『怪物』の大ヒット御礼舞台挨拶が6月19日(月)にTOHOシネマズ日比谷で行われ、安藤サクラ、永山瑛太、是枝裕和監督が登壇した。

『万引き家族』の是枝裕和監督と『花束みたいな恋をした』「大豆田とわ子と三人の元夫」の脚本家・坂元裕二のコラボレーションで話題の本作の音楽に、『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞し、『レヴェナント:蘇えりし者』や『怒り』など国内外を問わず第一線で活躍する坂本龍一さんが加わり、まさに怪物級のクリエイターが集結した。

本作が公開されて、「聞いているラジオで『怪物』の話をしているのですごいんだな」と驚いている様子の安藤。永山は「感想のニュアンスが違ってくるという印象を受けた」という。そんな中で、脚本を坂元裕二が担当したことで「『いつもよりも演出に迷いがない、編集のキレがいい、自分で脚本を書かないほうがいい』と温かい感想をいただいている」と笑いを誘う是枝監督は「悔しい気持ちもなくはないんですけど、坂元さんとやったことを吸収して次は自分で無駄のない脚本を書こうという気持ちになっています」と語った。

そんな本作では“病院の帰り道のシーン”が印象的だという安藤は「何回かやっていくうちに(黒川)想矢くんが弾けた瞬間を、目の当たりにして、反応に乗っていくという時間がワクワクした」という安藤。このシーンについて是枝監督は「リハーサルをやっていくうちに何となく違うなと思った」と黒川に話をしたところ、別の演技が生まれたそうで、この演出の変更によって照明の変更など技術的な理由で撮影日を改めてというが「スタッフが『こっちのほうがいいから日を改めましょう』と言ってくれたので実現して」とスタッフと一丸になって作り上げたという。

脚本を担当した坂元裕二については、是枝監督は「緻密な脚本作りを間近で見ていて本当に勉強になった。出来上がった映画を見ると、こことここがつながっているんだなとか、画になって繋がった時に気づくことも結構ある。それが本当にすごいと思って」と話す是枝監督。

また、音楽を担当した坂本龍一さんについては「一番言葉にしづらい」という是枝監督は「同じスタッフロールの中に自分の名前と坂本さんの名前があるというのはうれしく思っています」と言葉を振り絞った。「ロケハンの段階で坂本さんがいいと思っていた。コンテを書いているときに(坂本さんの)音楽をかけていました」といい、「引き受けていただいて感謝しています」と改めて感謝の気持ちを語った。

190以上の国と地域での展開が決定しているという本作だが、「さまざまな角度からの感想がある。それぞれ感じ方が違うというのを公開されて感じたので、文化が違う中でこの映画が広がったら、またその角度が増えるというか、おもしろいだろうなと感じています」と期待する安藤。先日はカンヌ国際映画祭にも参加した安藤だが「一緒に上映を見ていて、笑いが起こるシーンもおもしろかったです」と振り返った。

最後に永山は「このままロングランとなれば、また劇場でこの映画を見ていただける機会があるんだなと思うと幸せです」、安藤は自身のSNSにも「ホラーですか?」という質問があるようで「怖くないです…くらいまで言って、ある意味怖いよな」と困惑することもあるようで「“ホラーじゃないですよ”という言葉を添えて、まだご覧になっていない方がいらっしゃったら勧めて、みんなで『怪物』について考えたらおもしろそうだなと思います」、是枝監督は「長い時間をかけてこの題材とモチーフに向き合って、スタッフとも話し合いを重ねながら、役者の方たちとも物語の人物像とも丁寧に向き合ってきました。届け方と語り方が難しい映画であることは間違いなくて。見ていただいた方たちの感想とか表情を目にすることでこの映画がどんな風に届いているのか、どんな届け方が正しいのかを自分でもキャッチしていければと思います」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『怪物』は全国で公開中
監督・編集:是枝裕和
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童/田中裕子
配給:東宝、ギャガ 
©2023「怪物」製作委員会