波乱万丈な稀代の詩人×新進気鋭の音楽家を描いた『この道』が映画化されることが決定し、ロケ地となった富士屋ホテルにてクランクアップ報告会見が行われた。

日本の子供たちの歌は、♪通りゃんせ、♪はないちもんめ、といった伝承の「わらべうた」か、♪ちょうちょう、♪ぶんぶんぶん、といった明治開国で日本に入ってきた「ドイツ童謡」を日本語訳した歌だった。＜日本の子供たちに、日本人による「童謡」を創ろう！＞と決起した鈴木三重吉は奇抜な詩で名を馳せていた詩人・北原白秋と、ドイツ留学を経て日本で初めて交響楽団を結成した音楽家・山田耕作に童謡創作の白羽の矢を立てる。最初は才能がぶつかり反目する二人はあることがきっかけで手を取り合い数々の童謡を世に出していく。だが時代の波によって二人は苦悩の淵に・・・。

童謡誕生から100年となる今年公開される本作。日本を代表する名優・大森南朋とEXILEのパフォーマーで俳優としても数多くの映画やドラマに出演しているAKIRAの2人を主演に迎え、破天荒な心から生まれる純粋で平和と安息を願う詩で人々の心を掴んだ北原白秋と、その白秋のリズムを持った詩に深く感銘を受け数々の名曲を作曲した山田耕筰の人生を描く。監督を務めるのは名匠・佐々部清監督。

今回、童謡のふるさと「小田原」を舞台にした本作が2月末にクランクアップを迎え、クランクアップ報告会見が行われた。北原白秋役の大森南朋、山田耕筰役のAKIRAをはじめ、白秋が師と仰ぐ歌人・与謝野鉄幹役の松重豊、鉄幹の妻であり白秋の姉的存在である女流詩人・与謝野晶子役の羽田美智子、『赤い鳥』創刊者・鈴木三重吉役の柳沢慎吾、白秋の一番目の妻・松下俊子役の松本若菜、白秋の三番目の妻・菊子役の貫地谷しほりら豪華俳優陣と本作でメガホンをとった佐々部清監督が登壇した。

クランクアップの撮影場所は、白秋・耕筰もこよなく愛し、明治11年（1878年）に創業した箱根の老舗・富士屋ホテル。『007』シリーズをはじめ多くの洋画に登場するが、約140年の長い歴史の中で日本映画の撮影は本作が初。

今回、自身が演じた北原白秋について「すごく真面目で難しい人なのかなと思っていた」と振り返る大森。しかし、実際に演じてみることで「こんなに波乱万丈の人生で人間味あふれた素敵な人物だったということを今回初めて知りました」と明かした。また、クランクイン前には、「故郷を思う想いという情景を見たくて白秋の生まれ故郷・柳川まで行かせて貰った」というほどの気持ちの入れようで臨んでおり、「とにかく現場が楽しくて、素晴らしい作品になると思っております」と自信を見せた。

日本を代表する音楽家・作曲家である山田耕筰役を演じたAKIRAは「今回改めて日本の音楽の素晴らしさに触れることが出来ました」といい、山田耕筰自身について「北原白秋との熱くも可笑しい素敵な青春を過ごしてきたのが知ることが出来ました」と語った。また、本作で36歳、52歳、66歳の山田耕筰を演じたAKIRAだが「時代が違う中で同じ役を演じるというのはとても大変でしたし、指揮・バイオリン・ピアノを習得して劇中で披露していますのでそういった意味でも、ものすごくやり甲斐のある作品」と語った。さらに、今回キャストが揃って、富士屋ホテルで会見を行えたことについて「ある意味歴史的瞬間に立ち会えて光栄です」と気持ちを明かした。

また、北原白秋と山田耕筰の才能に気づく“プロデューサー的な存在”の鈴木三重吉役を演じた柳沢だが、白秋が師と仰ぐ歌人・与謝野鉄幹役の松重豊は、撮影現場について「柳沢慎吾さんの口撃をどう避けるか（笑）」と話し、「今日の撮影シーンで、多少長い台詞があったんですけど、羽田さんに防波堤になって頂いて何とかその口撃を避けることができました（笑）」と笑いを誘った。

メガホンを取った佐々部監督は「2人のコンビネーションがとても上手くいき、夫婦のようで奇妙な友情物語になっていると思います」と自信を見せ、「この歴史ある富士屋ホテルで撮影をすることができ本当に感謝しています。これだけのキャストが集まる大団円にふさわしい場所だと思います」と語った。

九州柳川から文学を志し上京した北原白秋。隣家の美人妻・俊子に気もそぞろ。逢瀬を俊子の夫に見つかり姦通罪で入獄。白秋の才能を眠らすまいと与謝野夫妻が奔走し釈放されるが、恩も顧みずのうのうと俊子と結婚。その刹那、俊子は家出、入水自殺を図るが蟹に足を噛まれ断念。そんなおバカな白秋と洋行帰りの音楽家・山田耕作に鈴木三重吉は童謡創作の白羽の矢を立てる。才能がぶつかり反目する二人だが、関東大震災の惨状を前に打ちひしがれた子供たちを元気づけるため、手を取り合い数々の童謡を世に出す。しかし、戦争の暗雲が垂れ込める中、子供たちを戦場に送り出す軍歌を創るよう命ぜられた二人は苦悩の淵に・・・。