『山女』の凱旋イベントが6月21日(水)に都内で行われ、山田杏奈、森山未來、福永壮志監督が登壇した。

大飢饉に襲われた東北の寒村。先代の罪を負った家の娘・凛は、村人から蔑まれながら息をひそめて生きていた。そんなある日、凛の父・伊兵衛が村中を揺るがす事件を起こす。村人たちから糾弾される父をかばい、自ら村を去り禁じられた山に入る凛を待ち受けていたのは、伝説の存在として恐れられる“山男”だった…。柳田國男の名著「遠野物語」から着想を得たオリジナルストーリーとなる本作。

昨年の東京国際映画祭コンペティション部門での上映を皮切りに、香港国際映画祭、ニューヨーク・アジアン映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭への出品も決定し、海外からも注目を集めている本作。先日にはドイツで開催された第23回ニッポン・コネクションでも上映され、絶賛を受けた。

18世紀末を描く本作で自身演じる主人公・凛について「想像ができないくらい、いろいろなものを背負っている女性だと思う」と話す山田は「どこか諦めていない、“やってやるぞ精神”はある気がして。そういう強さが、私は気が強いと言われますけど、凛の強さと通ずるのかなと思ったります」と共通点も感じていたという。

山男を演じる森山は「この映画では山男といういい方ですけど、いろいろな呼ばれ方をしているんです。それを自分でも調べていたからこそ、果たして本当に僕なのだろうかという問いを福永さんに投げて」とオファーを受けたときのことを振り返りつつ、「どういう存在として考えることができるだろう」と福永監督と話し合いを重ねたという。

そんな森山について「セリフもないですし、身体表現が必要になってくる。神秘的なことだったり、生と死という大きなテーマに興味があって探求心がないと、この本を読んでと言っても追いつかない部分があると思った」と話す福永監督は「森山さん以外は難しかったと思う」を信頼を明かした。また、山田については「そんな中でも何とか生きていけそうな感じと、目から発する強い力が物語もそうだし観客を引っ張っていける、設定の中で生きていけると思った」という。

役作りについては「実際に山に入って感じたことが多い」と話す山田だが「家ではわらじを編む練習をしたり、方言の練習をしたり」と振り返り、森山との共演については「歩いている姿とか呼吸をしているところを初めて見て、トトロに出会ってしまったみたいな(笑)大きい動物に会ったという説得力があって。台本に“山男”と書かれていて、山の中で山男に出会ったらどうなるんだろうと思っていたんですけど」と、その存在感に圧倒された様子だった。これに森山は「そうですよね、そうかもしれない」と笑った。

最後に森山は「社会のあり方とか、人との関係性のあり方とか、今にも通ずるポイントがたくさんあると思います」、山田は「みなさんに『山女』という作品が届くことをうれしく思います。凛という一人の女性の人生をたどりたいと思って演じさせてもらったんですけど、今の時代背景にも通ずることがあって、みなさんも凛という女性と一緒に周りの事も思い出してもらえるのかなと思います。いろいろな見方をしていただけるとうれしいです」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『山女』は2023年6月30日(金)よりユーロスペース、シネスイッチ銀座ほか全国で順次公開
監督:福永壮志
出演:山田杏奈、森山未來、二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋、白川和子、品川徹、でんでん、永瀬正敏
配給:アニモプロデュース
©YAMAONNA FILM COMMITTEE