昭和の大傑作が斎藤工主演×白石和彌監督で始動―『麻雀放浪記2020』で、常時20台のiPhoneを駆使して全編が撮影されたことが明かされた。

阿佐田哲也による250万部を超えるベストセラー小説「麻雀放浪記」。映画化は、イラストレーターの和田誠が初監督した『麻雀放浪記』(1984)から実に35年振り。俳優のみならず、映画監督にも挑戦している主演・斎藤工が10年間、映画化を熱望してアプローチを続けていた本作に、ヒット作や話題作を連打して、いまの日本映画界を牽引しているトップランナー白石和彌監督が立ち向かった。主人公・坊や哲がいるのは、2020年の“未来”。人口が減少し、労働はAI(人工知能)に取って代わられ、街には失業者と老人があふれている。そしてそこは“東京オリンピック”が中止となった未来だった―。1945年の“戦後”からやってきたという坊や哲が見る驚愕の世界。その時、思わぬ状況で立ちはだかるゲーム“麻雀”での死闘とは―?

今回、本作が邦画では初の試みとなる、常時20台のiPhoneを駆使して全編が撮影されたことが明かされた。2017年、本作と同じく全編iPhoneで撮影され世界中で高い評価を得た『タンジェリン』(2017)を見たプロデューサーが、その画期的な映像表現に感銘を受け、白石監督自身もiPhoneでの映画制作を以前から切望していたことが重なり本作での採用を決意。同年の11月から12月にかけて、常時20台のiPhoneを駆使した撮影を決行した。

通常の映画用機材よりも遥かに小型なiPhoneを使用することで、演者とカメラの距離は物理的にも心理的にも縮まり、その機動力を最大限活かして躍動感溢れる映像を収めることに成功。ギャンブルが生み出す【緊迫の心理戦】、そして終戦後の2020年という【近未来のリアリズム】をテーマに掲げる本作との相性はまさに抜群で、より臨場感のあるドラマに仕上がった。

また、併せて「回転寿司の新鮮なマグロと共に設置されているiPhone」という強烈で奇天烈なメイキングスチールが解禁された。iPhoneでなければ成り立たないアングルやカメラワークは、どのようなシーンでどのような映像へと昇華されたのかに期待が高まる。さらに手に汗握る麻雀の対局シーンでは、麻雀卓の上にiPhoneを複数台設置し、ゲームの展開に合わせてカメラポジションを自在に移動させてキャラクターたちの表情を切り取るという手法で緊迫の心理戦や駆け引きを、余すことなく映し出すことができた。

近未来のリアリズムを斬新手法ダイナミックに創出した本作では、従来の映画用カメラでは目にすることができなかった野心的で鮮烈な映像がふんだんに詰め込まれている。また、iPhoneでの映画制作に適した「FiLMiC Pro」というアプリをメーカーの協力のもと本作用にチューンナップするなど、本作の中身同様にその制作スタイルも大変画期的で挑戦的なものとなっている。

斎藤工 コメント

昭和をiPhoneで撮るという撮影スタイルに、良い意味の違和感がありました。
僕の憧れである、昭和の戦後の衰退しながらもどこか生命エネルギーを感じるような時代を、その対比である現代のiPhoneの機動力を使って撮影していくという行為がとても面白かったです。その滑稽さみたいなものが「あぁ、『麻雀放浪記』に挑んでるんだな」という感じがしました。
回転寿司のお皿の上にiPhoneが乗っている寿司アングルは、世界初じゃないかなと思います(笑)。

白石和彌(監督)コメント

麻雀放浪記の戦後の焼け野原から舞台を2020年に移して世界観を一変させるにために今回は全編iPhoneで撮影しました。変に肩に力も入らず軽快に撮影出来ただけでなく、この狂った世界を表現するのに最高のガジェットだったと思います。結果には非常に満足しています。

馬場元(撮影)コメント

映画を全編iPhoneで撮影したいと聞いた時はとても驚き、正直戸惑いました。
僕自身もiPhoneを使っていて、携帯カメラとしては優秀だとは感じていましたが、まさかそれで劇場公開の映画を撮影することになるとは思ってもいませんでした。
でも「麻雀放浪記2020」の脚本を読んでいくうちに、このぶっ飛んだ内容を映像化するためには斬新なアプローチ、iPhoneでの撮影もありなんじゃないかと考えるようになりました。いつも映画でみているテイストと違う、何か崩れたような感じの映像が逆にこの映画の世界観にマッチするのではないかと。
撮影時のカメラアングルについては、小型カメラならではの特性を生かした大胆なポジションに挑戦しています。回転寿司のレーン上にカメラを設置して移動ショットを撮影したり、お芝居をしている斎藤工さんに収録中のカメラを手渡ししてしまうなんてこともありました。
iPhoneにオプションを装着して業務用カメラ風に変身させてしまうことも出来ましたが、多少の不便があっても必要最小限とどめ、普段iPhoneで撮影するようなシンプルな感じを失わないよう心掛けました。クランクアップ後、ドテ子役のももさんから目の前に大きなカメラが構えていないことで自然にお芝居ができたというお話を伺い、iPhoneで撮影することで役者さんへの心理的な影響もあったんだなと感じました。

映画『麻雀放浪記2020』は2019年4月5日(金)より全国で公開!
監督:白石和彌
原案:阿佐田哲也「麻雀放浪記」(文春文庫刊)
出演:斎藤工、もも(チャラン・ポ・ランタン)、ベッキー/竹中直人
配給:東映
©2019「麻雀放浪記2020」製作委員会