黒沢清、廣原暁監督

『ポンチョに夜明けの風はらませて』が「カリコレ2017」にて8月12日(土)に上映され、上映後のトークイベントに本作の廣原暁監督と、映画監督の黒沢清が登壇した。

大学在学中に制作した『世界グッドモーニング!!』で、ぴあフィルムフェスティバル審査員特別賞や第29回バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガー・ヤングシネマ・アワード グランプリを受賞し、注目を集める廣原暁監督。今回のイベントには、東京藝術大学院の入試時に提出された同作を観て廣原監督の合格を決めた映画監督の黒沢清が登壇。恩師と教え子によるトークイベントが実現した。

黒沢は本作について「前観た時は、あぁ青春映画だなと。馬鹿なことをただ最後までやり通す典型的な青春映画だなと思ったんですけど、今日観て青春映画ではないような気がしてきました」と語り「ハツラツとした青春というよりも、不吉な人生のある一時期の気配がする映画」と感想を述べ、これはキャスティングにあるのではないかと分析する。

本作のキャスティングについて、現役の高校生は起用していない点について問われた廣原監督は「最初の段階からリアルな高校生は使うつもりがない。リアルな高校生ではナチュラルな映画になって、それが売りになってしまう」と答え、「最後の卒業式のエキストラ含めて年齢を上げて、あまりリアルな高校生を出さずに。という形で進めていきました」と語った。

脚本について黒沢は「前半は馬鹿馬鹿しいことをただただやっていく。中盤の海にたどり着いていくあたりでタッチが重くなっていく。最後の社会からドロップアウトしていくところに向かうにあたってガラリと雰囲気が変わる気がした」と作品の流れについて疑問を投げかけると、廣原監督は「特別考えてたわけでは無いんですけど(笑)ただ、明日世界が終わるかもという感じのシーンにしたいと思って」と思いを明かした。

最後に黒沢は「単なる青春映画のようでいて、いろいろに見える。不思議な作品だと思います。観た方一人ひとり感想は違うでしょうし、どんな映画なのか言葉で簡単に伝えることは難しいと思いますけど、2度3度観て頂いて、いろいろ話し合って頂けると嬉しく思います。観れば観るほど味わいのある深い作品だと思います」と語り、廣原監督は「キャストの魅力がたくさん詰まった作品だと思います。是非、色々な方に紹介していただけたら嬉しいです」と思いを伝えた。

人生をなんとなく過ごし、大きな夢や目的を見出せないまま日常を送ってきた男子高校生たちが高校最後の旅で、癖のある人々と出会い、予期せぬ体験をしながら自分たちの生き方を見つけていく覚醒青春ロードムービー。数々の青春小説を手がける早見和真の同名小説を気鋭の映像作家・廣原暁が映画化。人情深いお調子者の主人公・又八役に太賀、知的でクールな仁役に中村蒼、心優しいジャンボ役に矢本悠馬、彼らの旅の戻りを待っている中田役に染谷将太、クレイジーなグラビアアイドルの愛役に佐津川愛美、風俗嬢・マリア役に阿部純子と若手実力派キャストが集結した。

廣原暁監督

黒沢清

映画『ポンチョに夜明けの風はらませて』は2017年10月28日(土)より新宿武蔵野館ほかで公開!
監督・脚本:廣原暁
原作:早見和真「ポンチョに夜明けの風はらませて」(祥伝社刊)
出演:太賀、中村蒼、矢本悠馬、染谷将太、佐津川愛美、阿部純子/角田晃弘(東京03)/佐藤二朗、西田尚美
配給:ショウゲート
©2017「ポンチョに夜明けの風はらませて」製作委員会