『渇水』の公開直前ティーチインイベントが5月24日(水)に都内で行われ、生田斗真、門脇麦、髙橋正弥監督、企画プロデュースを担当した白石和彌が登壇した。

第70回文學界新人賞受賞、第103回芥川賞候補となり注目を浴びた河林満による「渇水」を映画監督・白石和彌の初プロデュースにより刊行から30年の時を経て映画化した本作。監督は、相米慎二、市川準、阪本順治、森田芳光、宮藤官九郎ら錚々たる監督作品で助監督としてキャリアを重ねた髙橋正弥。主演は生田斗真。水道料金を滞納する家庭の水を日々停めて回る業務に就く水道局員の主人公・岩切俊作が、心の渇きにもがきながらも“生の希望”を取り戻していくという難しい役どころを体現している。

イベントの冒頭で生田は「撮影中はずっと雨が降っていました。先日の完成披露試写会も大雨でした。この映画のキャンペーンは“雨男キャラ”でいこうと心に決めていたのですが、今日はものすごく晴れてしまい、キャラが崩壊しました」と挨拶し、会場を沸かせた。

本作に出演するにあたって「(脚本の)中身の素晴らしさもあるんですけど、たくさんの人たちの映画への思いや愛情が詰め込まれた、ただならぬオーラを放っている脚本だった」と振り返る生田は「この作品に参加しないと後悔するだろうと即座に決めました」と出演するにあたっての経緯を語った。門脇は「白石さんと何度か作品をご一緒していて、断る理由はありませんでした」と明かした。

そんな思いで臨んだ生田は「いろんな感情に蓋をして、何も感じないように無理をしている、そういう男の悲しい目というか独特のオーラが虹出てくるといいなと思いました」と役作りについて語った。一方で門脇は「とにかく普通に、実在感があるように。私とは遠い存在の人物に感じたのでそう見えないように」と難しさがありつつ「ただの悪い人ではないので、そう見えないように。0.1秒だけでも娘たちを見守る瞳や悲しみが滲めばいいなと思って演じました」と語った。

冒頭でも話があったように撮影中は雨天も重なったようで「雨で撮影がストップした日も、思うようにいかない日も髙橋監督はうれしそうでした。この映画を撮れているという幸せに満ち溢れていた」と明かす生田は「人柄に惚れて現場が進んでいった感覚」と撮影現場の様子を振り返った。また、門脇は「全部メイクもして撮影を待って『雨なので撮れません』というのが2~3回ありまして、最後(のシーンを)撮れるとなって清々しい気持ちでした」と、シーンの内容に反してうれしさもあったと笑いを誘った。

16㎜フィルムで撮影されたという本作では「フィルムチェンジを待つ時間が好きで、“映画撮ってるな”という感じがする。待ち時間に撮影部とか照明部とコミュニケーションが取れる」とデジタルでの撮影との違いを語る生田。「フィルムというだけでテンション上がりますよね」と共感する門脇は「大好きだった60年代~70年代の俳優さん、監督さんもこうやって撮っていて。スタッフさんもテンションが上がるのでうれしそう」と明かした。

最後に生田は「エンタメ作品じゃないし、心をえぐられるようなシーンもたくさんありますが、この映画を観る前と観た後ではどこか世界が少しだけ変わって見えると思います。たくさんの方に観ていただきたいです」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『渇水』は2023年6月2日(金)より全国で公開
監督:髙橋正弥
出演:生田斗真
門脇麦、磯村勇斗
山﨑七海、柚穂/宮藤官九郎/宮世琉弥、吉澤健、池田成志
篠原篤、柴田理恵、森下能幸、田中要次、大鶴義丹
尾野真千子
配給:KADOKAWA
©2022『渇水』製作委員会