『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』初日トークイベント
アントニ・ガウディ世紀のプロジェクトにまつわるドキュメンタリー映画『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』が公開初日を迎えた12日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAにてトークイベントが行われ、建築家の光嶋裕介氏と入江正之・早稲田大学教授が登壇した。

本作は、完成までに300年かかるといわれていたアントニ・ガウディ世紀の一大プロジェクト「サグラダ・ファミリア」は、いかにして2026年完成予定になったのか。着工から133年経った現在に至るまで完成していない建築プロジェクトの内部映像と、建築関係者らのインタビューによって解明するドキュメンタリー映画。

イベントには、ガウディ研究家の第一人者で多くの著書を発表している建築家・早稲田大学教授の入江氏と、今夏に大好評を博した展覧会「特別展 ガウディx井上雄彦」の公式ナビゲーターを務めた建築家の光嶋氏が登壇し、ガウディとサグラダ・ファミリアについて熱いトークを繰り広げた。

本作を3度観た入江氏は「ガウディ本人は不在ですが、ガウディと関わり継承された方々のインタビューを通じて、サグラダ・ファミリアの現在の状況から過去へと掘り下げていく、とてもよくまとまったドキュメンタリー映画」と本作を賞賛した。一方、大学院時代に入江氏の講義を受けて、ガウディの魅力に取りつかれたという光嶋氏は「建築と言うのは設計者がクライアントと対話しながら未来予想図を描いていきます。ガウディの凄さの一つは、ガウディが死者であること。設計者不在でありながら、これだけの人を惹きつけ、これだけのものを成し遂げさせようとするところに意味がある」と語った。

現在、ガウディ没後100周年となる2026年の完成に向けて作業が進められているが、入江氏は「あと11年で完成させることに意味はない」と語り、「ガウディが残したサグラダ・ファミリアの10分の1の石膏模型がスペイン内紛で粉々になってしまい、現在の継承チームがそれを拾い集めて再生した。模型を再生するときに全て計測することで数値が出てくるわけですが、その数値と形態を見ていくとひとつの法則がわかってくる。それらを全てデータ化してコンピュータに入力し、航空技術のソフトを駆使すれば、今は三次元データで何でも作ことができる。ただ、一度死んだデータを再構築する中で、果たしてガウディが求めていた『使命感』は生まれるのだろうか。そこが一番大きな課題」と持論を述べた。光嶋氏は「バッハが作曲した楽曲も、コンダクターが変われば音楽も変わる。ガウディは模型こそ作りましたが、『この図面どおりに作れば私のイメージ通りになる』というものは遺していない。『これは私の作品だ』というエゴがなく、もっと違うところを見ていた」と分析した。さらに「時間とともにきちんと継承されていかなければならないのは、ガウディ建築の表面的なフォルムではなく、そこに隠された見えない部分。それはサグラダ・ファミリアを完成させること以上に大切なことだと思う」と語った。

映画『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』は12月12日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開!

監督:ステファン・ハウプト 
配給:アップリンク

© Fontana Film GmbH, 2012