第42回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のオープニング作品として『生きちゃった』のワールドプレミア上映が9月12日(土)に国立映画アーカイブで行われ、仲野太賀、大島優子、若葉竜也、石井裕也監督が登壇した。

先に石井監督が登壇し、3人のキャストを紹介する形で始まった今回の舞台挨拶。クランクインまでの2か月で「電撃的に準備をした」と明かす石井監督は、キャスティングについて「奇跡的」と振り返った。“この映画を屋台骨を俳優陣として支えている”と紹介された若葉、“この映画において熱い思いをもたらしてくれ、実力の違いを見せつけてくれた”と紹介された仲野、大島は“持っているポテンシャルが計り知れないことは分かっていたけどこの映画の中で炸裂した”と紹介された。

“クランクイン前から自身の代表作になる”と言っていたという主演の仲野だが、「俳優としていろんな気付きを与えてくれた監督」と石井監督への思いを明かし、自身の中での「ひとつの人生の大きな転換期になるというのはあった」と振り返った。そのうえで「脚本を書いた人の温度が伝わってくるセリフの数々に、ものすごい熱量を感じた」と本作への思いがあったことを明かし、「今まで僕が映画に抱いてきた憧れや、映画だからこそ表現できる期待がそこに宿っている気がした」とコメントした。

劇中で「壮絶な叫びを急にした」という石井監督は「叫ばないものだと思って撮っていたら急に本番で叫んだ」と振り返り、大島は「いざそのシーンにかかって、言葉にならない叫びになった」と振り返った。さらに大島は「私は嫌なことがあると一人で家で叫んでます」と明かすと「あんな叫び方?」とツッコミが入る場面もあり、仲野からは「もし大島さんが普段家であんな叫び方をしていたら心配をするくらい壮絶な、人の人生を見た気がします」と笑いを誘いつつ、大島の演技を称賛した。

また、大島は「この役、この作品に出会えたことを感謝しています。映画館に来てほしいですね」と素直な気持ちを明かし、「私は『今日から俺は!!』を映画館に見に行きました。この(仲野との)共演をきっかけに見に行きたいなと思って、すごいハマりました(笑)」と明かすと会場は笑いに包まれた。

それを受けて仲野は「日常を忘れるようなエンタメ作品も映画の力だと思っています。いっぽぷで、今自分たちが生きている社会だったり、生きている実感をもう一回感じさせてくれるようなそういうのも映画の側面だと思っています。見てくだされば生きることの力強さを感じてもらえるんじゃないかと思っています」と本作をアピールした。

石井裕也監督のオリジナル脚本による最新作で主演を務めるのは、映画、舞台、ドラマなどの出演オファーが相次ぎ、インディペンデント映画から大作映画にまで幅広く出演し、『町田くんの世界』に続いての石井組となる仲野太賀。共演には、『葛城事件』や『愛がなんだ』『街の上で』などに出演し、唯一無二の存在感と比類なき演技力を持つ若葉竜也。山田厚久(仲野太賀)と武田(若葉竜也)は幼馴染。厚久は同じく幼馴染である奈津美と結婚しており、5歳の娘がいる。平凡だがそれなりの生活を送っていたが、ある日、厚久が会社を早退して家に帰ると、奈津美が見知らぬ男と情事に耽っていた。あまりにも急なことで、厚久は怒ることもできなければ悲しむこともできない。感情に蓋をすることしかできなかった。その日を境に厚久と奈津美、武田の関係は歪んでいき、物語は予期せぬ展開へと向かっていく・・・。

【写真・文/蔭山勝也】

映画『生きちゃった』は2020年10月3日(土)よりユーロスペースほか全国で公開!
脚本・監督・プロデューサー:石井裕也
出演:仲野太賀、大島優子、パク・ジョンボム、毎熊克哉、太田結乃、柳生みゆ、レ・ロマネスク、芹澤興人、北村有起哉、原日出子、鶴見辰吾、伊佐山ひろ子、嶋田久作、若葉竜也
配給:フィルムランド
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