『52ヘルツのクジラたち』の完成披露試写会が2月13日(火)に都内で行われ、杉咲花、志尊淳、小野花梨、桑名桃季、主題歌を担当するSaucy Dogの石原慎也、原作者の町田そのこ、成島出監督が登壇した。

町田そのこによる原作「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)は、2021年の本屋大賞を受賞し、75万部を売り上げる圧巻の傑作ベストセラー小説。「52ヘルツのクジラ」とは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに、何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている―。杉咲花が演じるのは、自分の人生を家族に搾取されてきた女性・三島貴瑚。ある痛みを抱えて海辺の街に越してきた貴瑚は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれる、声を発することのできない少年と出会う。愛を欲し、誰にも届かない声で泣く孤独な魂たちの出会いが生む、切なる愛の物語。メガホンをとるのは成島出監督。

本作に出演したことが「かけがえのない出会いになりました」という杉咲は「自分が見えていなかったかもしれない存在の周波数が少しだけ広がったと思っていて。大切な出会いになったと思います」と振り返った。志尊は「知ることを大切に考えながらやらせていただきました」と振り返り、本作ではリハーサルを繰り返したといい、「同じシーンを10回とか。作品に入る時にはみんな団結していたし、役を理解する時間が多かった」と明かした。これには杉咲も「役を知っていく時間でもあるんですけど、作品に携わる人たちがお互いに信頼できる時間を作っていった」という。

そんな杉咲とは「1か月、(杉咲)花の家にお泊りしていたり」というほど仲がいい小野は「公私混同しないように。ちょっと距離をとったりしながらやりました。本編でも親友という役だったので、役作りがいらない、お互いを探り合う時間が必要なかったので贅沢なこと」と振り返った。一方の杉咲は「友達が仕事場にいるという感覚が慣れなくて、こっぱずかしさもあった」と笑いつつ、実際に撮影に入ると「美晴としてそこに存在してくれる花梨を目の当たりにして背筋が伸びる思いでした」と語った。さらに「佇まいもそうですし、スタッフさんへの気遣いもそうですし、普段は見れない一面を見させていただいて非常に勉強になりました」と称賛すると、杉咲は「なんかちょっといじられているような(笑)」と照れ笑いを浮かべた。

本作に出演するにあたっては「10代のころから成島監督の作品を観させていただいて、出たいという気持ちが強かった」という志尊だが「簡単にやりたいですと言えるような作品や役柄ではなかった」と悩みもあったという。そんな中で成島監督と話したことで「作品にかける思いを聞いて、やりたいと思った」と振り返った。本作では脚本段階からキャストと意見交換をすることもあったようで「垣根を超えた関わり方を誰もが歓迎してくださる現場は自分にとっては初めてでした」という杉咲。原作者の町田は「どんなふうに生まれ変わるんだろうというのは完成するまで楽しみでした」と振り返った。

さらに、本作に出演を決めた理由の一つが「花ちゃんが主役だったというのがあって」という志尊は「俳優が作品に向き合う姿勢ってこうだよなとまじまじと感じて。今にも倒れそうな熱量で役に向き合っていく。誰よりも前に立って突き進んでいく姿を見ていたし、尊敬しかなかった。お芝居をしてみても、“やっぱり杉咲花、素晴らしいな”と感じながらやってました」と大絶賛した。杉咲も志尊について「絶対的な味方としてそこにいてくださるんです。アドバイスをくださることを含めてサポートに徹してくださっていて、こんなに素敵な共演者さんと出会えたことが幸せ。尊敬しかないです」と語った。

最後に杉咲は「私たちはこの物語を大切に思っています。どんなふうに届けられるかということを議論し続けてきました。最後には光を見出そうとする姿を描ききれるだろうかというところに、みんなで今できる限りの力を注いできたと思います」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『52ヘルツのクジラたち』は2024年3月1日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開
監督:成島出
出演:杉咲花、志尊淳、宮沢氷魚、小野花梨、桑名桃李/余貴美子、倍賞美津子
配給:ギャガ
©2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会