『渇水』の完成披露舞台挨拶が5月11日(木)にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、尾野真千子、山﨑七海、柚穂、髙橋正弥監督、企画プロデュースを担当した白石和彌が登壇した。

第70回文學界新人賞受賞、第103回芥川賞候補となり注目を浴びた河林満による「渇水」を映画監督・白石和彌の初プロデュースにより刊行から30年の時を経て映画化した本作。監督は、相米慎二、市川準、阪本順治、森田芳光、宮藤官九郎ら錚々たる監督作品で助監督としてキャリアを重ねた髙橋正弥。主演は生田斗真。水道料金を滞納する家庭の水を日々停めて回る業務に就く水道局員の主人公・岩切俊作が、心の渇きにもがきながらも“生の希望”を取り戻していくという難しい役どころを体現。『土竜の唄 FINAL』では金髪とド派手な装いの潜入捜査官、絶賛公開中の『湯道』では自由気ままに生きる銭湯の店主を演じ、巧みな演技で人々を魅了してきた生田の新境地と呼ぶに相応しい、新たな姿をスクリーンに焼きつけた。

1990年に書かれた原作を映画化した本作。「(山﨑と柚穂の)2人には脚本が渡っていなくて、その場で監督がセリフを与えてお芝居をしていくスタイルでした」と明かす生田は「リアルな生々しいお芝居が求められていたので、彼女たちのシーンが浮かないように、全体的に生っぽいお芝居が求められていたと思います」と振り返った。一方で、役柄の関係性から「監督やプロデューサーが(山﨑と柚穂とは)しゃべっちゃダメと罪なことを言うんです。でも彼女たちは何も知らないから、『今日学校でこんなことがあって』と言ってくるんだけど『そうなんだ』って…」と葛藤を抱えた撮影期間でもあったことを明かしつつ「水道局員が停水執行する痛みも似たようなものがあったのかなと思いましたけど心苦しかったです」と振り返った。

劇中で生田と仕事上のバディを組む磯村は「趣味の話をさせてもらったり、探り探り様子見ながらお話していく中で関係性が自然と出来上がった」と振り返った。劇中では車で移動するシーンもある生田と磯村だが、生田は「狭い空間だから近くにいざるを得ない。ずっとぐるぐる回りながら撮影していたので他愛もない話をしていました」と関係性を築けたという。

本作の撮影では雨が多かったといい、その車のシーンについては「唯一晴れたくらい」と貴重な晴れ間だったことを明かし、「『渇水』という映画で、撮影中ずっと雨だった(笑)原因が生田斗真だったんじゃないかと」と笑う生田。そんな雨ばかりの撮影に、山﨑と柚穂がてるてる坊主を作って髙橋監督に渡したようで、髙橋監督が「台本に挟んで『今日は晴れるぞ』と思いながら撮影に臨んでいました」と明かすと、「ごめんね」と謝罪する生田に笑いが起きた。

和気あいあいとしたムードの舞台挨拶だが、撮影中も「現場がとにかく温かかったです。優しい空気が流れていた」と話す磯村。16㎜フィルムでの撮影に門脇は「テンション上がりますよね。(撮影現場も)監督の温かいお人柄が充満している現場で、映画を観ていても監督のやさしさが伝わりました」と語った。

また、生田は「(山﨑と柚穂という)2人の新しい時代の女優さんを発見してもらう映画だと思うので、彼女たちがいろんな感情を爆発している瞬間を目撃してほしいです」とアピールし、「いろいろなジャンルの映画があると思いますが、一つ一つフィルムに刻んでいく映画は昨今なかなか映画館で見る機会がない貴重な経験になると思います」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『渇水』は2023年6月2日(金)より全国で公開
監督:髙橋正弥
出演:生田斗真
門脇麦、磯村勇斗
山﨑七海、柚穂/宮藤官九郎、池田成志
尾野真千子
配給:KADOKAWA
©2022『渇水』製作委員会