3月27日[現地時間](日本時間3月28日)に第94回アカデミー賞授賞式がロサンゼルスのドルビーシアターで行われる。見どころ満載のアカデミー賞の魅力を作品紹介と共に総まとめ、今回は本授賞式でも日本で1番注目されているといっても過言ではない映画『ドライブ・マイ・カー』を紹介する。

第94回アカデミー賞で4部門(作品賞、国際長編映画賞、脚色賞、監督賞)に選出され、日本映画としては初の作品賞のノミネートとなった。第74回カンヌ国際映画祭にて日本映画初の脚本賞を含む4冠を受賞するなど数々の映画賞を受賞した。そして、日本アカデミー賞では作品賞を筆頭に8部門(作品賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞、監督賞、編集賞、録音賞、照明賞)で最多最優秀賞を受賞した日本を代表する期待の作品。

俳優であり演出家の家福は、愛する妻と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。2年後、演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。行き場のない喪失を抱えて生きる家福は、みさきと過ごすなかであることに気づかされていく――。

作家・村上春樹による珠玉の短編小説『ドライブ・マイ・カー』を濱口竜介監督が179分の新たなる傑作として誕生した。韓国での撮影を断念し、大部分を広島県内で撮影したとのことたが、広島市内や呉市御手洗で行われ本作の舞台として重要な役目を果たしている。

比較的に長めの作品ではあるが、主人公家福の心情や人間味を取り戻していく姿が179分の中に詰まっている。本作で印象的な”声(言語)”は様々な国の俳優陣が出演し、韓国手話や英語といった多言語が使われている。家福の妻(家福音)を演じる霧島れいかを始め、家福に語りかける大事な役どころを務める岡田将生など観客に真っ直ぐ心に響く”声”で伝えてくる姿がとても印象に残る。ゆっくりと流れる物語の中に生きている人たちの葛藤や後悔そしてこれからを生きることについて描かれている。

【文/片岡由布子】

『ドライブ・マイ・カー』
監督・脚本:濱口竜介
出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか/岡田将生
配給:ビターズ・エンド
©2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会