『サイド バイ サイド 隣にいる人』の完成報告イベントが3月27日(月)に都内で行われ、坂口健太郎、齋藤飛鳥、市川実日子、伊藤ちひろ監督が登壇した。

『サイド バイ サイド』=隣同士で/一緒に という題名を冠された本作は、リアルとファンタジーが混在する「マジックリアリズム」が息づく物語。行定勲と数々の作品を作り出してきた伊藤ちひろがオリジナル脚本を書き下ろし、監督も務めた。美術・装飾スタッフ出身である伊藤監督の感性が光る詩的な映像世界の主人公を演じるのは、坂口健太郎。不思議な力を持ち、傷ついた人を癒す青年・未山を、柔らかな雰囲気で魅せる。さらに、かつて起きたある事件がきっかけで、未山の前から姿を消していた元恋人・莉子を、乃木坂46からの卒業発表後初の映画出演となる齋藤飛鳥が演じる。そのほか、未山と共に生活を共にしている看護師の恋人・詩織に市川実日子、未山の高校時代の後輩であり、ミュージシャンとして活動している草鹿に浅香航大。詩織の娘・美々(みみ)に磯村アメリといった個性的なキャストが名を連ねる。

「この作品がどう届いて、どう持ち帰っていただくか。見終わった後に、スッキリ爽快でおもしろかったねというジャンルの作品ではない」と話す坂口は「あえて説明する部分をはしょってみたり。お客さんに投げかけるような作品でもあるので、受け取ってくださったときに見ていただいた方の中でどんなものが生まれるのか楽しみ」と期待した。

「乃木坂の私とは全然違いますし、ファンの人が見て喜ぶ役でもないかもしれない」と言う齋藤だが、坂口は「嬉しいと思う。飛鳥ちゃんを見たいお客さんはすごくいる」と称賛。齋藤は「喜んでもらえたら嬉しいです。ファンの人たちは深読みをしてくれるのが上手な方たちなので、おもしろがってもらえるかもしれない」とコメントした。

“坂口を撮りたかった”という伊藤監督だが、オファーを受けた坂口は「最初に未山というキャラクターができる前に『坂口くんで何かできないかな』とおっしゃってくれた。2人で話し合ってるうちに、“こんなところがあるね”とか、いろんなところからチョイスをしてくれることが多々あったので、台本をいただいたときに、ちょっとだけ未山の事を分かっていた気にもなった。ちょっとした隣人感を抱えつつ本を読んで現場に入った」と振り返り、「ちょっとドキッとするときがある」と明かした。

過去の恋人という難役を演じた齋藤は「未山もつかみどころがないけど、莉子ちゃんもつかみどころがなくて。監督は、ただ暗いだけの女の子でもないし、闇を抱えているだけの女の子でもないとお話されていたので。一歩間違えるとただの暗いやつになってしまいがちなので」と悩みもあったといい、役作りについては「(伊藤監督の演出に)ずっとついていった感じ」と振り返った。そんな齋藤へのオファーについて伊藤監督は「(乃木坂46での活動を見て)目が離せない。そういう存在感を感じていて、すごく気になっていて」と明かした。

坂口演じる未山と、齋藤演じる莉子と、市川演じる詩織との関係性が重要となる本作だが、「(伊藤監督は)いろんな種類の距離感を意識して作られたと思う」と語る坂口は、実際に演じてみて「莉子ひとりだけだったらそういう形にもなってないと思う。自分の中で過去の清算というか整理をつける旅路でもあると思った」と振り返った。

一方で映画への出演が少ない齋藤は「莉子ちゃんは周りにいる2人とか美々ちゃんのおかげで存在しているんだなと現場で実感した。(撮影中は)莉子ちゃんを意識していたのが半分と自分の素が半分で。(自身の役は)見ていることが多かったんですけど、それだけでお二人のおしゃべりだったり、美々ちゃんが加わって遊んでいる姿がきれいだったから、これを体験できてよかった」と本作への出演を振り返った。これに市川は「映画への出演が少ないと言ってたから、(坂口と)2人で『飛鳥ちゃんがこの映画がいい経験になってほしいね』って思ってたからよかった」と明かし、坂口も共感している様子だった。

最後に坂口は「一つ一つのシーンを丁寧に作って、一つのシーンをみんなで探しながらキャラクターを作っていった特別な作品です。見る方のタイミングや環境によって作品のとらえ方がさまざまあると気がして。ここまで語ることを排除して、みなさんに投げかける作品を作ったことが挑戦的でもあるし、見る人の心を豊かにしてくれる作品だと思います。語れる作品だし、心に残って、シーンひとつひとつを想像できる豊かな作品だと思います」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『サイド バイ サイド 隣にいる人』は2023年4月14日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開
監督・脚本・原案:伊藤ちひろ
出演:坂口健太郎
齋藤飛鳥、浅香航大、磯村アメリ
市川実日子
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023『サイド バイ サイド』製作委員会