『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の完成報告会見が8月5日(火)に都内で行われ、西島秀俊、グイ・ルンメイ、真利子哲也監督が登壇した。

ニューヨークで暮らすとあるアジア人夫婦。ある日、息⼦の誘拐事件をきっかけに夫婦が抱える秘密が浮き彫りとなり、崩壊していく家族の姿を描いたヒューマンサスペンス『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』。主演は、アカデミー賞で最優秀国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』や、A24製作のシリーズ『Sunny』など国際的な活躍の場を拡げる俳優・西島秀俊。その妻役には、ベルリン国際映画祭の最優秀作品賞を受賞した『薄氷の殺人』や『鵞鳥湖の夜』に出演するなど、人気と実力を兼ね備えた台湾を代表する女優のグイ・ルンメイ。監督は、日本映画界において熱狂的なファンを獲得し、独自の道を行く映画作家・真利子哲也。誘拐事件を発端に破綻していく家族を通して、NYという大都会の片隅で生きる上での、見えない人種の壁、孤独、人と人が分かり合うことの困難さなど、全世界に向けて各々の文化圏の人々に届くテーマを描いた濃密なヒューマンサスペンスが誕生する。

今回の会見は、本作の重要なキーワードでもある“廃墟”にちなんで、閉館したばかりの映画館「丸の内TOEI」で行われた。

本作は、ニューヨークで暮らす日本人建築学者のケンジ(西島)と台湾から渡ってきた妻ジェーン(グイ・ルンメイ)の夫婦が、息子が誘拐されたことをきっかけに関係を揺るがしていく緊迫のヒューマンサスペンス。2024年11月から12月末にかけてオールニューヨークロケで撮影され、セリフの9割以上が英語という挑戦的な作品だ。

出演オファーを受けた際の心境を問われた西島は「もともと真利子監督のファンだったので、ご一緒したいということがありました」と真利子監督への厚い信頼を語り、「脚本を読ませていただいて、文化の衝突であったり、家族関係の難しさであったり、非常に今、まさに皆が直面している題材がテーマとして多く含まれている脚本だったので、この作品の撮影を通して自分自身もそういう問題に向き合ってみたいという思いで出演を決めました」と、作品の現代性に強く惹かれたことを明かした。

一方、グイ・ルンメイは、脚本の独創性に魅了されたといい「監督からオファーをいただいたときは大変光栄に思いました」と述べた後、「この脚本の中では、廃墟、そしてパペットの登場があって、こういった手法を用いてキャラクターの内面の感情を表現しようとしているところが、すごくユニークだと惹かれました」と語り、「国籍も言葉も違いますが、愛があるからこそ二人は結ばれたわけですけれども、にもかかわらずいろんな隔たりがあって、これをどう乗り越えていくのか、どう前向きに生きていくのか、そういったところに惹かれまして、ぜひこの映画に参加したいと思いました」と、複雑な夫婦の物語に挑む決意を語った。

そんな2人をキャスティングした理由について、真利子監督がコメント。西島については「好きな俳優だからお声がけさせてもらった」と前置きしつつ、「ボロボロになる役が結構似合う人だなっていう印象があって。言葉が英語というのもあるので、言語に頼らず役を生き抜いてくれる人だなと思ってお声がけさせていただきました」と、その俳優としての本質的な力に期待を寄せたことを明かした。グイ・ルンメイについては「一映画ファンとして映画に出られている姿を見ていて、すごく繊細なことができる女優さんだなというのと、それでいて強い、強さを持っている女優さんなので、ぜひお願いしました」と、彼女が持つ二面性の魅力が決め手だったと語った。

本作で初共演を果たした西島とルンメイ。西島は、ルンメイについて「とにかく全てを作品に投げ出す方で、本当にナチュラルに演技をされる方で、非常に感動しました」と話し、「僕自身、どういう演技が、どういう俳優が理想だったのかということを改めて自分で見つめ直す機会を与えてくださった、本当に素晴らしい俳優さんです」と、自身の俳優人生にも影響を与えるほどの出会いであったことを熱弁した。

西島からの最大限の賛辞に、グイ・ルンメイは「ありがとう」と日本語で照れ笑いを浮かべた。そして、「西島さんのファンの一人です」と明かし、「今回一緒に仕事をしていて感じたのは、西島さんは見た目はとても落ち着いて冷静なんですけれども、実はその心の中には無尽蔵のエネルギー、力を秘めているんじゃないかなと。まるで大きな木のようで、その木陰の下で私は思う存分、遊園地のように遊ぶことができました。俳優としてこのような俳優と共演することができると、本当に幸せなことだなと思っております」と、西島の存在が大きな支えであったことを表現した。

【写真・文/編集部】

『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は2025年9月よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開
監督・脚本:真利子哲也
出演:西島秀俊、グイ・ルンメイ
配給:東映
©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.