第11回UNHCR難民映画祭の東京会場での上映が10月8日(土)より始まり、『シリア、愛の物語』のショーン・マカリスター監督が舞台挨拶に登壇した。

本作で5年間密着して撮影を行ったマカリスター監督は「共にいることで変わってきた点もあった」と明かし、特に「アラブの春が大きなきっかけとなり、(本作の主人公である)アメールの妻が牢屋から解放された」ことを挙げた。しかし、その後マカリスター監督自身が秘密警察に逮捕される事態となり、危険を感じたアメールと家族はレバノンで避難生活を送ることになったことが描かれている。

5年間という長い時間撮り続け、このタイミングで映画を完成させたことに関しては「人間的魅力に魅入られて長い年月撮影が続いた。そして、シリアの危機、難民の危機の背景を伝えていけるのではないかと思っています」といった。また、マカリスター監督は彼らの魅力を「(アメールの妻である)ラグダは家族の一つの象徴でもある。ラグダの強さがどこから来ているのかは私にもわからないが何かマジックがあったのではないか」と語った。マカリスター監督はこの家族に出会うまで友達をたどり7ヵ月かかっており、撮影することが決まると、友人たちに反対されるほど要注意人物で注目を集める家族であった。

最後に、危険な地域にもかかわらず撮影を続けられるのかという質問に対し「撮影をする上で警護班はつけない。なぜなら、撮影の対象者がどこが安全でどこが危険な地域なのかが一番分かっているから。多くのニュースで爆撃の様子が報道され戦争により悲惨でつらいと思うところがあるが、私はできれば人に寄り添っていたい。家の中で起こっていることをこれからも撮っていきたい」と信念を語った。

UNHCR難民映画祭は、世界中から集められたドラマやドキュメンタリー映画を通じて、難民や国内避難民、無国籍者等に関する啓発を行う映画祭。大作から独立系まで、様々な種類の作品を通じて、人々のおかれた状況や希望、絶望や勇気、そして困難を生きぬく力について描かれた作品を上映する。第11回UNHCR難民映画祭は東京のほか札幌、仙台、大阪、さらに16校の学校でも開催される。

【取材・文/片岡由布子】