『殺し屋狂騒曲』作品レビュー

 『殺し屋狂騒曲』

長編部門『殺し屋狂騒曲』
©Agat Films & Cie, Seppia, Orange Studio, HK Productions, Artémis Productions and BCOH 2016

長編部門『殺し屋狂騒曲』
©Agat Films & Cie, Seppia, Orange Studio, HK Productions, Artémis Productions and BCOH 2016

拾った携帯にかかってきたのは殺しの依頼!?
幼い頃に両親を亡くしたクラリネット奏者のアリクは祖父と楽団を作り世界に美しい音楽を届けることを夢見ていた。だが、ある事件をきっかけにどん底へ落ちる。所属していた楽団の資金がなくなり、援助を求めるも助けてくれる人はいない。そんなある日、アリクは携帯電話を拾い、電話の相手に従うとそこには札束と拳銃が。そして、目の前には謎の美女ララが現れる。その携帯にかかってきたのは殺しの依頼だった。次々と事件に巻き込まれていく彼の結末は・・・。
 
初めはクライム・サスペンスだが、最後にはラブ・ストーリーなのか?と印象が変化する映画。次々と起こる事件とともに真面目でどんくさいアリクがだんだんと成長していく。真面目な彼は犯罪に手を染めてしまうのか。アリクとミステリアスな美女のララの恋の行方はどうなるのか。次々と登場する人物はアリクを犯罪者にしてしまうのか。謎の事件のなかクラッシックの演奏がより美しく聞こえ、独特の映像はとても美しくその世界観は見るものを魅了する。クライム・サスペンスなのに何故か微笑ましく、展開が全く読めない物語。

今回の上映がアジアン・プレミアにあたる本作はコンペティション長編部門、初のノミネートとなるアルメニアの作品。アルメニア生まれのレヴォン・ミナスィアン監督は、本国では俳優として活動していた。その後フランスの大学で映画を学び、パリを拠点に監督・脚本家として多くの短編作品を製作した。初の長編作品となる本作はクライム・サスペンス、コメディ、ラブ・ストーリーを融合させた野心作。スタイリッシュな映像とリズミカルな編集に、監督の確かな演出力を感じさせる。

【文/片岡由布子】

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