ディオールに魅せられた家政婦がパリへと渡る―『ミセス・ハリス、パリへ行く』のアンソニー・ファビアン監督が本作の制作に取り組むにあたって参考にしたのが、ミュージカル映画の名作たちだった。

舞台は1950年代、ロンドン。戦争で夫を亡くした家政婦がある日働き先で1枚の美しいドレスに出会う。それは、これまで聞いたこともなかったディオールのドレス。500ポンドもするというそのドレスに心を奪われた彼女はパリへディオールのドレスを買いに行くことを決意。新しい街、新しい出会い、そして新しい恋…?夢をあきらめなかった彼女に起きる素敵な奇跡。いくつになっても夢を忘れない―見た人誰もがミセス・ハリスから勇気をもらえる、この冬一番のハッピーストーリー。主演は、アカデミー賞ノミネート女優のレスリー・マンヴィル。

いくつになっても夢を諦めないミセス・ハリスが起こす素敵な奇跡が感動を呼ぶ本作。アンソニー・ファビアン監督は“自然なリズムとペースで場面が流れていく、ミュージカルナンバーのないミュージカルのような映画にしたい”、と考え、制作に取り組むにあたり参考にしたのが、今なおファンを魅了してやまないミュージカル映画の名作たちだった。

ミュージカル映画を参考したのは「カメラのコレオグラフィーや、歌唱やミュージカルの楽曲といった点以外の何が、ミュージカル映画を通常の映画と異なるものとしたのかに注目しました。そして本作に求められるマジックとリアリズムの融合を見いだすことができたということが大きかった。」とその理由を明かす。

カメラの動きという点では「ジャック・ドゥミ監督による『シェルブールの雨傘』(1965)でした。長回しを多用して撮影され、カメラがどんな大きさでどのキャラクターにフォーカスするかが常に変わるのです。カメラ自体がダンスし、動き続け、部屋のさまざまな部分や、キャラクターたちの異なる瞬間を見せていきます。シークエンスをどうコレオグラフしていくか、という点で、ある意味、それは私たちにとって最大のインスピレーションでした。」と不朽の名作から大きなヒントを得て撮影に挑んだ。

当時のパリの華やかさの象徴ともいえる煌びやかなキャバレーのシーンも今作の注目ポイントの1つ。そのシーンで監督はボブ・フォッシー監督の『キャバレー』(1971)の照明やカメラアングルといった点でどう撮っていたかを注意深く観察したそう。

また本作の1957~58年という、時代設定を考慮するうえで、“その時代に忠実でありながらも、現代の観客により適した作品”にしたかった監督は、オードリー・ヘプバーンとフレッド・アステア主演の『パリの恋人』(1957)を参考にした。「非常に現代的で、この映画が60年も前の作品だとは信じられないほどです。『パリの恋人』は20世紀半ばの真実味ある現代性のインスピレーションとなる素晴らしい作品でした。」と語り、自分のために新たな一歩を踏み出すミセス・ハリスを通して、時代を超えて心に響く普遍的なメッセージが観客に届くことを約束する。

その他にも多くのミュージカル映画を参考にしたと話す監督は「魔法のようなリアリズムなんだ。映画は現実に基づいているが、大人のおとぎ話でもある。誇張されたリアリズムのようなものがあるんだ。」と、その要素をふんだんに取り入れたが、その反面「魔法的な要素が多すぎると、映画の信憑性を失ってしまう。その逆の場合は、きらめきが失われてしまうんだ」とバランスにも注意を払い完成させた本作に自信を見せる。映画ファンを魅了してきたミュージカル映画たちを参考に完成した『ミセス・ハリス、パリへ行く』は、多くの名作ミュージカルがそうであるように、観客に大きな感動と勇気をくれるにちがいない。

『ミセス・ハリス、パリへ行く』は2022年11月18日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国で公開!
監督・脚本:アンソニー・ファビアン
出演:レスリー・マンヴィル、イザベル・ユペール、ジェイソン・アイザックス、ランベール・ウィルソン、アルバ・バチスタ、リュカ・ブラヴォー、ローズ・ウィリアムズ
配給:パルコ ユニバーサル映画
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