第36回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門出品作品『市子』のQ&Aが10月26日(木)に角川シネマ有楽町で行われ、戸田彬弘監督が登場した。

『市子』は、監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品でもあり、サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞した舞台「川辺市⼦のために」が原作。観客から熱い支持を受けて2度再演された⼈気の舞台を映画化。川辺市子(杉咲花)は、恋人の長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日に、突然失踪。長谷川が行方を追い、これまで市子と関わりがあった人々から証言を得ていくと、彼女の底知れない人物像と、切なくも衝撃的な真実が次々と浮かび上がる…。

戸田監督が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品の「川辺市⼦のために」を映画化した本作だが、「再演をして、映像化のお話をいただいたんですけど、その当時は舞台を映像化するアイデアがなかった」と話す戸田監督。その後、「続編を書いているときに映画化するアイデアが浮かんできて、そのタイミングで映画化の話がまた来た」と明かした。

舞台を映像化するうえでは「(舞台では)市子という役を演じる俳優さんがいらっしゃって、舞台上には上がるんですけど、存在しているのにいないということをテーマにしていた。そこに市子はいるけど、いない、掴めない、見えないということをどう表現できるかと作った」といい、それに対して映画では「どうすれば市子をカメラで捉えながら、掴めない感覚を作っていけるかというのにかなり苦労してシナリオを書きました」と、舞台と映画での表現の違いについて明かした。

また、「“正しさというのは一体何なのか”を考えていて」という戸田監督は「観たお客様が市子の人生をどう捉えて、どう考えて、自分たちの人生にフィードバックしていくのかと、考えるきっかけになっていけばと思って作りました」と本作に込めた思いについて語った。

本作で主演を務める杉咲花については「原作のときからそうですが、リアリティがあるものにしなければいけない作品だと考えていました」という戸田監督は「まず年表を作りました。ネイティブな関西弁がしゃべれる人がいいと思ってリストを作ったんですけど、その時に『おちょやん』をやられていて関西弁が上手で、方言指導の方の言葉を聞くと『あそこまで耳がいい女優さんに会ったことがない。完璧な人です』と。杉咲さんなら関西弁もしゃべれていけると思った」ときっかけについて明かした。

さらに「一面的な表現だけではなくて、幅のある芝居ができる人にやって欲しいと思っていました。杉咲さんは華がありますし、陽の印象を持っていたんですけど、瀬々(敬久)さんの『楽園』という映画を観た時に目の中に魂があって、深い芝居が表情でもできるのを見た時に、杉咲さんの演技力の幅に可能性を感じたというのもあって、お手紙を書かせていただいた」とオファーについて明かした。

先日には第28回釜山国際映画祭での上映に杉咲花、若葉竜也とともに参加した戸田監督だが、同映画祭での上映後のQ&Aでは「(質問をする)手が止まらないくらい質問がたくさんありました」といい、「クリエイティブな質問が多かった」と当時の印象をコメント。この日に行われたQ&Aでも、原作となった舞台も観劇したという観客からの質問や、作品の背景にある問題についても質問が及んだ。

【写真・文/編集部】

第36回東京国際映画祭は2023年10月23日(月)~11月1日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催