阪本順治監督、稲垣吾郎


第31東京国際映画祭「コンペティション」部門上映作品『半世界』の記者会見が10月30日(火)にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、阪本順治監督、稲垣吾郎が登壇した。

世界109の国と地域から応募された1829本の長編映画の中から、厳正な予備審査を経た16本の作品を上映する「コンペティション」部門。阪本順治監督が、稲垣吾郎主演で贈る完全オリジナルストーリー。かつて一緒に過ごした三人組のうちのひとりが前触れもなく田舎へ戻ってくる。何があったかを決して口にせず、仕事を辞め、家族と別れ、ひとりで帰ってきた。ワケありの仲間の帰還が、残りのふたりにとっては「これから」を考えるきかっけになっていく。40歳目前という年齢の男3人の視点を通じて、誰もが通るある地点の葛藤と、家族や友人との絆、そして新たな希望を描くヒューマンドラマ。

25日(木)に行われた本映画祭のオープニングイベントであるレッドカーペットに参加した阪本順治監督と稲垣吾郎。稲垣は「レッドカーペットを歩いたことがなかったので、初めての経験で夢のようです」と本映画祭への参加を楽しんでいる様子を窺わせた。劇中では、“ダメ親父”を演じている稲垣だが、「(役に)ハマっていると言われると複雑(笑)」と笑いを誘った。

今回、演じた役に付いては「今回大きかったのは、ここ数年で環境の変化があって、役者としては(変化があってから)初めてのお仕事だった。自分でも見たことがない自分が映っている」と振り返り、具体的には「チェーンソーを持って木を伐採したり、頭にタオルを巻いてみかんを食べたり」とこれまでに演じたことがない役だったことを明かし、「そういう稲垣吾郎を見たことがなかった」と語った。

阪本監督は、稲垣の起用について「以前会った時の印象が、ごまかさない、自分を前にしたい、寡黙に一つ一つの仕事をしている」というイメージがあったことを明かしつつも、「主人公の性格と、稲垣君の性格は違います」と一言付け加え、笑いを誘った。さらに現場では「かっこいい身のこなしは苦手でどんくさいところがある」と苦笑する稲垣は、「細かいしぐさが難しい」と明かし、「みかんの皮の向き方から、細かく指導していただきました」と語った。

本作では、三重県を舞台に、親の仕事を引き継ぐなどの職についた3人がメインのキャラクターとなっているが、阪本監督は「小さな都市の話だけど、奥行きが深いものを撮りたいと(思った)。地方都市だけで完結するのではなく、元自衛官が帰ってきたことで、小さな町から世界を見るということもやりたかった」とその思いを語った。

また、本作は稲垣演じる紘、長谷川博己演じる瑛介、渋川清彦演じる光彦という3人の男を中心に描かれるが、こういった友情について聞かれた稲垣は「古くからの友人はいないタイプなんですけど」と笑いを誘いつつ、「仕事はずっと男のグループでやってきた。今は形は変わっているんですけど、“新しい地図”として、香取(慎吾)君と、草彅(剛)君と地図を広げていくことに無我夢中です」と語り、「友情と仕事での仲間はちょっと違いますけど、絆は僕らにもあるし、分かります。二人にも早く見てもらいたいですね」と思いを明かした。

【取材・写真・文/編集部】

「第31回東京国際映画祭」は2018年10月25日(木)~11月3日(土・祝)に六本木ヒルズ、EXシアター六本木、東京ミッドタウン日比谷 ステップ広場ほかで開催!
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