オール韓国ロケで挑んだ石井裕也監督最新作『アジアの天使』が来年韓国と日本で公開されることが決定した。

『舟を編む』で日本アカデミー賞監督賞を最年少で受賞し、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『町田くんの世界』など話題作が続き、『生きちゃった』の公開を控える石井裕也監督が、韓国映画のスタッフ・キャストと共に、韓国の地で共闘した最新作。本作は95%以上のキャスト、スタッフが韓国チームであり、ロケ地はすべて韓国、日本映画の繊細さと韓国映画の力強さを融合した新たなアジア映画を創造する。

出演するのは、石井監督と数々の作品でタッグを組んできた池松壮亮が主演で参加、池松の兄役には韓国でも絶大なる人気を誇るオダギリジョー。日本映画を牽引する、2人の本格的な共演は本作が初となる。韓国映画界からはヒロインとして『金子文子と朴烈』(17/イ・ジュンイク監督)で長編映画初主演を務め、韓国公開当時に“今年一番の新人”と呼ばれ、2018年には第23回釜山国際映画祭でも俳優賞を受賞している実力派女優チェ・ヒソが参加。

日本側の永井プロデューサーが「石井監督と韓国のクリエイターとの共同作業で映画を作りたい」という思いから企画が始まった本作は、『猟奇的な彼女』(01)の撮影助手を務め、『ムサン日記~白い犬』(10)、『生きる』(14)、『ビューティフル・デイズ』(19)など世界各国の映画賞を受賞した作品の撮影監督であるキム・ジョンソン、キム・ギドク監督の『嘆きのピエタ』(12)などの音楽監督、パク・イニョンらがスタッフとして参加している。

「元々異国の地で映画を作ることに興味はあった。自分の経験値や感覚が通用しなくなった時に果たしてどんな新しい発見があるのか、そのことに大いに興味があったからだ。それに、映画とは本来途方もなく自由なもののはずで、狭い世界など軽々と飛び越えていけるもののはずだ。そういう映画の可能性に期待もしていた」と語る石井監督は、2014年の釜山国際映画祭に審査員として参加したときに出会った韓国のパク・ジョンボム監督と意気投合し、それ以来韓国という国が自分にとって「外国のひとつ」ではなく、「とても大切な友達が住んでいる国」に変わったという。「そのときに、映画を撮れると確信した。韓国という国の全容はもちろん外国人である僕には分からないが、友達の心の痛みを想像することができるなら映画も撮れると、直感的に思った」と語る。

自身の考えややり方がなかなか通用しない難関に遭遇しながらも、3年という年月をかけて2020年の今、韓国と日本のリアルを描きながら、映画という自由な可能性に真っ向から挑んだ一作が出来上がった。それぞれが心に傷を持つ、日本と韓国の家族がソウルで出会い、新しい家族の形を模索する人間ドラマ。誰も見たことのない「アジアの家族映画」が誕生する。本作は来年春に韓国で公開後、来年の日本公開を予定している。

石井裕也(監督)コメント

とびきり自由で全く新しい映画を作るためにちょっとした冒険をしました。つまらない常識は一旦全部ぶっ壊してみよう、という挑戦的な映画です。撮影期間中、コロナによって世界の状況がどんどん悪化していきましたが、スタッフたちの努力により奇跡的に無事にクランクアップできました。
日本語と韓国語と英語が飛び交う現場の中で、池松君とオダギリさんのコンビの芝居は抜群に面白く、考えてみれば日本の天才2 人が韓国で兄弟を演じているだけで物凄く価値があるなと思いました。韓国人俳優たちは強烈でパワフルで純粋で、日本人には出せないオーラがやっぱり確かにありました。
別種の凄みが1 本の映画の中で見られると思います。

池松壮亮 コメント

いつからか真実を見失った者達が、国を超え、こびりついた価値を捨て、互いを見つめ、痛みに共感し、共に旅をして、共に生まれ変わるまでについての映画です。
脚本を渡された時、震えました。
来たる新しい時代の夜明けの前に、それぞれの後悔の日々と、二度と戻らない時間を取り返しにいくこの映画の挑戦にかけてみようと思いました。
石井監督とはこれまで沢山の仕事を共にしてきましたが、そのあくなき探究心と、他者の心を想う映画作家としての力は、やはり圧倒的です。
世界が新たなステージの分断に乗り出しつつある今、誰が何と言おうとこの映画で出会い、受け入れてくれたチェヒソさんをはじめとする素晴らしい韓国キャストの方々、愛情深い韓国スタッフの方々には感謝してもしきれません。
この映画の天使がきっと、良き時代の到来を告げてくれると信じています。

オダギリジョー コメント

明らかにこの作品からは石井監督の『挑戦』が感じ取れました。
ありふれた映画ではなく、何かを飛び越えてくれそうな、何か新しい感覚をくれそうな、そんな映画になりそうで、僕は喜んで参加する事にしました。監督や俳優、ほんの数人の日本人が韓国に乗り込んで行ったわけですが、コロナも含め、色んな危機を乗り越えながら、僕らは国を超えて大きな家族になれた気がしました。

チェ・ヒソ コメント

国も文化も違う人々が一緒に旅に出ました。映画という共通言語を信じてみよう。みんなでひとつの物語を作ってみよう。
その一心で毎日現場へ向かいました。
石井監督の無限の想像力と、映画に対する愛情と確信は私にとって大きなインスピレーションでした。監督の現場で私は、毎日、他の撮影現場では出来なかった数々の挑戦に出会い、新たな発見をする事が出来ました。
池松壮亮さんの映画を作る仲間に対する愛情深い、まっすぐな眼差し。オダギリジョーさんの抜群のウィットと優しさ。
一緒に映画を撮る人々を徹底的に信じて下さった三人のお陰で私は、役者としていつよりも自由に、私自身を解放することができました。
私たちは何のためにこんなに必死に生きてるんだろう。何に向かって戦ってるんだろう。常にその様な問いを抱き芝居をしてきましたが、今作を通じて、ソルと共に、私はその問いの原点に辿り着いたような気がします。

ストーリー

ひとり息子の学を持つ青木剛(池松壮亮)は、病気で妻を亡くし、疎遠になっていた兄(オダギリジョー)が住むソウルへ渡った。日本から逃げるように。「韓国で仕事がある」と兄から告げられていた剛だったが、兄の生活はその日暮らしで貧しく、想像していたものとは違った。ほとんど韓国語も話せない中、怪しい化粧品の輸入販売を手伝う羽目に。一方、ソウルでタレント活動を行っているが、市場のステージで誰も聞いていない歌を歌う仕事しかないチェ・ソル(チェ・ヒソ)は、所属事務所の社長と関係を持ちながら、自分の歌を歌えない環境やうまくいかない兄や妹との関係に心を悩ませていた。しかし、その時彼らはまだ知らない。事業に失敗した青木と兄、学たちと、資本主義社会に弾かれたソルと兄、妹たち ── どん底に落ちた2つの家族が共に運命を歩んでいき、奇跡を目の当たりにすることを・・・。

映画『アジアの天使』は2021年にテアトル新宿ほか全国で公開!
脚本・監督:石井裕也
出演:池松壮亮、チェ・ヒソ、オダギリジョー
配給:クロックワークス