『Noise』作品レビュー

 『Noise』

長編部門『Noise』
©2017「Noise」製作委員会

長編部門『Noise』
©2017「Noise」製作委員会

傷つき、傷つけ合う者たち。混沌の街に、現代の日本が浮かび上がる群像劇。

秋葉原無差別殺傷事件から8年。事件で母親を殺された地下アイドル、家出して秋葉原で生きようとする女子高生、日々の苛立ちを秋葉原の街にぶつける配達員の青年。そんな、彼らを取り巻く人々にも色んな感情があり、ぶつかり合い生きている。それぞれが皆、この街で苦悩し葛藤していた。

人は良くも悪くも繋がっている。思わぬタイミングで誰かに救われる時もあれば傷つくこともある。あらゆる世代の目線で主要人物以外の心情も細かく描かれている。忘れてはならない事件の記憶。若き新星たちが描くからこそ、困難を乗り越えようともがく思いが若い世代にも伝えられる作品。楽曲がさらに心の不安を刺激し、掻き立てストーリーを盛り上げている。2008年に起きた秋葉原無差別殺傷事件を題材にし、その他にも実際に起きた事件を元に考え込まれた作品となっている。犯罪には色んなものがあるが、誰にでも曲がる道を間違えてしまうと犯罪に手を染めてしまう可能性があるのかもしれない。秋葉原の裏側と人の際どい心情が細かく描かれている。

弱冠24歳の新星、松本優作監督。多くの登場人物を丁寧に結びつけていくその手腕は、新人とは思えないほど完成している。主要人物である、二人の少女を演じいるのは、アイドルユニット「プティパ」の篠崎こころとアイドルグループ「オトメブレイブ」の安城うららがそれぞれ難役を体当たりで演じている。二人を取り巻く大人たちには布施博、仁科貴らベテランに加え、映画監督としても活動している小橋賢児が演じる。また、2010年のSKIPシティ映画祭長編部門にノミネートした、『未来の記憶』(09)の監督・岸健太郎が篠崎こころの父親役と撮影監督を務めている。楽曲提供は、音楽プロデューサーのbanvoxが務める。ULUTRA JAPAN、FUJI ROCK、ROCK IN JAPANと他国内大型フェスティバルにも出演しており、映画『怒り』にも楽曲を提供している。

【文/片岡由布子】

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