傷ついた男⼥のかすかな希望の物語『夜、鳥たちが啼く』の場面写真が解禁された。

作家・佐藤泰志が、函館ではなく関東近郊を舞台に描いた短編小説『夜、鳥たちが啼く』(所収「⼤きなハードルと⼩さなハードル」河出⽂庫刊)が映画化。内に秘めた破壊衝動と葛藤する売れない小説家の主人公・慎一を演じるのは『東京リベンジャーズ』『燃えよ剣』『余命10年』など多彩な役柄で観客を魅了し続けてきた実力派俳優・山田裕貴。離婚を機に、息子とともに慎一のもとに身を寄せるヒロイン・裕子を、近年、内田英治監督、タナダユキ監督、紀里谷和明監督、松本優作監督など、気鋭の監督作品への出演が絶えない演技派女優・松本まりかが演じる。脚本は高田亮、監督を努めたのは高田の助監督時代からの盟友・城定秀夫。

本作で山田が演じる主人公・慎一は、若くして小説家デビューを果たしたものの、それ以降は鳴かず飛ばずで「世間では忘れられた存在」となった小説家。傷つきやすく繊細で、必死に創作活動にしがみつく日々だったが、うまく行かない苛立ちを他人にぶつけ、同棲していた恋人からも愛想をつかされてしまう。一人残された慎一は、取り憑かれたかのように夜な夜な執筆活動を続けることで自分を保とうとするも、鬱屈とした想いを抱えたまま満たされない孤独な時間が続くことで、抑えきれない衝動と葛藤を抱え込み、深い闇を感じさせるようになっていく。

そんな最中、幼い息子のアキラを連れて離婚し、行き場を失っていた裕子(松本まりか)が慎一の元へ引っ越してくることになる。裕子とアキラに自宅を提供し、自身は離れのプレハブで暮らすという、いびつな「半同居」生活。お互いにとって心地よい距離を保ちながら、息子のアキラとともに穏やかな日々を重ね、暗闇に囚われていた慎一の心境にも変化が訪れて行き…。

解禁された場面写真の中には、疑心暗鬼にかられ、元恋人とのトラブルを抱えた慎一が血まみれで泣きじゃくる衝撃的な姿を捉えたものや、ビール瓶を抱えて虚ろな表情で座り込む姿など、闇落ちしたかのようなダークな一面を切り取ったものが到着した。さらに、夜な夜な執筆活動に励む姿や、松本まりか演じる裕子の様子をカーテンの隙間から伺う意味深な姿が映し出されている。

山田は、慎一を演じるにあたり「喜怒哀楽だけじゃなく、間とか表情の機微が重要になる作品だと思っています。芝居の中での感情を逃さず、人が思っていることはひとつだけじゃないという事も踏まえて、細かく丁寧に演じていきたいですね」と明かしており、情報解禁時に明かしたコメントでは、完成した作品を観て、「こんな細やかで、繊細でそして緻密な人間の本当の温度や、間、呼吸、音を感じることができ、「こんなお芝居がやりたかったんだ!!」と何度も叫びました」とこれまでにない、自身の新境地と言える芝居に確かな手応えを感じた様子。

今まさに脂の乗った最旬俳優として、数々の話題作に出演し続ける山田。男気あふれる不良少年から、心に闇を抱えた聖職者、はたまたごく平凡な人の良い若者まで、彼の演技の振れ幅は他に類をみない。本作では、陰のある穏やかさと鋭い暴力性、相反するどうしようもない感情を抱えながらも、なんとか生きていこうともがく生々しい人間の姿を見事に体現し、役者としてこれまでにない新たな領域を切り開いたと言える。

『夜、鳥たちが啼く』は2022年12月9日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開!
監督:城定秀夫
出演:山田裕貴、松本まりか、森優理斗、中村ゆりか、カトウシンスケ/藤田朋子/宇野祥平、吉田浩太、縄田カノン、加治将樹
配給:クロックワークス
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