『護られなかった者たちへ』の石巻凱旋舞台挨拶が9月13日(月)にイオンシネマ石巻で行われ、佐藤健、瀬々敬久監督が登壇した。

作家・中山七里の傑作小説を映画化した本作。全身を縛られたまま“餓死”させられるという、異様な手口の連続殺人事件が発生。捜査線上に浮かび上がったのは、過去に起こした事件で服役し、出所したばかりの利根。刑事の笘篠は利根を追い詰めるが、決定的な証拠がつかめないまま第三の事件が起きようとしていた―。なぜ、被害者はこのような無残な殺され方をしたのか?利根の過去に何があったのか?さまざまな想いが交錯する中、やがて事件の裏に隠された、切なくも衝撃の真実が明らかになっていく―。主人公・利根役に佐藤健、彼を追う刑事・笘篠役を阿部寛が演じるほか、清原果耶、倍賞美津子、吉岡秀隆、林遣都ら豪華演技派キャストが集結。

映画のロケ地ともなった石巻南浜津波復興祈念公園を訪れた佐藤健、瀬々敬久監督。2人は、「がんばろう!石巻の会」事務局長・黒澤健一さんの案内のもと、かつての南浜地区の街並みについての話を聞きながら園内をめぐり、「祈りの場」にて献花、被災地へ想いを馳せた。「一丁目の丘」からは、佐藤と阿部がラストシーンを演じた防潮堤も見える。

佐藤は「撮影をしたときは、(公園から見える)道路の向こう側の景色は今とあんまり変わらず、僕と阿部さんで防潮堤を登って、公園側の景色を2人で見るというお芝居だったのですが、その時はほとんど更地で何もないような状況でした。今日こうして訪れ、こんなにも美しい公園になったのを見て、震災から10年経ち、ゆっくりではありますけど前に進んでいるんだなと感じました」と語り、瀬々監督は「人々が生きていた記憶というのが、そのままここに根付いているというか、ここへ来て、みんながその記憶をひと通りより戻す拠点になっていると思うし、ここに住んでいた方々だけでなく、日本中の人たちがここへ来て、あの当時のこと、街の記憶など、そういう日々の生活の記録っていうものがここにあるんだという、そういうことを感じる場所になっているんじゃないかと思います」と涙ぐみながら語った。

イオンシネマ石巻に登場した佐藤は「撮影したのは1年ほど前だと思うのですが、当時既にコロナ禍で、そんな中迎えてくださって、撮影に協力していただいた石巻の皆様に非常に感謝しております」と感謝の気持ちを口にし、瀬々監督は「ちょうど震災の年は僕の友人が石巻の小学校でドキュメンタリーを撮影していまして、その手伝いで8月くらいに来ました。まだ復興途中で信号も止まっているような状態でしたが、その時の印象がすごく鮮明に残っていて、今回、石巻で撮影させていただきました」と感謝の気持ちを伝えた。

撮影地の宮城で作品が上映されることについて佐藤は「監督と一緒に石巻南浜津波復興祈念公園に行かせていただいて、その場所は撮影の時に阿部さんとロケでも行かせていただいたのですが、撮影の時点では更地だったのが、今日は非常に美しい公園が完成していました。すごく広いので、その広さの分当時の被害の大きさも感じたのですが、立ち上がって前を向いた人たちがいたから、復興に辿り着いたということに胸を打たれました。凄く力をもらって、そんな東北の皆様にこの映画を届けることが感謝の気持ちを表すことになるかどうかわからないですが、少なくとも、我々は、祈りや、あらゆる願いを込めて作ったので、それが届いたら嬉しいです。もちろん、日本全国の皆様に観ていただきたいですが、東北の皆様には、特に届いたら嬉しいなと思います」と観客へ思いの丈を述べた。

撮影での印象的なエピソードを尋ねられると「石巻で撮影させていただいた最後のシーン、先ほどもお話に出た祈念公園から道ひとつ隔てたところにある防潮堤を超えた海がラストシーンだったんですが、そこが凄く印象に残っています。今回、監督が水にこだわって演出されてるなと感じていたのですが、今回ラストシーンで、芝居の上で初めての感覚があって、“海を見る”感覚が変わったというか。ここは非常に複雑な気持ちで撮影させていただいたのですが、映画としても意味のあるシーンになっているんじゃないかなと思います」と振り返る佐藤。

宮城で地元の空気を感じながら撮影をしたことについて佐藤は「非常に助けられたところがあります。東京で撮影しても絶対に撮れない景色が撮れますし、芝居をする上でも実際に震災のあったその場所に身を置くことで、感じることがありますし、そういった空気というものが映画には映るんですよね。そういった空気感に身を任せながら撮影できたのは、芝居をする上で助けられました」と語った。
 
最後に佐藤は「この映画に描かれていることが全てだとは思いませんし、きっと観る角度から、観る目線によって、その数だけ正義があって、その数だけ真実があるんだと思います。ただ、自分の大切な人を護れる社会であって欲しいし、そういった社会を作るために、一人一人が声をあげるんだとか、どうやって生きていくんだと考えることが重要なんじゃないかと思いますし、そんな願いをこめて作られた作品です」、瀬々監督は「大変な状況でも人々は日常の生活を営み、そこには美しい瞬間や、楽しい瞬間があったりする、そういう小さな日常の大切さも描いています。そういったものが覆され壊れされていくことに対して、なんとかしたいという思いを持って撮った映画です。今後も未来へ希望が持てればと思っておりますので、皆さんとこの場で出会えて嬉しく思います」とメッセージを贈った。

映画『護られなかった者たちへ』は2021年10月1日(金)より全国で公開!
監督:瀬々敬久
出演:佐藤健、阿部寛、清原果耶、倍賞美津子、吉岡秀隆、林遣都、永山瑛太、緒形直人
配給:松竹
©2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会