第76回カンヌ国際映画祭<最高賞>パルムドール受賞『落下の解剖学』の本編特別映像が解禁された。

人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。事件の真相を追っていく中で、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ〈真実〉が現れるが――。第76回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞、第81回ゴールデングローブ賞では脚本賞、非英語映画賞を受賞した。また、先日ノミネーションが発表された第96回アカデミー賞では、作品賞、監督賞(ジュスティーヌ・トリエ)、脚本賞(ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ)、主演女優賞(ザンドラ・ヒュラー)、編集賞の5部門でノミネートを果たしている。

今回解禁された映像は、第96回アカデミー賞で主演女優賞に初ノミネート、カンヌで国際批評家連盟賞を受賞した『ありがとう、トニ・エルドマン』(16)など、演技派で名高いザンドラ・ヒュラーの圧巻の独白シーンを捉えている。夫への殺害容疑を向けられた人気作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)へ向け、法廷で次々と繰り出される関係者の証言。一方的にサンドラに不利な証言が繰り広げられる中、彼女は堪らず想いを口にし始める。

「あなたは法廷に立ち、個人的な意見ながらも言い切ってる」「夫がどんな人間で、私たちの問題が何かを。ですが、あなたの言うことは単に全体の一部にしかすぎません」――サンドラはドイツ出身だが、夫の母国フランスで暮らしており、フランス語は得意ではない。つまり裁判では第二外国語である英語で気持ちを伝えていくしかない。怒り、悲しみ、苛立ち――沸き立つ複雑な感情を抑え込みながらもはっきりと、母国語ではない英語で吐き出していくその表情には、彼女の切実さ、言葉の壁を乗り越え自らを理解してもらおうとする必死さが滲み出ている――が、果たして、この彼女の主張は事実なのか―。観る人全てを、疑心暗疑の渦へと引き摺り込んでいくようなシーンとなっている。

ザンドラ・ヒュラーと同じく、本作でアカデミー賞初ノミネートを果たしたのはジュスティーヌ・トリエ。作品賞、監督賞、脚本賞など3部門でのノミネーションを果たしたが、特に歴代のアカデミー賞監督部門においては、女性はこれまで合計7人しかノミネートされておらず、今年のノミネートによりアカデミー賞史上8人目という快挙を達成した。ノミネーションの一報を受けたジュスティーヌ・トリエは「脚本を書いているとき、この映画は、とても素晴らしい映画になると確信していました」「直感に従って挑戦的な作品を作り続けることは可能なんだと自分に言い聞かせ続けている」と振り返りながら「一日中泣いていたい。いつも泣かないのに、これはあまりに大きなことだったので、今日は泣いてしまいました」とコメント、さめやらぬ感動を伝えている。

本編特別映像

『落下の解剖学』は2024年2月23日(金・祝)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開
監督:ジュスティーヌ・トリエ  
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ 
配給:ギャガ
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