第32回日本映画批評家大賞授賞式が5月16日(火)に都内で行われ、特別主演男優賞を受賞した岡田准一が登壇した。

日本映画発展のための賞として、1991年に⽔野晴郎が発起人となり、淀川⻑治、⼩森和⼦ら当時第一線で活躍した映画批評家たちと日本大学名誉教授の登川直樹の手で生まれた映画賞「日本映画批評家大賞」。映画批評家ならではの視点で選ばれる各賞に、映画ファンならずとも熱い注目が集まり、今年で32年の歴史を数える。

アクション監督と一緒に自身だけではない、ほかのキャストのアクションも考えて作り上げていく作業を行ってきている岡田に、アクションと演技の融合として賞を授与したいという思いから新設されたという特別主演男優賞。岡田は「現場では最善を尽くせているのかを問い続けているのですが、日々悩んだりうまくいかないと思うこともたくさんあります。その中で今回の受賞をいただけると聞いたときには、実は落ち込んでいる時期で、救われた思いをしました。選考理由を読んだ時に本当に救われる思いがした」と明かした。

また、「もう一つ救いとなる出来事がありました」という岡田は「(本賞において主演男優賞を受賞した)中井貴一さんが僕に会いたいとおっしゃって、ご挨拶に行ったら『渡したいもの』があると、この時計をいただきました」と腕時計を披露した。この時計については「高倉健さんが中井貴一さんに渡した時計です。それを中井貴一さんは、『今の君の活躍、君のやっていること、君の思いを受けて、これを君に託します』と僕に渡してくれました」と受け取った際のエピソードを明かした。

「亡くなる少し前に千葉真一さんからお電話をいただいて『一緒になにかやりましょう』とおっしゃって。役者の中にも、物語があって、つなげていくものがあって、自分がそこの場所にいられる喜びと、つなげていかなければいけない責任と、みなさんに誇ってもらえる映画を作れるように精進していけたらいいなと一段と誓いました。もっとおもしろいと思ってもらえる日本映画を作れるようにがんばります」と語った。

時計は「日々不安になるときだったり、映画に必要されていないのかなと思うことや、最善を尽くそうと思ってもうまくいかない、そういうときにつけていけたら」とコメントした。

【写真・文/編集部】

受賞者・作品一覧

作品賞 『メタモルフォーゼの縁側』(狩山俊輔監督)
主演男優賞 中井貴一『大河への道』
主演男優賞 板谷由夏『夜明けまでバス停で』
助演男優賞 窪田正孝『ある男』
助演男優賞 吉岡里帆『島守の塔』
監督賞 三宅唱監督『ケイコ 目を澄ませて』
ドキュメンタリー賞 『夢みる小学校』(オオタヴィン監督)
アニメーション作品賞 『夏へのトンネル、さよならの出口』(田口智久監督)
アニメーション監督賞 湯浅政明監督『犬王』
新人監督賞 竹林亮監督『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
新人男優賞(南俊子賞) 坂東龍汰『フタリノセカイ』
新人男優賞(小森和子賞) 伊東蒼『さがす』
脚本賞 吉田恵輔『神は見返りを求める』
編集賞(浦岡敬一賞) 小林譲、竹林亮『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
ワタシタチのトキワ荘賞 一般財団法人手塚治虫文化財団
特別賞(松永武賞) 立川志の輔『大河への道』
特別主演男優賞 岡田准一『ヘルドッグス』
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞) 風吹ジュン『裸足で鳴らしてみせろ』
ダイヤモンド大賞(淀川長治賞) 宮本信子『メタモルフォーゼの縁側』