とわ子と三人の元夫」の脚本家・坂元裕二のコラボレーションで話題の本作の音楽に、『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞し、『レヴェナント:蘇えりし者』や『怒り』など国内外を問わず第一線で活躍する坂本龍一が加わり、まさに怪物級のクリエイターが集結した本作。

本作の物語の舞台となるのは大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きた。それは、よくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に大人や社会、メディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちが忽然と姿を消す―。

今回、永山瑛太演じる担任教師の衝撃の棒読み謝罪、坂元裕二節の効いた独特の会話劇を捉えた本編映像が解禁された。本作の脚本を務めたのは、「東京ラブストーリー」(91)でトレンディドラマの旗手として脚光を浴び、その後は作風を変化させながら、「Mother」(10)、「anone」(18)といった社会派ヒューマンドラマや、「最高の離婚」(13)、「カルテット」(17)といった笑って泣ける大人のラブコメなど、一つのジャンルに収まらない唯一無二の世界観を生み出し、ドラマファンからの絶大な人気を誇る脚本家の坂元裕二。第76回カンヌ国際映画祭では自身初の【脚本賞】受賞に輝き、今作で初のタッグとなる是枝裕和監督演出のもとで綴られる今作の物語にも注目が集まっている坂元だが、その独特な会話劇や数々の名セリフ、細部に遊びのあるやりとりを言葉巧みに描く坂元裕二らしさは本作でも顕在している。

解禁されたのは、息子の湊(黒川想矢)が担任教師の保利(永山瑛太)から暴力を受けていることを疑ったシングルマザーの早織(安藤サクラ)が、学校へ説明を求めに行くシーン。校長室に案内された早織の前にぞろぞろと教師陣が入室。校長の伏見(田中裕子)が担任教師の保利から謝罪をすると切り出し、保利が座ったままか細い声で「え~…」と話し始めると隣に座っていた教頭の正田(角田晃広)がすかさず「立って」と指摘する。保利は立ち上がりボソボソとしたぎこちない口調かつ、釈然としない態度で謝罪を述べ始め、早織に頭を下げる。すると周りの教師陣もタイミングを見計らったかのように一同に立ち上がり、保利と共に頭を下げて謝罪。

あまりにもその場しのぎの様子が見て取れる学校側の対応に早織は不信感を露わにするも、校長は「指導が適切に伝わらなかったものと考えております」と回答。早織は校長との対話を諦め、当事者の保利を問い詰めるが、目を見て真摯に問いかける早織に対し、保利は俯いたままティッシュを取り出し鼻を嚙み始める。そんな中、校長はまるで心がこもっていない弁明を繰り返すのであった。シリアスな場面でありながら、役者陣の不自然な言動やしぐさが滑稽でさえ感じられる坂元裕二ならではのエッセンスが散りばめられた一幕である。

坂元裕二の脚本の執筆と登場人物のキャスティングは平行して行われた。配役が決定することによって、坂元による脚本のキャラクターが膨らみ、物語がますますクリアになっていく過程を目の当たりにした是枝裕和監督は「こうやって坂元さんは本を固めていくんだな」と感心したといい、また自身の脚本と坂元による今回の脚本の違いについて「今回は構造も含めて、非常にしっかりとした物語ですよね。僕が普段書くものは“スライス・オブ・ライフ”なんです。日常を切り取り、描写して、その前後を想像させるようなものが多いから、それはたぶん物語ではない。今回も描写の力で持たせているシーンは多少あるけど、基本的に言えば劇映画だと思います。物語のラインが非常に強くて、太いんじゃないでしょうか」と考えを明かしている。

本編映像

『怪物』は2023年6月2日(金)より全国で公開
監督・編集:是枝裕和
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童/田中裕子
配給:東宝、ギャガ 
©2023「怪物」製作委員会