『天外者(てんがらもん)』で三浦春馬さんが演じた、日本の未来を切り開いた“五代友厚”を紐解く。

激動の幕末から明治初期、日本の未来のために駆け抜けた男がいたー五代友厚―。武士の魂と商人の才を持つこの男、薩摩藩士から明治政府役人を経て実業家となり、今日に続く商都大阪の基礎を作り上げた。東の渋沢栄一、西の五代友厚とも評される功績を挙げながらも、長らく歴史に埋もれていた。近年、多くの人の研究により、その真価が再認識される。「実もいらぬ、名もいらぬ、ただ未来へ・・・」とひたすら大いなる目標に向かったその志と熱い思いが、時代を超えて今、解き放たれる―。三浦春馬さんが圧倒的な熱量で生き抜いた五代友厚を演じる。取り囲む盟友の坂本龍馬を三浦翔平、龍馬と共に現れ後に三菱財閥を築く岩崎弥太郎を西川貴教、そして初代内閣総理大臣となる伊藤博文の若かりし頃を森永悠希。さらに五代友厚の両親として生瀬勝久と筒井真理子、遊女はる役の森川葵、五代友厚の志のよき理解者である妻・豊子を蓮佛美沙子が演じる。

五代友厚という、人物の一生を描いた本作。近代日本経済の基礎を構築し、また現代日本の繁栄に非常に大きくかかわった人物であるにも関わらず、歴史の中でも大きく取り上げられてはいない。NHK連続テレビ小説「あさが来た」(2015~2016)では、ディーン・フジオカが五代友厚を好演し、“五代様”が一つの社会現象になったが、彼自身について詳しく知る人は少ないのではないだろうか。ここで、五代友厚という人物がどういう人だったのか、紐解いていく。

近代日本経済の基礎を構築し稀代の≪天外者(てんがらもん)=凄まじい才能の持ち主≫と呼ばれた五代友厚。土佐の坂本龍馬、岩崎弥太郎、長州の伊藤博文ら同年代の若者たちと学び、遊び、夢を語りあい、さらには高杉晋作、勝海舟、大久保利通、西郷隆盛、大隈重信、トーマス・グラバーといった日本を語る上で欠くことが出来ない偉人・傑物たちとも交わり、友として彼らを支えた。武士の身でありながらも上海に渡って蒸気船を購入し、海外貿易による商業立国を説き、イギリスへ留学生を送り出し、自らもヨーロッパを視察する。

まさに五代は、「誰もが夢を見ることが出来る国」を作るべく、世界中の知見を手に入れ、また大久保利通らを支え殖産興業・富国強兵などに邁進させたのだ。明治政府が誕生すると政府役人となるが、大阪を「東洋のマンチェスター」に発展させるため実業家に転身。明治11年には大阪に商法会議所を作り、貨幣造幣局の設立、電信・鉄道・紡績・鉱山など多くの事業を精力的に手がけ、現在の大阪証券取引所・大阪商工会議所・大阪市立大学など膨大な数の組織や企業の設立に尽力した。

明治11年には大阪に商法会議所を作った際には、自ら会頭に就いた五代。同時に株式取引所も創設させ、大阪財界を復興させる。同年東京では、渋沢栄一が東京商工会議所を創設し、「西の五代、東の渋沢」と呼ばれるようになった。渋沢よりも4年早い明治2年には民間に転じていた五代は、時代の一歩先を見据えて新しい時代を作ろうとしていたのだろう。彼の「誰もが夢を持てる国作り」の志を垣間見ることが出来る。

つまり、現代日本の繁栄は、五代と渋沢によって実現したといっても過言ではない。今自然災害や新型コロナウイルスなどの危機に瀕している現代で、今こそ危機の時代に夢を見ることが出来る国を作ろうとした五代に、学ぶべきところはたくさんあるのではないだろうか。彼の「志」は今の現代人の心の中にも生きているはず。今の時代だからこそ、五代友厚の生きた時代と彼の人間像を描いた本作を観て、激動の時代を駆け抜けた薩摩の男を感じてほしい。まさに「天外者(凄まじい才能の持ち主)」を体感することが出来るだろう。

映画『天外者』は2020年12月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開!
監督:田中光敏
出演:三浦春馬、三浦翔平、西川貴教、森永悠希、森川葵/蓮佛美沙子、生瀬勝久
配給:ギグリーボックス
©2020 「五代友厚」製作委員会