『散歩する侵略者』が5月21日[現地時間]に第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でワールドプレミア上映され、黒沢清監督、松田龍平、長谷川博己が参加した。

第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された本作。2001年 『回路』で国際批評家連盟賞受賞、2008年『トウキョウソナタ』で「ある視点」部門審査員賞受賞、 2015年 『岸辺の旅』で「ある視点」部門監督賞受賞と、カンヌ国際映画祭で3度の栄冠に輝く黒沢清監督。松田龍平はデビュー作『御法度』以来17年ぶり、長谷川博己はカンヌ初参加となった。

上映前のレッドカーペットにタキシード姿で登場した3人は、世界各国のメディアと各地から訪れた多くの観客の声援に、笑顔で応えながら、会場に向かった。公式上映での挨拶で、黒沢監督は「本当に嬉しいです。この2人の大好きな俳優とこの舞台に立てたことがまるで夢のようです。カンヌ映画祭がこの映画の“個性”のようなものを目ざとく発見して選んでくれたのだと思っています。“個性”を発見されることが映画にとって一番名誉なことだと僕は考えています」とスピーチ。

続けて、松田が「緊張しています。メルシー(フランス語でありがとう)」と挨拶すると観客からは温かい拍手が起こり、会場は和やかなムードとなった。松田は「黒沢監督と一緒に撮影ができて、この作品の中で沢山の影響を受けました。黒沢監督と長谷川さんと3人で、ここでみなさんとお会いできたことをとても幸せに思います」と17年ぶりのカンヌへの喜びを語った。長谷川は「ボンジュール。コモサバ?ジュマペール、イロキ アセガワ。ですが、本当の名前はヒロキ ハセガワです。“H”(アッシュ)を発音して下さい」とフランス語でジョークを交えて自己紹介。続けて「この場に立てて本当に嬉しいです。憧れの黒沢監督の作品に出演させていただいて、とても楽しい、刺激的な日々でした」と挨拶した。

その後、超満員の観客とともにワールドプレミアを鑑賞した3人。何度も笑いや歓声が起こり、上映後には「ブラボー!」という声が飛び交うなどスタンディングオベーションが起こり、大きな盛り上がりを見せた。長谷川は上映後の会見で「実際に公式上映を観て、映画って劇場でお客さんが入って、一つまた変わるんだなと感じました。特に今回は海外のお客さんだったということもあり、その変化を肌で感じられたのは、すごくいい経験だったと思います。自分自身、もっとしっかりやらないとなって、改めて思いました」と初のカンヌが役者人生に与えた影響を語った。

また、会見で松田は、前回カンヌに来た時のことを「当時はまだ子供だったので、実はあまり覚えていない」と話し「あの時からカンヌも自分も変わりましたね」とコメント。さらに「公式上映では、お客さんの反応を感じながら、いろいろなことを考えながら観ていました。ものすごいプレッシャーでもあるのですが、妙な高揚感や心地の良さもあって、映画ってやっぱりいいなと改めて思いました」と感慨深げに語った。さらに「またカンヌにきたいか?」という問いには「また来たいに決まってるじゃないですか(笑)ただ、呼んでいただく身なのでそれに恥じない仕事をしないといけないと思います」と語った。

授賞式は5月27日(土)19:00[現地時間](日本時間28日(日)2:00)から行われる。

劇作家・前川知大率いる劇団イキウメの人気舞台「散歩する侵略者」を黒沢清監督が映画化した本作。数日間の行方不明の後、夫が「侵略者」に乗っ取られて帰ってくるという大胆なアイデアに感銘を受けた黒沢清監督が長年の構想期間を経て、規格外の映画に創り上げた。主人公・加瀬鳴海を長澤まさみ、鳴海の夫・加瀬真治役を松田龍平、そして町で発生する一家惨殺事件を追ううちに「侵略者」と行動をともにすることになるジャーナリスト・桜井役を長谷川博己が演じる。

映画『散歩する侵略者』は2017年9月9日(土)より全国で公開!
監督:黒沢清
原作:前川知大「散歩する侵略者」
出演:長澤まさみ、松田龍平、高杉真宙、恒松祐里、長谷川博己
配給:松竹、日活
©2017『散歩する侵略者』製作委員会