『バカ塗りの娘』の公開記念舞台挨拶が9月2日(土)にヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、堀田真由、小林薫、坂東龍汰、鶴岡慧子監督が登壇した。

本作では青森の津軽塗のひとつひとつの工程を丁寧に映し出し、津軽塗職人を目指す娘・美也子と寡黙な父・清史郎が、漆や家族と真摯に向き合う姿を描く。主人公・美也子役に堀田真由。将来への不安やほのかな恋心に心揺れる等身大の女性をたおやかに演じる。津軽塗職人の父・清史郎には、日本映画界には欠かせない俳優、小林薫。二人は実際に地元の職人から津軽塗の技法を教わり撮影に挑んだ。監督は、初長編作『くじらのまち』でベルリン国際映画祭、釜山国際映画祭などの映画祭で高い評価を得たのち、西加奈子の小説『まく子』の映画化も手掛けた鶴岡慧子。四季折々の風景や、土地に根付く食材と料理、人々の「魅力」を織り交ぜながら、つらい時、楽しい時を塗り重ねるように日々を生きる父娘が、津軽塗を通して家族の絆を繋いでいく。

「(本作が公開されてから)まだ2日ですけど温かいコメントを見させていただいて、私たちが伝えたかったことが届いているんだなと思うとうれしく感じます」と笑顔を見せた堀田。舞台となる青森県では、1週間前の8月25日(金)から先行公開されているが、鶴岡監督は「ただただ感謝。いろいろな人の支えでここまで来て、幕が上がるということが当たり前のことではないので」と感謝の気持ちを口にした。

本作で演じた美也子について堀田は「私自身も勇気をもらいました。役作りでは初めて髪をバッサリ切りました。25㎝切るというのも、芸能人生で初めて切ったので。あと自転車の乗り方も意識していました」と役作りについて語り、「セリフがないところでその人の本質が出るんだろうなと思った」と語った。「僕もあそこまで(髪を)白くしたのは初めて」という坂東は「弘前という土地の力もそうですし、キャストのみなさんも監督ともその瞬間で起きていることと空気を感じながら」と撮影を振り返った。

先行公開された錘での舞台挨拶に登壇した堀田と鶴岡監督だが、「すごく温かかったです」という堀田に「街中が堀田さんになっていた」と明かす鶴岡監督。堀田「右も左も私(笑)」と驚いた様子で、坂東は「いいな~」とコメントし、笑いを誘った。

また、イベントの終盤では堀田から坂東と小林に津軽塗のおちょこをサプライズでプレゼント。「うれしいです、大事にします」と喜ぶ坂東。小林も「こういうデザインを見たことがない。こういうのもできるんだ」と笑顔を見せた。

さらに本作がオランダで9月21日から開催される「カメラジャパン・フェスティバル」で上映されることが発表されると「物語が続いているような感じがしてすごくうれしいです」と喜ぶ堀田。鶴岡監督も「海外の方が津軽塗を見てどう思うのか。いろいろなトピックが入っているのでどう感想を持たれるのか楽しみです」と期待を寄せた。坂東は「自分が出てる作品では初めてかもしれない。オランダの友達に連絡したい…いないんですけど(笑)」と笑いを誘った。

最後に堀田は「日々生きていく中でどんどん機械化されたり、自動化されたり、新しいことや外へ目を向けることが多いと思うんですけど、改めて自分が生まれた場所を見つめてみると、すごく丹念に作られた美しい伝統工芸があるんだな、歴史とか文化がたくさんあるんだなと思うと、私も撮影していて日本に生まれてよかったと感じました。津軽塗りはその一つだと思います。この作品は時代が流れても、色あせない、ずっと見られる作品だと思います」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『バカ塗りの娘』は全国で公開中
監督:鶴岡慧子
出演:堀田真由/坂東龍汰、宮田俊哉、片岡礼子、酒向芳、松金よね子、篠井英介、鈴木正幸、ジョナゴールド、王林/木野花、坂本長利/小林薫
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023「バカ塗りの娘」製作委員会